40歳~からの読書回帰

第101回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント


 
沖の権左

志坂圭

ディスカヴァー・
トゥエンティワン
1,620円(込)
 

978-4-7993-1804-1

 

 先日、クジラ世代かい?という話題があったので、捕鯨小説である。和歌山・静岡など鯨漁をする地域のうち、天明期の千葉県勝山が舞台だ。死んだふりをして、止めを刺そうとする漁師を何人も返り討ちにするため禁漁となったという伝説のマッコウクジラ“権左”に挑んでしまい多数の犠牲者をだした父にかわって鯨を追う若者の話。日本版白鯨(白マッコウなんですね)か、侍ジャイアンツの最初の方といったところか(-“-)。じゃあサメ(ジョーズ)ならいいのかいって気もしますが、アメリカの捕鯨史も映画でしか見られませんし、調査か漁か文化かってところできわどいポジションですのでせめて小説にてクジラを。江戸時代なので竜田揚げは出てきませんが竜涎香には少し触れています。





















第102回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント


 
人魚ノ肉

木下昌輝

文藝春秋
1,674円(込)
 

978-4-16-390285-2

 

 宇喜多の捨て嫁で、直木賞候補となる木下昌輝の第二弾。幕末の志士たちが、食えば不老不死になり妖に憑かれるといわれる人魚を食べてしまったからさあ大変!。新撰組崩壊の引き金となる(かもしれない)、幻想伝奇小説の始まりです。絶対に死なない不老不死を絶対無敵とするのではなく、死んでも死にきれない「無限ループの無間地獄」に陥ってしまう狂気の姿とし、生死をかけて憑かれたような狂気を孕んだこの時代の人たちが人魚を食ってしまったが故のものである、ということに史実を当て込んだ手法が秀逸です。表紙もカッコイイ。今回は、ウンベルト・エーコの訃報で“薔薇の名前”にしようかなんて生意気なことは思っていませんよぉ(-.-)






















第103回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント


 
まく子

西加奈子

福音館書店
1,620円(込)
 

978-4-8340-8238-8
 

 

 西加奈子氏の“サラバ!”にて直木賞受賞後の第一作目。小学校高学年の子供たち(特に男子)がたどるであろう心情を描いたとしてもう関係各所絶賛!!。“ズッコケ”や“あばれハッチャク”なんかとはまた一味違う子供たちの成長過程がみられます。…がもっと達観していてもっと未成熟でもっと野放図でもっと繊細で、実は残酷であったであろう同年代頃を思い出すにつけ、あまり感情移入が出来なかったのが正直なところ。年代の差かも。それぞれどんな印象を持つかが興味深いところなので、かつて子供だった人たちにぜひ。題名の意味は?とか、表紙のさる?とか言ったことはチャックですので。



















第104回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント


 
名作うしろ読み

斎藤美奈子

中央公論新社 734円(込)
 

978-4-12-206217-7

 

 

 終わりよければすべて良し、なのか こんな落ちかっ!といわれるのか。古今の名作文学作品のラスト一文を集めてジャンル分けし解説した本。いわゆる“まくら”は「太陽が黄色かったので、トンネル越えた桜の樹の下では一匹の虫になってしまった山椒魚が悲しんだ。どっどど どどうど」とよく耳に目にするほど話題になりますが、ラストはネタ・オチの関係でなかなか表だって出てこないので、記憶・印象に薄いかも。しかし!本文にも在ります「~お尻がわかったくらいで興味が半減する本など、最初からたいした価値はないのである…」と。さすが斎藤美奈子氏、名作なんて学校で習った分でイイヤと思っているあなた(ワ・タ・シ)へ伊達に名作なんて呼ばれないぞう、“読んだこと”はある しかしそれは“読んだだけ”。お楽しみはこれからだ(Byジャズ・シンガー&和田誠)。
























第105回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント


 
夢十夜/草枕

夏目漱石

集英社
文庫版  432円(込)
 

978-4-08-752033-0


 

 

 「深い海の底に居るのでは、と思わせるほど天井の高い学食で 資料を渡す教授の空き時間にはまだ間がある。程なくして向かった、薄暗く混沌としてゴミか否か判別できないものが散乱する研究室への廊下を抜けると、香港のセレブなホテルのロビーを思わせる吹き抜けのある空間が拡がった。しかし向かう先はここではない。閉館後の水族館の水槽前だ。上下一対に連なった(!?)巨大なサメの群れが泳ぐ黒い空間に、係の者と思しき影がいくつか吸い込まれていく。えっ、そっち行っちゃダメじゃん。ほら異形の生物が上陸しているやんか!叫ばなきゃいかんの?って躊躇しているのは声にならないからだけか!?それとも…」という夢を先日みました。“十一夜目の夢”というには稚拙な空想風景にお笑いです。(>_<) 決して「こんな夢を見た」で始まる一・二・三夜の幻想風景と比べてはいけません。
























