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櫻山招魂場志感 | ||
伊藤博文 |
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櫻山枕碧海, 四面羣巒圍。 氣象萬千變, 朝嵐兮夕霏。 囘憶當年事, 涕泗暗沾衣。 外寇犯邊海, 内訌迫禁闈。 天下如亂麻, 王道歎式微。 長防彈丸地, 率先揚義旂。 破敵於四境, 掃賊于京畿。 劍光如電閃、 砲彈如雨飛。 民傾産不顧, 士視死如歸。 邦君王佐器, 精忠排羣譏。 勤王循祖訓, 正氣爲發揮。 一朝遭國難, 上下識所依。 斷行鬼神避, 先天天不違。 皇政終復古, 赫赫仰天威。 草木欣榮色, 日月生光輝。 嗚呼忠義士, 功烈何巍巍。 英靈聚此土, 衆目倶瞻睎。 芳名萬萬古, 長與櫻花馡。 |
櫻山 碧海に枕 み,
四面 羣巒圍 む。
氣象 萬千變 し,
朝嵐 に夕霏 。
當年の事を囘憶 すれば,
涕泗 暗 かに衣 を沾 らす。
外寇 邊海を犯し,
内訌 禁闈 に迫る。
天下 亂るること麻 の如く,
王道式微 を歎く。
長防 彈丸の地,
率先して義旂 を揚 ぐ。
敵を四境 に破り,
賊を京畿 に掃く。
劍光電 の閃 くが如く、
砲彈雨飛 するが如し。
民 産 を傾くれども顧 みず,
士 死を視 ること歸 するが如し。
邦君 王佐 の器にして,
精忠羣譏 を排す。
勤王 祖訓に循 ひ,
正氣 爲 に發揮す。
一朝 國難 に遭 ひ,
上下依 る所を識 る。
斷じて行 へば鬼神 も避 け,
天に先だちて 天違 はず。
皇政終 に復古し,
赫赫 天威を仰ぐ。
草木 榮色を欣 び,
日月 光輝 生ず。
嗚呼 忠義の士,
功烈何 ぞ巍巍 たる。
英靈此 の土に聚 まり,
衆目倶 に瞻睎 す。
芳名萬萬古 に,
長 へに櫻花 と馡 らん。
*****************
◎ 私感註釈
※伊藤博文:政治家。天保十二年(1841年)~明治四十二年(1909年)長州藩出身。幼名利助。後、俊輔。号は春畝。松下村塾に学び、木戸孝允に従い、尊王攘夷運動に参加。後、討幕運動に従って、維新政府樹立に貢献した。欧州よりの帰国後、華族制度、内閣制度の創設、大日本帝国憲法・皇室典範制定、枢密院設置など、天皇制確立のために努力。明治十八年(1885年)、初代総理大臣・枢密院議長となる。日露戦争後、初代韓国統監となり、併合強化への一歩を踏み出した。明治四十二年(1909年)、満洲視察と日露関係調整のため渡満の際、ハルビン駅頭で韓国人・安重根に暗殺された。詩集に『藤公詩存』(明治四十三年 博文館)がある。
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※桜山招魂場志感:桜山招魂場で、感じたことを誌(しる)す。 ・桜山招魂場:幕末に、高杉晋作の発議により創建された我が国初の招魂社のこと。山口県下関上新地に築かれ、幕末の各戦役での戦死者の霊を慰め祀った。靖国神社の先駆。中唐・張籍の『征婦怨』に「九月匈奴殺邊將,漢軍全沒遼水上。萬里無人收白骨,家家城下招魂葬。婦人依倚子與夫,同居貧賤心亦舒。夫死戰場子在腹,妾身雖存如晝燭。」とある。 ・桜山:山口県下関上新地2丁目にある地名。幕末、肺結核を病んだ高杉晋作が療養生活を送ったところ。幕末・高杉晉作に『櫻山七絶』「落花斜日恨無窮,自愧殘骸泣晩風。休怪移家華表下,暮朝欲拂廟前紅。」
がある。 ・志感:感じたことを誌(しる)す。明治二十三年庚寅秋の作。「庚寅」は歳次で、明治二十三年(1890年)。その前は、文政十三年/天保元年(1830年)…。後は、昭和二十五年(1950年)…
。
※桜山枕碧海:桜山は、青い海に臨み。 ・枕:臨む。見下ろす。動詞。
