Huanying xinshang Ding Fengzhang de zhuye



七言律詩

    憶重慶談判
一九四五年



有田有地皆吾主,
無法無天是爾民。
重慶有官皆墨吏,
延安無土不黄金。
炸橋挖路爲團結,
爭地爭城是鬥爭。
遍地哀鴻遍地血,
無非一念救蒼生。


                    ******

       重慶談判を 憶ふ

有田 有地  皆 吾が主
(つかさど)れることにして,
無法 無天  是れ爾
(なんぢ)の民。
重慶 官 有れど  皆 墨吏にして,
延安 土 無ければ  黄金たらず。
橋を 炸き  路を 挖
(うが)つは  團結の爲,
地を爭ひ 城
(まち)を爭ふは  是れ鬥爭。
地に遍
(あまね)き 哀鴻  地に遍き血,
蒼生を 救はん 一念に 非ざる無し。



                *****************

◎ 私感註釈

※重慶談判:重慶交渉のこと。1945年、第二次世界大戦の終結に伴い、中華民国の臨時の首都であった重慶で、共産党幹部が国民党首脳と会談、毛沢東と蒋介石をそれぞれの代表として、内戦の回避、国共合作による新中国の建設等を互いに認めあった双十協定が結ばれた。その結果、中共に政治的主導権を与える結果となった時の詩。この詩は、「吾」「民」「炸橋路爲團結」等をどう取るかによって、意味が正反対になる。要注意。

※有田有地皆吾主:耕作者がその田地を所有することは、我々の主張し、つかさどっているところである。 *ここを「有田有地吾爲主」ともする。その場合に意味は、「有田有地(の政策)で、我々は主人公となった。」になる。 ・有田有地:田地を小作人が所有すること。この政策を実行することを“分田分地”という。なお、近現代の農地所有者の変遷は、 富裕農民・地主→零細農民→公有 となっている。 ・地:ここの用法では、日本語の「畑」に相当する。「トウモロコシ畑」を“玉米地”という場合の“地”に同じ。 ・吾主:我々が主張すること。「主」を動詞と見れば、我々がつかさどる、となる。

※無法無天是爾民:ごろつきのようなのは、お宅の国民である。 *ここを「無法無天是爲民」ともするが、その場合、意味はがらっと変わり、「無茶なことをしたがこれも人民のため」になろう。 ・無法無天:むちゃをやる。ごろつきのようである。無法の限りを尽くす。国法も天理も眼中にないさまをいう。歇後語(言葉遊び:
前半の喩えの部分(青字部分)だけ言って、後半の部分(赤字部分)を推察させるしゃれ言葉)「和尚打傘無法(法/髮)無天」(お坊さんが傘をさす)。お坊さんは「無髮」(髪がない「法」:〔fa3,fa4〕≒「髮」〔fa4〕)で、傘をさしているので「無天」(空がない))の後半部分を使った。 ・是:…は…である。これ。主語と述語の間にあって述語の前に附き、述語を明示する働きがある。〔A是B:AはBである〕。 ・爾民:なんぢの民。国民政府側の国民。

※重慶有官皆墨吏:重慶には官僚群がいるが、みな貪官汚吏だ。 ・重慶:中華民国の臨時の首都。四川にある。 ・墨吏:貪慾で私腹を肥やす官吏。

※延安無土不黄金:延安には、価値ある土地でないものはない。 ・延安:共産党勢力の根拠地。陝西省にある。後、革命の聖地とされる。 ・無…不…:…でないのはない。 ・無土:耕作する土地がなければ。 ・不黄金:黄金たり得ない。価値を生み出すことができない。「黄金」を用言(虚字、動詞的なもの)としている。

※炸橋挖路爲團結:橋を爆破し、路に穴を掘って、(通行の妨碍をするのも、共産党に結集する人民の)団結のためである。 ・橋路:橋(を爆破し、)路(に穴を掘って、通行の妨碍をするのも)の意。 ・炸:〔さく;zha
4●〕爆破する。 ・:土を掘る。文語の「掘」に近い。 ・爲-:〔ゐ;wei4●〕(共産党に結集する人民の団結の)ため。

※爭地爭城是鬥爭土地を取り合いし、街を取り合いするのは、(革命)闘争なのである。 ・爭地爭城:土地を取り合いし、街を取り合いするのは。 ・城:〔白話〕市。町。

※遍地哀鴻遍地血:災禍によって流浪する民の哀れな様子や、到るところの血(の惨事は)。 ・遍地:到るところの。毛沢東の『到韶山』一九五九年六月二十五日到韶山。離別這個地方已有三十二年了。(一九五九年六月)に「別夢依稀咒逝川,故園三十二年前。紅旗捲起農奴戟,K手高懸覇主鞭。爲有犧牲多壯志,敢ヘ日月換新天。喜看稻菽千重浪,
遍地英雄下夕煙。」とある。 ・哀鴻:哀しげに啼く雁の意で、災禍によって流浪する民のこと。「遍地哀鴻」は、前述の意の諺「哀鴻遍野」を元にしている。清・周實の『睹江北流民有感』に「江南塞北路茫茫,一聽嗷嗷一斷腸。無限哀鴻飛不盡,月明如水滿天霜。」とあり、清末/民國・孫文の『無題』に「半壁東南三楚雄,劉カ死去霸圖空。尚餘遺?艱難甚,誰與斯人慷慨同。塞上秋風悲戰馬,~州落日泣哀鴻。幾時痛飮黄龍酒,攬江流一奠公。」とある。 ・遍地血:到るところの流血の意。

※無非一念救蒼生:人民大衆を救い(たい)という一念(から出たこと)にほかならない。 ・無非:…にほかならない。また、…でないことはない。きっと…である。どうせ…だ。…あらざる無し。ここは、前者の意。 ・一念:一念。考え。 ・蒼生:庶民。人民大衆。





◎ 構成について:

 七言律詩というが、押韻は律詩とは言い難い。平韻一韻到底のはずだが、換韻になっている。或いは作者の湖南方言の特性である-n韻と-ng韻を区別しないことからきているのか。韻書を手許に置いて作るという姿勢でないことがよく分かる詩である。韻式は「AAAA」。脚韻は「民金爭生」で、「民」は平水韻上平十一真で「金」は平水韻下平十二侵で、現代語からみれば同じに見えるが、全くの別物で、「民」の上平十一真とは-in韻のことであって、「金」の下平十二侵とは-im韻のことである。「爭生」は下平八庚。-ng韻である。次の平仄はこの作品のもの。
    
    ●○●●○○●,
    ○●○○●●○。(韻)
    ○●●○○●●,
    ○○○●●○○。(韻)
    ●○●●●○●,
    ○●○○●●○。(韻)
    ●●○○●●●,
    ○○●●●○○。(韻)

    
2002.6.23
     6.27
     6.28完
2013.3.28補



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