40歳~からの読書回帰

第41回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント





 
・足助の昔話
・むかしむかしあるところにⅠ
・むかしむかしあるところにⅡ
・むかしむかしじいちゃんが子どもの頃
・べんけいと六所山と炮烙山
・二本松峠の大蛇の墓
・カレンダー「山の暮らし」
 
 
豊田市で昔話や民話を聞き集め、紙芝居や絵本の活動をされている中村広子さんの作品を販売しています。農文協の季刊こども農業雑誌“のらのら“にても季節の行事イラストを連載されているほか、著作はいづれも旧 下山村に伝わる土地の風習や伝承のおはなしが中心ですが、やわらかいイラストとともに地域を問わず懐かしいものが蘇ってきます。ぎりぎり原風景だった世代ということに加え、今の子供たちにもぜひ知っておいて欲しいという思いから、読書回帰というよりは“体験の回帰”的な紹介。2015年度カレンダーカード「山里の暮らし」が新入荷です。

  
こちらもどうぞ



















第42回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント



 
あ・うん

向田邦子

文春文庫 508円(込)

978-4-16-727720-8

 高倉健さん出演の映像作品をあらためてチェックしてみた。任侠物、過去を背負った寡黙な人、工夫、愚直な刑事、そしてゴルゴ…と“不器用”と言う割には色々な役を(でも雰囲気は似ていますね)演じていらっしゃいました。映画版・NHKドラマ版など有りますが、健さんは映画版に主演です。狛犬の阿吽のように、対照的な二人の男性と夫人の三角関係を、太平洋戦争を控えた時代の緊迫した中に見える 日常のゆるさで描いています。トレンディドラマか昼ドラ的な位置付けをする作品で、主演映画の原作の中でも比較的手に入りやすい浅田次郎「鉄道員」や新田次郎「八甲田山」を抑えてこれを。同じく入手が容易なのと、短編の多い向田作品のなかで長編小説ですし、向田といえば寺内寛太郎~を思い出してしまう世代なので。


















第43回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント




 週刊文春の
ミステリーベスト
10


満願
 1,728円(込)
ISBN 978-4-10-301474-4

闇に香る嘘 1,674円(込)
ISBN 978-4-06-219094-7

さよなら神様  1,620円(込)

ISBN 978-4-16-390104-6

 

第一位「満願」米澤穂信 (27回山本周五郎賞)

第二位「闇に香る嘘」下村敦史(60回江戸川乱歩賞)

第三位「さよなら神様」麻耶雄嵩(ランキングお馴染み)

 ランキングや大賞の類が増えてきます。本の世界も例外ではありません。年明けの芥川・直木賞は言うに及ばず、年末の絵本屋大賞、春の本屋大賞、新設の翻訳大賞などなど 各ジャンル独自のランキングをしかけていますが、中でも今年38回目を迎える週刊文春のミステリーベスト10が発表されました。宝島社の「このミステリーがすごい」に押された感もないではないですが、年に一度読書傾向の参考にするに値するランキングだと思います。本格・新本格・社会派とはず豊かなフィクションの世界で読書回帰してください。



















第44回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント



 
宴のあと
 

三島由紀夫

新潮社文庫 529円(込)


978-4-10-105016-4
 選挙を題材にした小説は 祭り上げられて乗り気になって出馬するものや、何とか当選させようと応援に奔走する姿がコミカルなもの、政治の舞台裏を克明に描いたものなどなど、題材にしやすいのか硬軟とりまぜていろいろあります。で“硬”の方。衆議院か都知事選かという違いはありますが、理想主義でクリーンな夫よりも、政治は知らなくとも現実的でダーティーな金も持さない妻の話。夫のため・選挙のため・選挙敗戦後(宴のあと)の空虚、という妻の感情の流れ。実際の政治家がモデルということで起きた裁判も有名ですね。斯様に文学は政治(現実)を超えるのか、一票を無駄にしているのは投票しなかった者か、投じられた本人か。さて本日、投票には行かれたでしょうか。

















第45回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント



 
直木賞物語
 

川口則弘

バジリコ 2,592円(込)


978-4-86238-206-1

  こちらもどうぞ

 2,014年下期 第152回 芥川・直木賞候補発表!