※四面群巒囲:四方は、めぐり連なった山々に囲まれている。 ・群巒:めぐり連なった山々。 ・巒:〔らん;luan2○〕みね。めぐり連なった山々。
※気象万千変:気象は、さまざまに変化して。 ・気象:空中の全ての天然現象。きざしとかたち。 ・万千変:さまざまに変化すること。=千変万化。
※朝嵐兮夕霏:朝には靄(もや)(/強い風)となって、夕べには小雨となる。「巫山の雲雨」の故事・神女は朝は巫山の雲となり夕べには雨になるという故事からきていよう。宋玉『高唐賦』によると、楚の襄王と宋玉が雲夢の台に遊び、高唐の観を望んだところ、雲気があったので、宋玉は「朝雲」と言った。襄王がそのわけを尋ねると、宋玉は「昔者先王嘗游高唐,怠而晝寢,夢見一婦人…去而辭曰:妾在巫山之陽,高丘之阻,旦爲朝雲,暮爲行雨,朝朝暮暮,陽臺之下。」と答えた。 ・朝嵐:〔てうらん;zhao1lan2○○〕あさ靄(もや)。また、(日本語では、)朝吹く強い風。 ・兮:〔けい;xi1○〕語調を整える助辞。『詩經』『楚辭』など、上代の作品には多く見られる。 ・夕霏:〔せきひ;xi1fei1●○〕夕べに降る小雨。
※回憶当年事:当時のことを思い出せば。 ・回憶:思い出す。追憶する。回想する。 ・当年:〔たうねん;dang1nian2○○〕当時。あのころ。往時。ここでは、幕末の討幕運動に従事していた頃のことになる。 ・事:ことがら。できごと。事件。
※涕泗暗沾衣:涙と鼻汁が(出て)、秘やかに着物をぬらす。 *「泣く」ことについて、日本人の場合と(漢民族の)中国人との場合の違いが、中唐・張籍の『沒蕃故人』に「前年戍月支,城下沒全師。蕃漢斷消息,死生長別離。無人收廢帳,歸馬識殘旗。欲祭疑君在,天涯哭此時。」によく表れている。 ・涕泗:〔ていし;ti4si4●●〕涙と鼻汁。盛唐・杜甫の『登岳陽樓』に「昔聞洞庭水,今上岳陽樓。 呉楚東南坼,乾坤日夜浮。親朋無一字,老病有孤舟。戎馬關山北,憑軒涕泗流。」
とある。 ・暗:ひそかに。暗に。 ・沾衣:〔てんい;zhan1yi1○○〕(涙や汗などが)着物をぬらす。ころもをうるおす。
※外寇犯辺海:外国(≒ロシア、イギリス、アメリカ)の侵略者が、国境の海を侵犯して。 *18世紀末~ロシア船の来航、19世紀初頭~イギリス船の来航、19世紀中葉アメリカ艦船の来航、また、長州藩が攘夷を決行し、下関海峡と通る外国船を次々と砲撃し、やがて、欧米列強と下関戦争を起こすことを指す。 ・外寇:〔がいこう;wai4kou4●●〕外国の侵略者。外敵。外国から攻めてくる敵。 ・辺海:陸地に近い海。近辺の海。近海。ただし、作者は辺疆(≒国境)の海の意で使う。
※内訌迫禁闈:内輪もめ(日本国内で、長州と会津、薩摩の政争)では、禁門にまで迫った。 *蛤御門の変(=禁門の変)を謂う。 ・内訌:〔ないこう;nei4hong4●●〕内輪もめ。長州と会津、薩摩の政争で、蛤御門(はまぐりごもん)の変(=禁門の変)。 ・禁闈:〔きんゐ;jin4wei2●○〕宮中の大門の横の小門。ここではを蛤御門のことで、禁門の変の「禁門」を謂う。
※天下如乱麻:世の中は、乱れもつれた麻(あさ)のように、多くの物がごたごたと入り乱れて。 ・天下:世の中。国じゅう。また、天が覆っている全世界。 ・乱麻:乱れもつれた麻。多くの物がごたごたと入り乱れている喩え。
※王道歎式微:皇維(=天子の天下統治の大権)が、はなはだしく衰えたことを歎いた。 ・王道:帝王として行うべき道。道徳によって、人民の幸福をはかって天下を治める政治のやり方。有徳の君主が仁義に基づいて国を治める政道。⇔覇道。ここでは天皇親政を謂う。 ・式微:はなはだしく衰える。国家・王室などがはなはだしく衰える。「式」は発語の助字で、「微」は衰える意。『詩経・邶風・式微』より。
