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望江南 | |
明・王世貞 |
歌起處,
斜日半江紅。
柔綠篙添梅子雨,
淡黄衫耐藕絲風。
家在五湖東。
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望江南
歌起 くる處,
斜日 に半江 紅 し。
柔綠 の篙 は添ふ梅子 の雨に,
淡黄の衫は耐 ふ藕絲 の風に。
家は五湖 の東に在 り。
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◎ 私感註釈
※王世貞:明の文学者。嘉靖五年(1526年)~萬暦十八年(1590年)。太倉(現・江蘇省内)の人。字は元美。号は鳳洲、弇州(えんしうYan3zhou1)山人。官は南京刑部尚書に至った。李攀龍らとともに後七子(こうしちし)の一。盛唐の詩、秦漢の文を尊ぶ古典主義を倡えた。
※望江南:詞牌の一。詳しくは「◎構成について」を参照。
※歌起処:歌が起こる処。 *水郷で、ハスやヒシを採る労働歌の起こるところ(は)。
※斜日半江紅:夕日で川の中半(なかば)まで、赤い。 ・斜日:夕日。斜陽。 ・半江:川の中半(なかば)。川の半分、の意。中唐・白居易の『暮江吟』に「一道殘陽鋪水中,半江瑟瑟半江紅。可憐九月初三夜,露似眞珠月似弓。」とあり、後世、日本・夏目漱石の『無題』に「大愚難到志難成,五十春秋瞬息程。觀道無言只入靜,拈詩有句獨求淸。迢迢天外去雲影,籟籟風中落葉聲。忽見閑窗虚白上,東山月出半江明。」
と使う。 ・紅:赤い。くれないである。夕焼け空が反映しているさまをいう。
※柔緑篙添梅子雨:浅緑色のふなざおが、梅雨(つゆ)の雨に映えている。 ・柔緑:浅緑色の。もえぎ色の。若草色の。 ・篙:〔かう;gao1○〕さお。ふなざお。船をおし進めるさお。 ・添:付け加える。 ・梅子雨:梅雨(つゆ)の雨。 ・梅子:ウメの実。
※淡黄衫耐藕糸風:薄黄色のひとえの上着は、ハスの繊維のような細く微かな風(や雨)に、もちこたえている。 ・淡黄:薄黄色の。 ・衫:ひとえの上着。 ・耐:もちこたえる。たえる。…に強い。 ・藕:〔ぐう(ごう);ou3●〕レンコン。 ・藕糸:ハスの繊維から採る糸。 ・藕糸風:ハスの繊維のような細く微かな風(や雨)の意。
※家在五湖東。家は太湖の東の方にある。*明・呉兗の『漁歌子』に「千頃蒹葭一釣翁。家居南浦小橋東。桃花水,鯉魚風。短笛橫吹細雨中。」とある。 ・五湖:ここでは、太湖を指す。五つの湖。太湖または洞庭湖を五つに区切った呼び名。また、付近の湖を含めて呼んだもの。中唐・劉長卿の『餞別王十一南遊』に「望君煙水闊,揮手涙霑巾。飛鳥沒何處,青山空向人。長江一帆遠,落日五湖春。」
とあり、唐・無名氏の『漁父 和張志和詞』に「雪色髭鬚一老翁,時開短棹拔長空。微有雨,正無風。宜在五湖煙水中。」
とある。
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2017.7.12 7.13 |
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