40歳~からの読書回帰

第21回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント





 

サクリファイス


近藤史恵

新潮社 529円

9978-4-10-131261-3


 
 

 自転車のロードレースを舞台にした青春小説。最近でこそブームが来て、漫画が連載されたり レース結果や、“ツール”の英雄の薬物使用などの話題がニュースで取り上げられたりだけでなく、実際に乗る人口も完全に定着した自転車の世界。ピストだ700Cだビンディングだといった専門用語も普通に耳にするようになった。でその用語の一つ“サクリファイス”。ここでの意味もそのまま犠牲。自転車ロードレースではエースの総合ポイントで争う方式のため、同走のチームが影になり ラグビー風に言えば水を運ぶ役となりアシストする。自分のために走るとは引退を意味する。果たして競技そのものに当てられたスポットは、自転車好きの裾野を広げただけでなく、実際に競技をされている方もOKな内容だったそうです。ジャンル小説による誘引としてニッチではなくなりましたね。エースが最後に仕掛ける“サクリファイス”が、ミステリ作家的矜持か。それは読んでからのお楽しみ。諸々文学賞受賞作品です

 






















第22回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント






五重塔

幸田露伴

岩波書店 432円

978-4-00-310121-6


幸田文しつけ帖

幸田文/青木玉・編

平凡社 1,728円

978-4-582-83423-9

 

 

 W杯と重なって影の薄い父の日なので、久しぶりの“親子鷹”を。

教科書で習いましたねの文豪 幸田露伴から伝えられた、生活のしつけや礼儀を作家の娘 幸田文が綴ったエッセイ。さらにそれを幸田文の娘(当然 露伴の孫)青木玉が編集するという三代文筆一家の集大成シリーズ。祖父は幸田文の母・兄弟二人 を看取っていると、娘 青木玉が結婚するとき「楽しくしている母さんを見ていきたい」と。お父さん(おじいちゃん)は、お母さんは、こんなにすごかった。幸せだったかどうかは、他人にはうかがい知ることはできないが、苦労したであろうことは間違いない。






















第23回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント





直感を磨くもの

 小林秀雄対話集


小林秀雄

新潮社 767円

978-4-10-100709-0



 

 小林秀雄ぐらいは必読だからね、と諸先輩方から言われてそのまま早何年。2013年のセンター試験に一部評論が出題されたぐらい久しく高校生はおろか大学生にも無縁でした。不肖の弟子はまだ読んでいません。そこで!この本。各界の雄との対話をまとめたものなので読みやすいです。回帰というよりチャレンジ?。初出が昭和20年代の雑誌掲載と古いだけに、メンツがすごい。三好達治・横光利一・折口信夫・湯川秀樹・福田恒存…芸術、文学、哲学、物理学、政治など々々から、物事の本質を見抜く直観とは何ぞやということに思考を巡らすもの。帯の文章で、大岡昇平が「~あのころ、あんた(小林)は柳田国男を泣かせたりよく年寄りをいじめたときだったけど…」「それは絶対デマだよ~」「だって~岩波文庫でフレイザーの“金枝篇”がでたころ…」ってすごい会話なんですけど(-_-;)




















第24回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント





かもめのジョナサン

 


リチャード・バック

新潮社 562円

978-4-10-215901-9
 

 満を持して紹介の一冊。著者自身が公表を止めていた第4パート部分を、新たに訳した創訳・完成版が発売されました。曰く、文庫版が発売された当時の世相・思想がでている 曰く、ヒッピー的スピリチュアリズムな世界感がなじめない 曰く、カルトの選民か? 曰く、他人に流されないオンリーワンの感覚、などなど賛否両論あります。誰もが泣いたね、みんな笑ったねの本も有れば、10人いれば10通りの受け止め方をするものも有っていいかと思います。一度読んだ人も初めての人も、未成熟な感性の時も、経験値を積んだ今でも、それぞれの感覚でOKな懐の深さのある小説だと思います。あ、ジョナサンが海面スレスレを飛ぶと“…少ない力で済み滞空時間も長くなる…”グランドエフェクトですね。リチャード・バック、さすが飛行機乗り!!





