※長防弾丸地:(毛利家の領地である)長門(ながと)の国と周防(すおう)の国は戦場(となり)。 ・長防:長門(ながと)の国と周防(すおう)の国のことで、毛利家の領地。長州藩。現在の山口県。=防長。 ・弾丸地:弾丸が飛び交う地、戦場の意。
※率先揚義旂:(長州藩は)率先して正義の旗を挙げて(元治の内戦(=クーデター)を)決行した。 ・揚:あげる。上にあげる。高くもちあげる。ふりあげる。 ・義旂:正義の旗。正義の軍隊。正義のための軍隊の旗じるし。=義旗。ここでは、主戦派の藩士高杉晋作は、伊藤俊輔(=後の伊藤博文)らと共に、民兵組織である力士隊と遊撃隊を率いて元治の内戦(=クーデター)を決行した。決起隊に奇兵隊が呼応して勢力を伸ばし、萩城へ攻め上って恭順派を倒した出来事を指す。
※破敵於四境:敵を四境に撃ち破り(第二次幕長戦争(=四境戦争)は勝利を収め。 *第二次幕長戦争(=四境戦争)で、非正規の武士団である奇兵隊などが活躍して、長州藩は四方から押し寄せる幕府軍を打ち破って勝利したことを指す。 ・於:〔お;yu2○〕…に。(…に)おいて。場所・時間・対象を表す助字。 ・四境:四境戦争(第二次幕長戦争)。
※掃賊于京畿:賊軍(=幕府軍)を、京都とその附近から追い払った。 *慶喜は慶応三年(1867年)末、王政復古の大号令が発せられ、徳川慶喜は将軍職を辞職、京都の二条城を去って大坂城へ退去したことを謂う。 ・掃:掃討する。 ・賊:秩序を破る者。外国から攻め入る者。悪者。人を殺す者。ここでは、十五代将軍・徳川慶喜のことになる。将軍職を辞職して、京都を去って大坂城へ退去し、(更には、鳥羽・伏見の戦いの後、)軍艦・開陽丸で江戸へ退却したことを指す。 ・于:〔う;yu2○〕…に。場所・時間・対象を表す助字。前出「於」にほぼ同じ。 ・京畿:〔けいき;jing1ji1○○〕皇居を持つ首都と、その附近の直轄地。転じて、みやこ。京師。
※剣光如電閃:(戦闘での)刀の輝きは、稲妻がひらめくようで。 ・電閃:稲妻がひらめく。
※砲弾如雨飛:砲弾は、雨のように(間断なく)飛んでくる。 ・雨飛:雨のように(間断なく)飛んでくる。
※民傾産不顧:民間の商工人は、なりわいをあやうくすることをかえりみないで。 ・傾:あやうくする。くつがえす。かたむける。 ・産:なりわい。もとで。 ・不顧:かえりみない。顧慮しない。問題にしない。かまわない。
※士視死如帰:武士は、死に臨んでは、恐れることなく、死ぬことを本来の居場所である家や故郷や祖国や墓所に帰ることと同じように思っていた。 ・士:天子・諸侯の臣で、卿・大夫の下に位する者。支配階級の最下層に位置する人(男)。学徳のある者。おとこ。成人男子の美称。さむらい。武士。 ・視死如帰:死ぬことを、本来の居場所である家や故郷や祖国や墓所に帰ることと同じように思う。死に臨んで、恐れないさまを謂う。(死を視ること帰するが如し)『大戴礼(だたいれい)・曽子制言上』にある。
※邦君王佐器:(長州藩の)藩主は、帝王の補佐となる器量であり。 ・邦君:国を治める者。国君。国守。藩主。ここでは、長州藩主のことを謂う。 ・王佐:王のたすけとなること。帝王の補佐。 ・器:うつわ。器量。
※精忠排群譏:一途な忠義は、多くの者がむらがってそしるのを排除した。 ・精忠:まごころからの忠義。一途に忠義であるさま。 ・群譏:〔ぐんき;qun2ji1○○〕多くの者がむらがってそしる。
※勤王循祖訓:天子のために力をつくしているのは、先祖伝来のおしえに服ししたがって。 ・勤王:天子のために力をつくすこと。=勤皇。 ・循:〔じゅん;xun2○〕したがう。服ししたがう。蹈襲する。また、めぐる。ここは、前者の意。 ・祖訓:先祖伝来のおしえ。
