今回のアルバム「音楽会」を聴いているうち、これはクルセイダーズ風「だまし絵」じゃないかと直感しましたネ。角度を変えて眺めてみると、いままでの相貌とは全く違う異形がひょっこりと姿を顕わす、そんな感じ。いわゆる「ルビンの壷」のような錯視っていうやつ。
臨場感溢れるメンバー紹介、クルセイダーズの面々になると歓声ひときわ高まり、サァ地響きをあげてスティックスフーパーのドラムが炸裂、重低音のベースが轟き「音楽会」の開幕です。
「RAINBOW SEEKER」から「SPIRAL」まで一気に聴き、「MELODIES OF LOVE」に及んで、あれッと思う。
今までと何か違う。曲目を順に辿っていくと、あるイメージが浮かんできます。80年代昭和末期のバブルのイメージですヨ。
我流で曲目を訳していけば、「虹を掴む男」、「詐欺師」、「甘い罠」あるいは「甘いささやき」とでも申しましょうか、そして「DRUM INTRODUCTION」、いつものフーパーと違った和太鼓のようなプレイ。それも混沌とした不安を醸し出すイントロ、サービス満点にさくらさくらが奏され、収中、一番好きな「SPIRAL」がこれぞクルセイダーズといった風で、ウイルトンフェルダーのサックスが斬り込みながら軽快に始まります。聴き入りながらも脳裏をかすめるのは有象無象の怪しい人物郡。詐欺師、地上屋、パクリ屋、色事師など胡散臭い連中が跳梁跋扈する80年代を彩った多様な犯罪クロニクル。ご存知怪人21面相の登場をはじめとして、山口組対一和会の暴力団闘争、豊田商事詐欺事件、お札舞い散る株暴落までが、さながらビデオの早送り状態で脳裏をよぎっていきます。さくら吹雪のように散っていった昭和の時代。
続いては、まるでそれまでのバブルの狂騒を癒すかのようなあのリゲインの曲にも似た「MELODIES OF LOVE」。
バブルは文字通り泡沫と消えます。この80年代初頭の日本でのライブアルバム。クルセイダーズはやがて来る日本のスパイラル現象を予見して、こんなアルバム構成をしたのでしょうか。まさか。
しかしやがてスティックスフーパーも去ることになるクルセイダーズの来たるべき10年のまさにスパイラル状況を、魂が感知していなかったとは誰も言えないでしょう。「SO FAR AWAY」、これも我流で「思えば遠くへ来たもんだ」を感慨深く聴かざるを得ませんネ。
マァ、それは今後のアルバムとのタイマンではっきりするでしょうが、おぼろげながらも予感できますのは、だまし絵か裏目読みかはいざ知らず、この80年代狂熱のバブル盛衰記の渦中で、クルセイダーズにとってはいよいよガチンコファンク、怒涛の幕開けになるだろうということです。
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