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夜發袁江寄李穎川劉侍郞 | |
中唐・戴叔倫 |
半夜囘舟入楚鄕,
月明山水共蒼蒼。
孤猿更叫秋風裏,
不是愁人亦斷腸。
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夜 袁江 を發して李 穎川 劉侍郞 に寄す
半夜 舟を囘 して楚鄕 に入れば,
月明 かにして山水 共に蒼蒼 たり。
孤猿 更 に叫ぶ秋風 の裏 ,
是 れ愁人 ならざるも亦 た斷腸 せん。
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◎ 私感註釈
※戴叔倫:中唐の詩人。字は幼公。(現・江蘇省)潤州金壇の人。道教に帰依した。732年(開元二十年)~789年(貞元五年)。
※夜発袁江寄李穎川劉侍郎:夜に、袁江を出発するので、李穎川と劉侍郎に(詩を)送った。 ・袁江:江西省の西端の宜春の四方から出て北東に流れ、贛江に入る川。『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社))57-58ページ江南西道にある。 ・寄:(人手を介して)やる。(手紙として)おくる。 ・李穎川劉侍郎:二人の人名で、李穎川と劉侍郎のこと。共に作者の友人で、彼等は左遷されてこの地におり、それがために作者は詩を作り、彼等に寄せたと。
※半夜回舟入楚郷:夜中に舟の向きを変えて、楚の地に入り。 ・半夜:よなか。 ・回舟:舟が(Uターンさせるように)向きを変える。 ・楚郷:楚の地。現・湖南省。
※月明山水共蒼蒼:月明(つきあか)りの山や川は、どちらもあおあおとしたさまである。 ・月明:つきあかり。 ・山水:山や川。山と川。 ・蒼蒼:〔さうさう;cang1cang1○○〕空の色のあおあおとしたさま。草木の生い茂っているさま。
※孤猿更叫秋風裏:群を離れて、ただ一匹だけでいる猿は、秋風の中で更に叫んでいるが。 ・孤猿:群を離れて、ただ一匹だけでいる猿。初唐・寒山に「寒巖深更好,無人行此道。白雲高岫閒,青嶂孤猿嘯。我更何所親,暢志自宜老。形容寒暑遷,心珠甚可保。」とあり、盛唐・孟浩然の『然宿桐廬江寄廣陵舊遊』に「山暝聽猿愁,滄江急夜流。風鳴兩岸葉,月照一孤舟。建德非吾土,維揚憶舊遊。還將兩行涙,遙寄海西頭。」
とある。 ・叫:(動物が)鳴く。声を立てる。さけぶ。≒嘯。 後世、杜牧は『猿唐』で「月白煙青水暗流,孤猿銜恨叫中秋。三聲欲斷疑腸斷,饒是少年須白頭。」
とする。 ・更:さらに。いっそう。 ・裏:…のうち。
※不是愁人亦断腸:(孤猿の叫びは、)心に愁え悲しみを持つ人でなくとも、腸がちぎれるような非常な悲しみ(を持つことになる)だろう。 ・不是(愁人):(愁え悲しみを持つ人)ではない。 ・愁人:心に愁え、悲しみを持つ人。 ・亦:…もまた。 ・断腸:(腸が断たつような)非常な悲しみ。盛唐・李白の『春思』に「燕草如碧絲,秦桑低綠枝。當君懷歸日,是妾斷腸時。春風不相識,何事入羅幃。」とあり、盛唐・王昌齡の『春怨』に「音書杜絶白狼西,桃李無顏黄鳥啼。寒雁春深歸去盡,出門腸斷草萋萋。」
とあり、唐・顧况の『竹枝詞』に「帝子蒼梧不復歸,洞庭葉下荊雲飛。巴人夜唱竹枝後,腸斷曉猿聲漸稀。」
とある。
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◎ 構成について
この作品の平仄は、次の通り。韻式は、「AAA」。韻脚は「郷蒼腸」で、平水韻。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●●○,(韻)
●○○●●○○。(韻)
○○●●○○●,
●●○○●●○。(韻)。
2021.8.10 8.11 |
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