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花前有感 | ||
島田忠臣 |
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去歳落花今歳發, 我爲去歳惜花人。 年年花發年年惜, 花是如新人不新。 |
去歳 花落 ちて今歳 發 き,
我 は去歳 花を惜 しむの人爲 り。
年年 花發 きて 年年惜 しみ,
花は是 れ 新しきが如 きも 人 新しからず。
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◎ 私感註釈
※島田忠臣:(しまだのただおみ)平安前期の貴族・詩人。天長五年(828年)~寛平四年(892年)。号して田達音。官位は正五位下伊勢介。菅原道真の師。
※花前有感:花を前にして感じる所があり、(それを詩にした)。 *この詩、唐の劉希夷(劉廷芝)の『白頭吟(代悲白頭翁)』「洛陽城東桃李花,飛來飛去落誰家。洛陽女兒惜顏色,行逢落花長歎息。今年花落顏色改,明年花開復誰在。已見松柏摧爲薪,更聞桑田變成海。古人無復洛城東,今人還對落花風。年年歳歳花相似,歳歳年年人不同。寄言全盛紅顏子,應憐半死白頭翁。此翁白頭眞可憐,伊昔紅顏美少年。公子王孫芳樹下,淸歌妙舞落花前。光祿池臺開錦繍,將軍樓閣畫神仙。一朝臥病無人識,三春行樂在誰邊。宛轉蛾眉能幾時,須臾鶴髮亂如絲。但看古來歌舞地,惟有黄昏鳥雀悲。」に基づこう。 *この詩、同じ言葉(漢字)を意図的に使っている。「去歳落花今歳發,我爲去歳惜花人。年年花發年年惜,花是如新人不新。」と。 ・花前:花の咲く前。花の咲く所。「花」は「毎年同じことをくり返して行く大自然」という意味合いもある。 ・有感:感じる所がある。詩題に多く見られる。
※去歳落花今歳発:去年、花を散らしたが、今年は、咲いた。 *この句「去歳・落花+今歳・発」という句中の対を構成している。ただ、そのことを意識して読み下すのは難しい。 ・去歳、今歳:去年、今年。 ・落花:花が散る。 ・発:開く。咲く。
※我為去歳惜花人:わたしは、去年、散り行く花や春を惜しんだ者である。 ・為:〔ゐ;wei2○〕…である。たり。なり。後出・「是」と似た働きをする。蛇足になるが、「為」:〔ゐ;wei4●〕「ため」ではない。ここは、句中の平声のところであり、「為」:〔ゐ;wei2○〕…である。たり。なり。」として使う。 ・惜花:散り行く花や春を惜しむ、意。
※年年花発年年惜:毎年、花がひらいて、毎年(花の散るのを)惜しんでいる。 *この句「年年・花発+年年・惜」という句中の対を構成している。 ・年年:毎年。年(とし)ごとに。来る年(とし)も来る年(とし)も。
※花是如新人不新:花は、(毎年)新しいかのようであるが、人は新しくはない(≒老いて死に向かっている)。 *この句「花・是如新+人・不新」という句中の対を構成している。 ・是:…は…である。これ。主語と述語の間にあって述語の前に附き、述語を明示する働きがある。〔A是B:AはBである〕。 ・如新:新しいかのようである、の意。 ・人:ひと。「花」に対して、「有限で、老いて死に向かっている…」という意味合いもあろう。 ・不新:新しくはない。
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◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「人新」で、平水韻上平十一真。この作品の平仄は、次の通り。
●●●○○●●,
●○●●●○○。(韻)
○○○●○○●,
○●○○○●○。(韻)
平成29.12.30 12.31 |
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