第25回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント





望郷

 

森瑤子

角川書店 821円

978-4-04-101336-6


 

 20数年前、サイン会に来ていただいた著者にお会い()したことがある。トレードマークのようなつば広の帽子と、筆ペンでされる達筆なサインが印象的でした。訃報を聞いたのはその数年後。大ヒットしたかつての ハイソな女性を描いた小説やエッセイも、現在入手できるものが少なくなってしまいました。本書も1990年発売のものの復刊です。なぜならば、NHK朝ドラ「花子とアン」の次回作「マッサン」が本書の主人公 ニッカウヰスキーの竹鶴政孝と妻リタのお話だからです。タマテツこと玉山鉄二さん演じる創業者と異国から来て苦労のないはずがないリタの人生を、“森”節で読書回帰してください。予習を兼ねてウイスキー片手に。




















第26回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント




 

 
岡崎空襲体験記

岡崎空襲を記録する会 

1,296円
 

 今から69年前、昭和20年の今日 7/19~20にかけてこの地域にも空襲が有りました。名古屋の軍需工場補完的な場所で、一定規模の都市であることが標的の理由。その体験を伝える市井の方が編まれた、岡崎空襲体験記も二度目の紹介で、新刊にて第四集/総集編となりました。自分たちの 親の年代でも年少の頃だと思われます。記憶が風化するから戦争をしたがる政治家がでてくるのですか?それとも?
読書回帰の趣旨とは少し異なるものですが、来年も再来年も,今日をわすれないでください。















第27回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント





 
いつも食べたい!

林望

筑摩書房 864円

978-4-480-43029-8

 
 

 食エッセイでおなじみの“リンボウセンセイ”こと林望の、高級な食事だけではない 食ベモノと食ベルコトに執着した本書。筑摩書房 刊の禁デジなので、書籍媒体のみなのもOK。「…食べものの旨さを知るには、食いしん坊でなくてはならない。~自分の愛する名店が、仏蘭西のタイヤ屋さんのお節介の目に触れなかったことを密かに喜んでいる…」だそうです。食に関する文章は、誰しもの関心が高いジャンルなのは間違いなく、高級料理・屋台の食事・オフクロの味・食べ歩き・和洋中・つまみにお菓子…それぞれに語る専門家がいらっしゃって、「安くてウマイ!! 一つをとってもいろんな意見を見ることができますね。本書を読んでお腹がすいたら、さっそく期間限定・在庫限りのランチパスポートVol.2を持って、お昼を食べにいこ- (_)!! 























第28回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント





風の盆恋歌

 


高橋治

新潮社 529円

978-4-10-103911-4

 

 季節がらの選書、と言いたいところですが 富山県八尾・おわらの“風の盆”の行事は旧暦の8/1から3日間、つまり9/1~なので1ヶ月前です。3日間おわら節を踊り続け、風神(台風被害)への鎮魂を祈願するともされているお祭りです。祭りの日、年に一度の逢瀬を描いた不倫で不治の病を抱えた主人公の話ですが、その設定はともかく“風の盆”の幽玄性を描くのが主といってもいい恋愛小説で、現実と幻想的世界とを揺れるように流れる情景描写や、やわらかい方言の言葉まわしが素敵です。よく20代に読んでおきたい本に挙げられますが、とんでもない。不倫~はさておき この美しく静謐な文章は、この年にならないと滲むようにひろがっていかないのかも。2度目ならばかつてとは違う受け止め方をされているはずです。おお読書回帰(_)!!



















第29回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント





 人間の証明


森村誠一

角川書店 720円

978-4-04-175360-6
 

  一定の年代を境に針の振れ幅が如実に出てきます。森村誠一・松田勇作・脚本は松山善三(高峰秀子さんの旦那様)・挿入歌はジョー山中…ああ角川映画黄金期!! 映画のイメージが強すぎて原作を忘れそうですが、ラストあの詩がきっかけで失いかけた“人間の証明”を取り戻すあたりは同じかと。時間的に かっつめた映画版より、平行線に進んだ物語の糸がつながっていく小説版も良いです。でもジョー山中氏の歌のイメージと、麦わら帽子の映像は侮れませんね。ハイ今日は“帽子の日(810ハット)”で、という落ちでした。(-_-;) 



















第30回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント





 メメント・モリ
  -死を想え-



藤原新也

三五館 1,944円

978-4-88320-448-9

 

  夏はお盆や終戦記念日がある、という訳でもないでしょうが亡くなられた方と向き合う季節というイメージが強いです。身近な方が亡くなられたりする年齢になったことも含め、必然「死」ということを意識下に考えることが多くなりました。表題のメメント・モリとはキリスト教教義内の“死を忘れるな”とか“死ぬことを記憶せよ”という意味のラテン語ですが、本書に影響を受けたミスチルが、歌のタイトルに使っていたりします。初出は1990年。絶版・改訂を経て2008年復刊されました。夏になると、死者がそこにある日常(比喩ではなく) というこの本の写真をなぜか思い出します。20数年前の今より擦れていなかった頃(-_-;)に出会った本は、今年もやってきます。
























PAGE TOP