※正気為発揮:天地間に存在する物事の根本をなす正しい気風が発揮された。 ・正気:〔せいき;zheng4qi4●●〕天地間に存在する物事の根本をなす気。正しい気風、気性。南宋・文天祥に『正氣歌』「天地有正氣,雜然賦流形。下則爲河嶽,上則爲日星。於人曰浩然,沛乎塞蒼冥。皇路當淸夷,含和吐明庭。時窮節乃見,一一垂丹靑。在齊太史簡,在晉董狐筆。在秦張良椎,在漢蘇武節。」があり、幕末・藤田東湖の『和文天祥正氣歌・有序』「天地正大氣,粹然鍾神州。秀爲不二嶽,巍巍聳千秋。注爲大瀛水,洋洋環八洲。發爲萬朶櫻,衆芳難與儔。…」
があり、明治・廣瀨武夫の『正氣歌』「死生有命不足論,鞠躬唯應酬至尊。奮躍赴難不辭死,慷慨就義日本魂。一世義烈赤穗里,三代忠勇楠氏門。憂憤投身薩摩海,從容就死小塚原。或爲芳野廟前壁,遺烈千載見鏃痕。或爲菅家筑紫月,詞存忠愛不知冤。可見正氣滿乾坤,一氣磅礴萬古存。嗚呼正氣畢竟在誠字,呶呶何必要多言。誠哉誠哉斃不已,七生人閒報國恩。」
等がある。
※一朝遭国難:ある日、にわかに、国の危難に出遭(であ)って。 ・一朝:ある朝。ある日にわかに。 ・遭:(よくないことに)であう。 ・国難:国の危難。国の災難。
※上下識所依:身分の高い者も低い者も、よるところが分かった。 ・上下:身分の高い者も低い者も。身分の上下を問わずに。『五箇條の御誓文』に「上下 心ヲ一 ニシテ盛 ニ經綸ヲ行フヘ シ」とある。 ・識:知る。 ・所依:よるところ。 ・所-:…すること。…するところ。動詞の前に置き、動詞を名詞化する働きがある。
※断行鬼神避:断乎とした態度で行えば、鬼神(きしん)でもその勢いに気(け)おされて避けて行き。 ・断行鬼神避:断乎とした態度で行えば、鬼神でもその勢いに気(け)おされて避けて行く。決心して断行すれば、どんな困難なことも必ず成功する。断(だん)じて行えば、鬼神も之(これ)を避(さ)く。『史記・李斯列傳』(中華書局版646ページ:卷八十七 李斯列傳第二十七 二五四九頁)「故顧小而忘大,後必有害;狐疑猶豫,後必有悔。斷而敢行,鬼神避之,後有成功。願子遂之!」とある。 ・断行:果断に実行する。断乎とした態度で行う。
※先天天不違:天意を慮(おもんぱか)って、皇運を扶翼しようとしたが、果たしてそれは叡慮に合致していた。/(天子の)生まれながらの仁徳は、正に天子の仁徳そのものである。 *初唐・沈佺期の『龍池篇』に「龍池躍龍龍已飛,龍德先天天不違。池開天漢分黄道,龍向天門入紫微。邸第樓臺多氣色,君王鳧雁有光輝。爲報寰中百川水。來朝此地莫東歸。」とある。
※皇政終復古:ついに王政復古となって。 ・皇政:天皇親政。 ・終:ついに。 ・復古:むかしの制度にかえる。むかしにかえる。
※赫赫仰天威:明らかでさかんに御稜威(みいつ)をふり仰いだ。 ・赫赫:〔かくかく;he4he4●●〕明らかでさかんなさま。赤赤と照り輝くさま。日でりの厳しいさま。はやいさま。 宋・太祖・趙匡胤の『旭日』に「太陽初出光赫赫,千山萬山如火發。一輪頃刻上天衢,逐退羣星與殘月。」とあり、清末・秋瑾の『寶刀歌』に「漢家宮闕斜陽裏,五千餘年古國死。一睡沈沈數百年,大家不識做奴恥。憶昔我祖名軒轅,發祥根據在崑崙。闢地黄河及長江,大刀霍霍定中原。痛哭梅山可奈何?帝城荊棘埋銅駝。幾番囘首京華望,亡國悲歌涙涕多。北上聯軍八國衆,把我江山又贈送。白鬼西來做警鐘,漢人驚破奴才夢。主人贈我金錯刀,我今得此心英豪。赤鐵主義當今日,百萬頭顱等一毛。沐日浴月百寶光,輕生七尺何昂藏?誓將死裏求生路,世界和平賴武裝。不觀荊軻作秦客,圖窮匕首見盈尺。殿前一撃雖不中,已奪專制魔王魄。我欲隻手援祖國,奴種流傳遍禹域。心死人人奈爾何?援筆作此《寶刀歌》,寶刀之歌壯肝膽。死國靈魂喚起多,寶刀侠骨孰與儔?平生了了舊恩仇,莫嫌尺鐵非英物。救國奇功賴爾收,願從茲以天地爲鑪、陰陽爲炭兮,鐵聚六洲。鑄造出千柄萬柄刀兮,澄淸神州。上繼我祖黄帝赫赫之成名兮,一洗數千數百年國史之奇羞!」