第106回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント


 

聞け万国の…お仕事小説



 

978-4-19-893706-5
978-4-10-135751-5
978-4-19-894043-0
978-4-10-120141-2


 

 

 最近では、古書店やカフェ食べ物屋などが舞台の小説をよく見かけます。銀行・警察・消防署・病院・探偵などなど、メディア化されたものの原作がすぐに思い浮かぶほどですね。そんな“お仕事小説”のなかからちょっと変わったメンツ、スピーチライター(本日は~) 夢の国のキャスト(ミッキーマウスの~) 司法書士(リノベラー) 事務員(とにかくうちに~) そしてお馴染みのカニ(蟹工船)を。おすすめは「とにかくうちに帰ります」(津村記久子:新潮文庫)。何の仕事というより日常と職場とのかかわりの中での、何かが劇的に起こるわけでもなく かといって只のあるあるでもない 悩みと切なさとが滲み出す“働いている人”の小説という点でしょうか。アナ雪は、本日5/1にてメーデーならぬMay(-_-;)キレが悪い。






















第107回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント


 

ルリユール


村山早紀 

ポプラ社文庫 734円(込)


978-4-591-14936-2

 
 

 なにげに耳にするようになった、壊れた本を修復したり造本をする人を指す仏語“ルリユール”ですが、本作の主人公・中学生の 瑠璃が出会ったのはそのルリユール職人、チキンラーメンの好きな赤毛のクラウディア。彼女の手伝いをするうちに瑠璃ちゃんの心象すらも修復していきます。とてもやさしい本です。デジタル書籍ならば削除されたデータの復旧でしょうか…見えぬものでもあるんだよ:という某氏の詩のように、無くなっているわけではないぶん元通りになりますね。しかし形のあるものが壊れたならばなかなかそういう風にはいきません。本を治すとは物理的な事象を指すだけでなく、その本を手にした・読んだ・過ごした時の想いを再構築するということかもしれません。ただの紙の塊ではないので大切に扱いたいですね。間違ってもカバンなぞ置いてはいけません。
























第108回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント


 

極卵


仙川環

小学館文庫 724円(込)


978-4-09-406250-2

 

 

 某ガッテンとしてしまうテレビを見ていてびっくり。卵って常温でも腐りがたいのだそうで。殻と卵殻膜と白身に守られた黄身に、菌が到達し辛いからだと。不測の事態はカラザがはずれ 表層近くに黄身が移動した場合と、親鳥が感染していた場合。で、それをふまえて卵小説()を。臓器移植・遺伝子操作・食中毒・代理母などなど その経歴から、ジャーナリズムと医療系サスペンスを扱わせたら“この道の清張”と私が勝手に思っている著者。タイトルは「極めて旨い卵」で極卵。この卵がめぐる自然食品・食中毒・過熱報道・隠蔽とおきまりのコースで終わるのか、もうヒトヤマ展開するのか。イヤソレハ シカルベキ第三者ノ方ヲ通シテデスネシカルベキ第三者ノダイサンシャノ(>_<)





















第109回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント


 

『罪と罰』を読まない


岸本佐知子
三浦しをん
吉田篤弘
吉田浩美

文藝春秋 1,674円(込)


978-4-16-390366-8

 

 

 “誰なんだよイリヤって!”名だたる作家陣が読んでいない古典なのに、読むかーい!!コチとら江戸っ子でぃ(/ロ゜)/ ハイすみません暴言至極。、読んでいなくても展開する内容の推理や 会話の拡げ具合が、さすがは小説家さん達というところとこういう読書や本の楽しみ方もあるということとがこの本の見どころです。ちゃんと読後の座談会もあるのがオチになって()いますね。第二弾以降もあると面白いかも。






















第110回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント


 

ケムール・ミステリー


谺 健二

原書房 2,160円(込)


978-4-562-05299-8
 

 造形作家 成田亨をモデルにした密室殺人小説。トリックがどうの、奇想天外だの言ってはいけません。“あの” 成田亨ですよ。さもありなんな雰囲気を存分に楽しむというのが本書の正しい使い方ですね。光の国の方、来地球50年にあわせてぜひ。…あ“~Q”のほうか。2020年、もうすぐ表題の方がやってきます。




















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