40歳~からの読書回帰

第31回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント





 富士山頂


新田次郎

文藝春秋 605円

978-4-16-711241-7
 

 NHKドラマ「芙蓉の人」で支え合う夫婦を描いて評判がいい新田次郎と言えば、代表作は八甲田山~なのですが ここはひとつ世界遺産にて。昭和38年、富士山頂に気象レーダーを建設する事業を描いた記録文学形式で、プロジェクトXでも取り上げられていたので見られた方も多いはず。国への予算取りはあっさりクリア、比重は当然“あの”頂上に悪天候や雪を避け、いかに機械を設営するかのほうで、山対人の様相から人を描く、山岳小説家 新田次郎の真骨頂でしょうか。志を持った仕事に携わった先人の偉業に括目せよ。伊勢湾台風の教訓目的もあったようですし、雨土砂の災害続きなので。



















第32回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント





 復活の日 

人類滅亡の危機との闘い



小松左京/原作 
新井リュウジ/文

ポプラ社 1,512円

978-4-591-11137-6

 

 デングで東京が大変です。国内外問わず、ウイルスを題材にした小説・映画のなんと多い事か、身近でありながら あっというまに猛威を振るう、すわ全滅か!まで追い込まれても切り札 ワクチンがある、大団円or効果なし…という二転三転が良いのでしょうか。でウイルス小説と聞いて いつもすり込みのように思い出すのが、“復活の日”でした。新型ウイルスというとMM88かっ?と反応してしまいます。“小松左京原作のオリジナル・初出は1972年。出版社と判型を変えながら残念絶版。現在入手可能なものが、表題のポプラ社版(新井リュウジ/文)だけになってしまいましたが、映画版を見たのが小学生だったのでイメージはOKということにしてください(-_-;)




















第33回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント




二十歳の原点    

二十歳、最後の日記   新装版

『二十歳の原点』三部作


高野悦子

カンゼン 1,490円

978-4-86255-032-3
 

 第三者に読まれることを前提としていない、自己の内面を吐露する日記なので、時代背景が・過剰で繊細な自意識が・自殺願望が・孤独と絶望が・内省と行動…的な部分に違和感を覚える向きもあろうかと。取り上げられる機会の多い本ですが、必ずしも良い本だからと薦めるものではないです。共感できなくても ピンとこなくても良い、読後に何をどう感じるかが大事だと思う。「~独りであること、未熟であること、これが私の二十歳の原点である。」が2回目の20歳~を経ている自分でも、中身が成熟しきれていないことを自覚せねば(>_<)

カンゼンから新装版3部作が入手可です



















第34回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント



 

動物農場


ジョージ・オーウェル

筑摩書房 842円

978-4-480-43103-5

 

 いまだ収まらないウクライナとロシア情勢で、NATOがまたその抑止的存在価値を出してきて、冷戦時代にもどったような感じですが、そんな共産主義的支配や全体主義を揶揄した小説はそれこそ星の数ほど。で思い出すのがこれ。人間の搾取に気づいた家畜が反乱を起こすも、首謀となった豚が今度は独裁化してしまい、いったいどっちが人か家畜かすら見分けがつかなくなるといった内容。登場人物(動物)に色々なモデルが有るので当てはめてみるのも面白いかも。訳者と出版社を変えて二社から発売中です。(画像は筑摩文庫版、訳者/開高健)同著者「一九四八年」がその後年のユートピア思想を描いているので続けて読んでいくと良いです(早川epi文庫)



















第35回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント



 

ハルキワールド

 


 今年もっともノーベル文学賞に近い男!
に拍車がかかった感のあるドイツの「ウェルト文学賞」受賞が報じられました。前二人の日本人ノーベル文学賞受賞者の、川端は選考委員・オーケンは受賞した国内・某有名文学賞が、デビュー作を候補にとどめて以来無縁なのは見る目がなかったのか、大人の事情か(-_-;)ということで2度目の春樹ものの紹介は、全般・ハルキワールドとして今のうちに読書回帰してください。その無国籍ともとれる世界感やストーリー・文体ゆえ英・仏は勿論のこと20ケ国以上に翻訳されたデビュー作、「風の歌を聴け」から続く3部作から読むのがベストですが(読書は時系列派です)、こなれてきた「ねじまき鳥クロニクル」以降や、97年の「アンダーグラウンド」以降“かかわること”へシフトしたノンフィクションも読み進めていくうえで捨てがたいです。なぜシフトしたか(しなければならなかったのか)は、それこそいろんな方が書いていらっしゃるのでそちらに丸投げ!