とあり、日本・明治の森鴎外に『噶爾巴日』に「赫赫兵威及米洲,平生戰鬪捨私讐。自由一語堅於鐵,未必英雄多詭謀。」
とあり、日本・大正天皇の『哭乃木大將』に「滿腹誠忠萬國知,武勳赫赫戰征時。勵精督學尤嚴肅,夫婦自裁情耐悲。」
とある。 ・天威:天子の威光。御稜威(みいつ)。皇威。また、天の威力。
※草木欣栄色:草木は芽生えの色を喜び。 ・欣:〔きん;xin1○〕喜ぶ。うれしい。
※日月生光輝:太陽や月は輝きが(一層)生じた。 *、『懷風藻』に大友皇子の『侍宴』「皇明光日月,帝德載天地。三才竝泰昌,萬國表臣義。」がある。
※嗚呼忠義士:ああ、忠義の人士の。 ・嗚呼:〔をこ;wu1hu1○○〕ああ。歎息・感嘆のときに出す声。盛唐・杜甫の『乾元中寓居同谷縣作歌』に「杜甫有客有客字子美,白頭亂髮垂過耳。歳拾橡栗隨狙公,天寒日暮山谷裏。中原無書歸不得,手脚凍皴皮肉死。嗚呼一歌兮歌已哀,悲風爲我從天來。」とあり、日本・平井收二郞の『辭世』に「嗚呼悲哉兮,綱常不張。洋夷陸梁兮,邊城無防。狼臣強倔兮,憂在蕭牆。憂世患國兮,忠臣先傷。月諸日居兮,奈我神皇。」
とある。
※功烈何巍巍:すぐれた功績は、何と雄大で厳(おごそ)かであることか。 ・功烈:すぐれた功績。 ・何:なんと。なんぞ。なんたる。感嘆を表す。 ・巍巍:〔ぎぎ;wei1wei1○○〕高大なさま。雄大で厳(おごそ)かなさま。盛唐・王昌齡の『萬歳樓』に「江上巍巍萬歳樓,不知經歴幾千秋。年年喜見山長在,日日悲看水獨流。猿狖何曾離暮嶺,鸕鶿空自泛寒洲。」とあり、現代でも『中華』「滾滾黄河,浩浩長江。巍巍中華,屹立東方。文明古國,禮儀之邦。傳統美德,源遠流長。」
と使う。
※英霊聚此土:戦死者の霊が、この(桜山招魂)場にあつまるのを。 ・英霊:すぐれた霊気。すぐれた霊気を備えた人。すぐれた人の霊魂。なお、日本では、死んだ人。戦死者の霊をいう。 ・聚:あつまる。 ・此土:桜山招魂場のこと。
※衆目倶瞻睎:人々は、共に皆、仰ぎ見た。 ・倶:ともに。 ・瞻睎:〔せんき;zhan1xi1○○〕眺望する。眺める。望む。仰ぎ見る。漢・梁鴻の『五噫歌』に「陟彼北芒兮,噫!顧瞻帝京兮,噫! 宮闕崔巍兮,噫!民之劬勞兮,噫!遼遼未央兮,噫!」とある。
※芳名万万古:誉れある名は、幾(いく)久(ひさ)しく。 ・芳名:誉れのある名。名声。 ・万万古:「万古」(永遠に、永久に)を強めた言い方。
※長与桜花馡:とこしえに桜の花の香りとともに、(永遠に伝えよう)。 ・長:とこしえに。 ・与:…とともに。 ・馡:〔ひ;fei1○?〕香気。
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◎ 構成について
韻式は、「AAAAAAAAAAAAAAAAAA」。韻脚は「圍霏衣闈微旂畿飛歸譏揮依違威輝巍睎馡」で、平水韻上平五微(圍霏衣闈微揮違飛威輝畿譏依巍歸)。この作品の平仄は、次の通り。
○○◎●●,
●●○○○。(韻)
●●●○●,
○○○●○。(韻)
○●○○●,
●●●○○。(韻)
●●●○●,
●●●●○。(韻)
○●○●○,
○●◎●○。(韻)
○○●○●,
●○○●○。(韻)
●●○●●,
●●○○○。(韻)
●○○●●,
●●○●○。(韻)
○○●●●,
●●●○○。(韻)
○○○●●,
○○○○○。(韻)
○○○●●,
●●●●○。(韻)
●○○●●,
●●●●○。(韻)依
(以下略)
平成25.5. 1 5. 2 5. 3 5. 4 5. 5 5. 6 5. 7 5. 8 5. 9 5.10 5.11完 5.19補 |
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