 年々話題が薄れ、逆に 最年少女子ダブル受賞・候補のみ足かけ何十年…などの話題性のみが取りざたされるようになった同賞です。本書は本邦では、知名度やその後の作家活動などの面でもトップクラスの賞であるにもかかわらず、あまり知られていない実像を綴った本で、著者のサイトはいつも参考にさせて頂いているほど、何度目かの紹介になると思います。受賞作のみならず日の目を見る候補の小説たちをきっかけに、読書回帰の参考にしてみても良いかと。さて今回は、新鋭作家へ(芥川)・通俗小説へ(直木)送られていた栄誉といった本来の性格はどこまで残っているでしょうか。発表は来年1/15(木)17:00~からの選考開始にて20:00頃です。(芥川賞物語もあり)

















第46回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント



 
エンドレス・ワルツ
 

稲葉真弓

河出書房新社 1,836円(込)


978-4-309-02342-7
 長らく絶版になっていたのを、今年の8月に病気で逝去されたことで急遽復刊となった稲葉真弓の代表作。薬物と酒で精神が破綻し、心停止になったミュージシャン・阿部薫と、後を追うように自殺した女優・鈴木いづみの二人を追いかけるように「物語記録」として綴ったもの。実は阿部の音楽を聴いたことはないし、鈴木いずみも“文遊社”のコレクションシリーズ・エッセイでしか知らない。が、危険ドラックで崩壊する人のニュースを耳にするに、その人たちと一括りにしてしまうにはあまりにも切ない。その時代に生き、その時代を駆けて、その時代の囚われとなった二人の生き方の なんと純粋で混沌としたものか と思わせます。そんな稲葉真弓の、切々たる文章で読書回帰してください。

















第47回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント


 
久坂玄端の妻
 

田郷虎雄

河出書房新社 713円(込)


978-4-309-41327-3
 

 本日より2,015年大河ドラマ「花燃ゆ」が始まります。

本書は原作ではありませんが、東出昌大さん演じるところの最初の夫 玄端が、蛤御門の変で自刃するまで共にした二人の生涯を、井上真央さん演じる主人公“文”の視点から描いたもの(大村益次郎が主役の77年大河「花神」では、斉藤とも子さん・志垣太郎さんが演じられました)。初出刊行は1,943年。戦時中ど真ん中で、あまり史料もない二人に加え幕末もので女性を主人公としているところに感銘を受けます。維新の本・小説は多けれど改めてスポットを当てて読書を拡げる元にして下さい。大河ドラマ、ヒットしますように…

















第48回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント



 
雪だるまの雪子ちゃん
 

江國香織

新潮社 724円(込)


978-4-10-133927-6

  西高東低の典型的な冬型気圧配置に加え縦型前線で、太平洋側は乾燥・日本海側や北海道は大荒れですね。こちらではイメージしづらいですが、雪舞う中 見上げると雪だるまが降ってきてもおかしくないと思わせる空が続きます。で雪だるまが降ってきたんですよ。引越しのあいさつもすればトランプもし、コミュニケーションをとりながらたき火にもあたる、“野生の雪だるま”が。けれども訪問者はあくまでも“野生”として線を引くし、受け入れ側も 異質なものとして排除するわけでもなく、接します。一見ファンタジックな様相でも、違う意見・思想・異文化などが身近に存在するとはどういう事か…的なことを当てはめると、今の世相にも相通じるものがでてくるかもしれません。初出が子ども向け絵本ということを考えても興味深いですね。この季節と世事にピッタリの() 小説で、読書回帰を始めてください。自身、やっかいで辛い雪も そのすべてをひっくるめた冬の状況が、生活や人生に与える影響や豊かさの一部として人を形成してきたのかなあと感じます。ちなみに作者は東京出身ですが(^_^;)





















第49回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント



 
セプテンバー・ラプソディ
 

サラ・パレツキー

早川書房 1,404円(込)


978-4-15-075375-7


 

 早川HMの定番と言ってもいいでしょう、サラ・パレツキーのヴィクシリーズ 3年ぶりの新刊です。表紙が今風になった新装刊分は、携行武器もリボルバーからオートになり 6巻目を数えました。前シリーズの活躍に喝采した世代ですが、今ではブ〇〇オフでも揃い難いです。「白いドレスの女」のキャスリン・ターナーが演じた映像化作品もイメージ通りでしたね。カッコいい女性の代表のような本作を、回顧というよりはあらためて読める楽しみをかみしめています。文庫なのに1,400円代、高ーい(>_<)


















第50回タイトル・著者・出版社・税込・ISBN コメント



 
臣女
 

吉村萬壱

徳間書店 1,836円(込)

 
978-4-19-863889-4


 

  今一度読書を始めようという当コーナーにはきついかも。“ボラード病”の著者・吉村萬壱 節全開です。受け入れがたい人きっと多し。巨大化(!?)した妻の介護的面倒をみる夫と周囲・世間の軋轢に、倫理とは愛情とは ホラーともSFとも殉愛とも読みとれる文章が神経を逆撫でします。巨大化もそれに伴う糞尿処理の介護描写も海のシーンも、荒唐無稽と思えるシチュエーションは、夫が負った贖罪の比喩と捉えました。ラスト解き放たれたものが、未来への自由なのか諦念なのか、ストレートな解釈をするわけにはいかない。腹括って読んで下さい。芥川賞作家はこうでなくっちゃ。





















PAGE TOP