第36回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント




楢山節考/東北の神武たち     

深沢七郎初期短篇集



深沢七郎

中央公論新社 994円

978-4-12-206010-4
 貧困地帯では今でもあるかもしれない風習で、伝説・民話ならば世界中にある姥捨ての話であるところのデビュー作、「楢山節考」は映画化・ドラマ化でも一度は耳にしたことでしょう。口減らし・ヒューマニズム・因習・親子の情などの描かれ方が、物は足りても姥捨て同然な現代の高齢化社会を揶揄しているようで興味深く、再読の価値有かと。実際に間引かれるのは子供であるとか、フィクションだ(小説なので当り前ですね)とかいったことの評論の入る余地のないほどです。他の姥捨て物語の「蕨野行」や、「デンデラ」(ちょっと変化球)などにも影響を与えたのはこの小説あってこそ。単体ならば新潮文庫で入手可ですが、「東北の神武たち」は絶版(中学生のころ読んだような記憶が…内容忘れ(-_-;))なのでお買い得です。なにより、中央公論新人賞選考の様子が巻末に収録されているのがナイス三島由紀夫!




















第37回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント



 

ヨコちゃんとライオン

角野栄子/文
網中いづる/絵

パイ インターナショナル 1,382円

978-4-7562-4606-6


 

 高島屋と言えばローズちゃん、大丸・松坂屋と言えばカトレヤ、伊勢丹はタータンチェック…などイメージやキャラクターがCIとして有ります。で三越と言えばライオン。玄関先のライオンと女の子が友達になるお話を「魔女の宅急便」でおなじみの角野栄子さんが書きました。親から子へ都合三代に亘って、当デパートを利用しています的な“お出かけ”と言えばここというのが皆あった世代ですね。特別の場所に行く限られた機会に子供のころはワクワク、ちょっとおしゃれしてバス乗って、お昼は洋食屋さんか7階レストラン街へ。そんなころを思い出させるようなファンタジーです。サンダル履いてジャージで行くところではない場所は、デパートから別の所へ移っちゃったかなあとも思う読後でした。「~飾る日も 飾らない日も~」と謳っているのでいいか(-_-;)




















第38回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント



 

落下する緑

永見緋太郎の事件簿


田中啓文

東京創元社 文庫 799円

978-4-488-47501-7

 

 11月1日・2日は毎年恒例の、岡崎Jazz Streetのイベントがあります。でジャズ小説。古今ジャズモチーフは勿論のこと、ジャズ的アドリブなストーリーとかまで含めると色々ありすぎて(筒井康孝・奥泉光・村上春樹・藤森益弘・ナット・ヘントフなどなど)またしても変化球にて。落語と食べ物と民俗学のミステリー作家でテナーサックス奏者 田中啓文が 以降のジュブナイル作品を上奏する前の、ちょっとグロい妖怪の話を書く前の、デビュー作です。主人公が空気の読めないサックス奏者という設定で業界ネタも散りばめてありますが、普通にミステリー・謎解きです。表紙がカッコイイ



















第39回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント



 

プライド PRIDE


真山仁

新潮社 文庫 562円

978-4-10-139051-2

 

  ニュースでスケートの中国大会を見た。男子代表・羽生君。練習中の接触、負傷にもめげず出場で見事入賞。

観客の期待と、スポンサードしてくれている会社と、何より自分自身のために 大ちゃん無き後、世界の中で 日本を背負って立たねばならなくなった若きエースの 孤独と高揚と覚悟はそりゃあもう。“~恍惚と不安 我にあり”と言った太宰センセーの言う通り!!行くもプライド、引くもプライド、プロフェッショナルな世界で生きる事の洗礼は スポーツ・経済・政治・芸術・文学…どのジャンルでも ましてや彼のような年齢であってもさらされます。向き合うその姿に心をつかまれ感動するのでしょう。ドラマ化の企業買収小説「ハゲタカ」でデビューした真山仁が、小説仕立てで社会の問題に対峙した人たちの譲れない矜持を描きます。



















第40回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント






 

みんなの

少年探偵団



万条目学ほか

ポプラ社 1,512円

978-4-591-14171-7

  乱歩生誕120年目の今年、あちこちの書店でもフェアをやっていることでしょう。これまでも大勢の小説家がトリビュート・パスティーシュ・後日譚…として書いています。中には、明知探偵のみならず乱歩自身までも登場しているものも有るほど人気は高く、漫画や映像・舞台まで含めるとそりゃあもう。なかでもこの年代ならばハッとする言葉の響きですね、少年探偵団(ヨシオといえば彼、ノロ・イノウエ・マユミといえばあの子たちですね)。それをメインにプロが手掛ける二次創作がポプラ社から出ました。“40歳~”で40回と変な節目に、「大乱歩もの?!」。 あのころ、図書館や学級文庫で手に汗にぎっていた少年少女はぜひ読書回帰してください。そして以降続刊あり!!
























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