風散士郷愁　詩詞世界碇豊長の詩詞　来信・投稿

読者のページ

　これは風散士雅兄の作品で、読み下しも風散士雅兄です。 ******************

鄕愁
關山別涙幾消光、盛夏嚴冬想故郷。菽水欣歡過倏忽、寒泉至思恥頽唐。霜辛雪苦經塵世、粗食襤衣老草堂。今日深愁風樹嘆、皆無考妣倚門望。

関山別涙　幾消光　、
盛夏厳冬　　故郷を想ふ。
菽水しゅくすゐの欣歓きんくゎんは　倏忽しゅっこつと過ぎ、
寒泉の至思　は　頽唐を恥づ。
霜辛雪苦　塵世　を経て、
粗食襤衣らんい　草堂に老ゆ。
今日深愁　風樹ふうじゅの嘆たん、
皆無考妣かうひの　倚門いもんの望ばう。

　　　　　　　　　　　　*********

・関山：	ふるさとの山、故郷の意。
・菽水之歓：	菽水は豆と水、質素な食事。貧困の中にあってもよく孝養をつくすこと。(戦後は総ての人はこのようであった）
・過倏忽：	ここでは幼少時代をいう。
・頽唐：	(至思が）くずれ衰えること。
・寒泉之思：	寒泉（地名）がその地域をうるおすように、子が親を思う心。
・至思：	ここでは孝行。初唐の狄仁傑の七律「帰省」の第七句「人生百行無如孝」の詩意を借用。
・襤衣：	破れ衣。
・風樹嘆：	孝養をしようと思い立った時には、すでに親が死んでいて孝養をつくすことが出来ない嘆き。
・考妣：	亡父亡母。
・倚門望：	門戸によりかかって我が子の帰るのを待ち望む母の情をいう。