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       送宇文六

                 常建


花映垂楊漢水清,
微風林裏一枝輕。
即今江北還如此,
愁殺江南離別情。


******


宇文六を 送る
 
花は垂楊に映じて  漢水 清く,
微風 林裏  一枝 輕
(かろ)し。
即今 江北  還
(ま)た 此(か)くの如からん,
愁殺す  江南 離別の情。


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◎ 私感註釈

=rs55=r95=
※常建:盛唐の詩人。字は休文。708年〜不詳。開元年間の人。開元十五年進士となる。進士となるも、致仕。放浪の後鄂渚に寓居す。この鄂渚とは、地名なのか、場所を表す言葉(湖北省の水郷地帯の意)なのか、目下不明。

※送宇文六:宇文六を見送る。宇文六は名前。宇文家の六番目の男子。宇文(うぶん;yu3wen2)は復姓。六は排行。

※花映垂楊漢水清:赤い花は、(緑色の)しだれやなぎに映えて、漢水の流れは清らかであり。  ・花:恐らく赤い花。 ・映:はえる。照り映える。 ・垂楊:しだれやなぎ。 ・漢水:現在の武漢(漢口、漢陽)で長江に合流する川の名。陝西省に発して、湖北省襄陽、襄樊を経て漢口に至る大河。 

※微風林裏一枝輕:そよ風が林の中(から吹いてきて、)一本の枝を軽やかに(揺らした)。 ・微風:そよ風。かすかに吹く風。 ・林裏:林の中(から)。木の茂み(から)。 ・一枝:一本の枝。必ずしも数の一本に拘る必要はなく、微風の吹く程度がわずかであるというイメージを表したい。 ・輕:軽やかである。

※即今江北還如此:目下の江北もまたこのよう(のどかな春景色の中)にあるのだろう。 ・即今:目下。只今。 ・江北:「長江の北側」の地方。宇文六がこれから向かう所になる。 ・還:なおもまた。また。 ・如此:このようである。かくのごとし。ここでは江北も、そのようであろうと想像している。「かくのごとくあらん」。

※愁殺江南離別情:(ここ)江南の地で、別離の思いにひどく愁えている。 ・愁殺:ひどく愁えさせる。うれえる。悲しむ。程度の酷いことを表し、意味を強めるための接尾辞。「忙殺」「笑殺」等の「殺」に同じ。『古詩十九首之十四』「去者日以疎,來者日以親。出郭門直視,但見丘與墳。古墓犁爲田,松柏摧爲薪。白楊多悲風,蕭蕭愁殺。思還故里閭,欲歸道無因。」や漢・無名氏の『古歌』「秋風蕭蕭愁殺,出亦愁,入亦愁。座中何人,誰不懷憂。令我白頭。胡地多飆風,樹木何修修。離家日趨遠,衣帶日趨緩。心思不能言,腸中車輪轉。」 岑参の『胡笳歌送顏真卿使赴河隴』「君不聞胡笳聲最悲,紫髯濠瘡モ人吹。吹之一曲猶未了,
愁殺樓蘭征戍兒。」 やがて秋瑾の『絶命詞』でも使われる。 ・江南:普通は長江下流の南岸一帯の風光明媚で、気候が温和で、物産が豊かな江南地方を指すが、ここでは、「川の南」「長江の南側」の意で使っている。作者が留まっている所であり、現在二人が別れを告げようとしている所になる。 ・離別情:別れの思い。

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◎ 構成について

韻式は「AAAbbCCDDD」。韻脚は「清輕情」で、平水韻下平八庚。次の平仄はこの作品のもの。

○●○○●●○,(韻)
○○○●●○○。(韻)
●○○●○○●,
○●○○○●○。(韻)
2005.1.4
     1.5

漢詩 填詞 詩餘 詩余 

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