毎度のように、アルバムの帯に曰く「小さなクラブを廻り始めてから、30年。偉大なるグループ・クルセイダーズの2年半の沈黙を破る入魂の最高傑作」。そう、スペシャルゲストにナンシーウイルソンを迎え、クルセイダーズのファイティングスピリット完全復活。往年の仲間、ラリーカールトン、デイヴィッド・T・ウォーカーも客演、トランペットのサル・マルケスも加わり、久々にウィルトンフェルダーとの二管編成が復活。ウェインヘンダーソンとのコンビの時のような独特のうねりはないけれど、高らかなトランペットと共に実にもうアグレッシブに吹きまくっています。とりわけ「MISCHIEVOUS WAYS」、「SOMETIMES YOU CAN TAKE IT OR LEAVE IT」。新たな地平を切り拓く管楽器の雄叫び。クルセイダーズパワー全開です。
ドラムはまだ若いソニー・エモリー。K1の喧嘩野郎シリル・アビディー風ケンカ奏法か、メリハリの効いたビート炸裂。
泣きもあります。ナンシーウイルソンが叙情豊かに歌い上げる「THE WAY IT GOES」。映画「夜叉」で、健さんが、万感の思いを込めて青空を見上げ、黒いサングラスをかけるラストシーンや、「現代任侠史」で、兄弟分の成田三樹夫を「俺の言うことが、ワカンネーのか!」と一喝、堅気からやくざに戻る健さんの胸にジーンとくるワンシーンや、斬られた着流しからのぞく刺青やらが、まるで万華鏡の奥で千変万化する色模様のように、記憶の筒の向こうに甦えってきます。
実を申しますとネ、この「THE GOOD AND BAD TIMES」発表の年、クルセーダーズの来日公演が九州は福岡でありまして、初めてLIVEを目の当たりにしました。舞台装置がしゃれてまして、背後に3本の水墨画の掛け軸がかかっているだけという簡素なもの。そこで白熱のプレイが繰広げられたのでありました。恥ずかしながら、初恋の女性を前にした純な少年のように緊張してしまいまして、楽しむというより客席で硬直し、今思い出しても、かすかにウィルトンフェルダーとサルマルケスの雄姿がおぼろげに浮かび、あとは陽炎のように記憶が揺らめくだけ、感情が勃起するどころか、ただ初恋の淡い味だけがざらついた記憶の舌に残っています。ああ、クルセイダーズ、今は昔の恋物語。
まぁ、それはともかく、迷って足踏みしている時、後ろからポンと肩を叩いて、「失敗しても良いからやってみなよ」と声をかけてくれるアルバムであることは、ホント、間違いないでしょう。
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