詩詞世界　碇豊長の漢詩　天安門革命詩抄花下詩

花下詩　

花兒雖少自家栽，
淸明時節含泪來。
一束鮮花全家心，
總理在人民心中活萬代。

　　　　　　　一家老小

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花の下の詩

花は　少なりと雖も　自家にて栽ひ，
清明の時節　涙を含みて来たる。
一束の鮮花　全家の心，
総理は　人民の心中に在りて　万代に活きん。

　　　　　　　　　　　　一家の老小

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◎　私感訳注：

※花下詩：花輪に添えられた詩。原注に「これは、美しい花束に添えられていた詩である。」とある。

※花兒雖少自家栽：花は少ないけれども、自分の家で作ったものであり。　・花児：　（現代語）花。「児」の意味は、普通、特にない。名詞等に付けられる接尾辞でかわいらしさを表したり、形容詞の名詞化の働きをする。ここでは、前者の意味である。口頭語である。もしも、「児」を嫌って、「児」を取り、「花雖少自家栽」とすれば、第一句は七言の句でなくなるし、「花・雖少・自家・栽」と、とても不安定な形になる。原詩の「花児・雖少・自家・栽」とすれば、二字ごとにまとまって落ち着きがよい。それでも敢えて換えたければ、詩語の中から「春芳、春英、

卉、紅×、香×、…」等、適切なものを探して入れ替える。現代語だったら「鮮花、白花、花卉、」になるのか。ただ、これは、あくまでも詩を作るための一考であって、原詩の良さは、何ものにも勝る。
　　注意しておかなければならないのは、詩詞の朗詠に際しては、「花児」の二字は、はっきりと二音節で言わなければならないことである。
　　但し、文字数は二字でも、口頭語の会話音については、これと異なる。実験音声学では一音節であることが確認されている（「音韻」李思敬）。話すときは「花児」：huarで一音節となる。（花ｈｕａ＋児ｅｒ＝ｈｕａｒで、ｈｕａ　ｅｒではない。）もっとも、これは接尾辞としての「児」の場合だけである。この児化韻については、次の例を見てもらえば分かり易い。

　　　　股児：ｇｕ＋ｅｒ＝ｇｕｒ　　　　　「児」は接尾辞　（意：株券の株（余り使わないが比較例として挙げた））
　　　　孤児：ｇｕ＋ｅｒ＝ｇｕ　ｅｒ　　　「児」は名詞（子供）（意：みなしご）

「股」「孤」は声調は違うもののどちらもｇｕであるが、「児ｅｒ」の本来の意味が生きている「孤児」は、二音節でいう。　しかし、接尾辞としての「児ｅｒ，ｒ（等）」が付く「股児」は一音節で言う。
　　なお、詞では、口語的な表現もよくあるので、「－児」は古典でも使われている。例えば、宋代の李清照「声声慢」では、「…。守着窓児，…」、同人「永遇樂」では、「…。鋪翠冠児、………。不如向簾児底下、…」などがある。
　・雖少：　少ないと雖も。

※淸明時節含泪來：清明節は涙とともにやってきた。　・清明時節：清明節。陽暦の四月五日ごろ。二十四気の一で春分から数えて十五日目から三日間。先祖のお墓参りなどをする日。　・泪：涙。

※一束鮮花全家心：一束の鮮やかな花は一家の心づくしで。　・一束鮮花：　一束の鮮やかな花。「鮮花一束」とは、普通しない。現代語の普通の会話では「数＋量詞（助数詞）＋名詞」の言い方をする。　・全家：　（現代語）家族全員。

※総理在人民心中活万代：（周恩来）総理は人民の心の中に永遠に生きている。*「総理・在・人民　心中／／活・万代」と切れる。伝統的な節奏の感覚は全くない。　・活：生きる。

※老小：　年のいった者と、若い者。つまり、全員。

◎　構成について

韻脚は、「栽」「来」「代」で、現代語の用法。－aiの韻を踏んでいる。
古典的な言い方をすれば、同じ「-ai」をとりながら、平韻、仄韻が入り混じっている。唐詩では、見られない用法。一部宋詞ではあり、現代詩ではよく見られる手法。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

１９９９．　６．１６記
１９９９．　９．２３改
１９９９．　９．２５改
１９９９．　９．２８改
２０００．　５．　５整
２０００．　９．１０補
２００１．　２．１５
２００７．１０．１２