Huanying xinshang Ding Fengzhang de wangye

                            


餞別王十一南遊 
                                                  

     唐・劉長卿

望君煙水闊,
揮手涙霑巾。
飛鳥沒何處,
青山空向人。
長江一帆遠,
落日五湖春。
誰見汀洲上,
相思愁白蘋。



                      
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王十一の南遊に餞別す 

君を望めば  煙水 (ひろ)く,
手を(ふる)へば  涙 (きん)(ぬら)す。
飛鳥( ひ てう)  何處(いづこ)にか (ぼっ)し,
青山(せいざん)  (むな)しく 人に向かふ。
長江  一帆(いっぱん) 遠く,
落日(らくじつ)  五湖(ごこ)の春。
(たれ)か見ん  汀洲(ていしう)(ほとり)
相思して  白蘋(はくひん)(うれ)ふるを。

         ****************





◎ 私感註釈

※劉長卿:盛唐の詩人。709年?(景龍年間?)〜780年?(建中年間?)。字は文房。河間(現・河北省)の人。進士に合格して官吏となるも下獄、左遷された。ために、詩には失意の情感や離乱を詠うものが多い。五言詩に優れていることから「五言(の)長城」と称された。

※餞別王十一南遊:王十一さんが南方へ旅をするので、酒宴を開いて送別した。 *この詩、対句部分の読み下しが難しい。(国語(=日本語)でも、対句にして読み下すという作業に苦しむ。表現内容重視のため、あまり対句としては、こなれていないのではないか…?)。梁朝・柳ツの『江南曲』「
汀洲白蘋落日江南。洞庭有歸客,瀟湘逢故人。故人何不返,春花復應晩。不道新知樂,只言行路遠。」に基づく。 ・餞別:旅立つ人を酒宴をして送別する。 ・王十一:王(わう;Wang2)家の十一番目の男子。「十一」は、排行。(大家族制の)十一番目の男子。十一男。 ・南遊:南方へ旅すること。

※望君煙水闊:あなた(=王十一)をのぞみ見たが、霧や靄(もや)のたちこめた水面がひろがっており。 ・君:ここでは、王十一を指す。 ・煙水:霧や靄(もや)のたちこめた水面。 ・闊:〔くゎつ;kuo4●〕ひろい。心持ちが寛(ひろ)くて大らか。

※揮手涙霑巾:手を振れば、涙が巾(=ハンカチ)をぬらした。 ・揮手:手を振る。手を(前後に)振る。 ・霑:〔zhan1〕ぬらす。また、ぬれる。湿る。 ・巾:ハンカチ。てぬぐい。また、ふきん。ここは、前者の意。

※飛鳥没何処:空高く飛び行く鳥(であり、飛び立つ「あなたの姿」でもあるの)が、どこかに消えてしまい。 ・飛鳥:空高く飛ぶ鳥。旅立つものの姿でもある。 ・没:〔ぼつ;
mo4●(この「没」をmo4(動詞:没する)と読むか、mei2(副詞…ない)と読むかで、趣が異なる。ここは、前者の意。)〕沈む。消滅する。隠れる。 ・没何処:どこかに消えてしまった。作者が凝視していたことが分かる表現。

※青山空向人:草木が青々と茂った山が、いたずらに人に向かって(思いが募って)いく。 ・青山:草木が青々と茂った山。 ・空向人:いたずらに人に対している意。意味もなく人に思いが募っていく意。

※長江一帆遠:長い川を、一隻の船が遠ざかっていき。 ・長江:(普通名詞句の)長い川。また、日本等で揚子江と呼ぶ大河。(「揚子江」は、下流域地方での呼称)。青海省のチベット高原を水源地として華中地域を流れ、東シナ海へと注ぐ全長6300キロに及ぶ中国最長の河。「青山」との対なので、恐らく前者の意で使うか。 ・一帆:一隻の船。

※落日五湖春:沈みゆく太陽に、太湖は春めいている。「長江一帆遠」と「落日五湖春」とは対句なので、それに配慮して訳した。それ故、「遠」の対になる「春」も、同様の格として扱った。 ・落日:夕日(ゆうひ)。=落暉、斜陽、殘陽、夕陽。「落-」、「斜-」はあわれさを、殘-は凄まじさを表す。「夕-」は中性。なお、平仄上、「落日」は●●(○●)のところで使い、落暉、斜陽、殘陽、夕陽は○○(●○)のところで使う。 ・五湖:太湖を及びその周辺の湖。太湖。洞庭湖。また、五つの湖の意で、太湖、陽湖、洞庭湖、巣湖、洪沢湖の五湖。また、春秋時代、隠棲して太湖の春に小舟を浮かべた范蠡を指し、「隠棲」を言うか。春秋時代の越の功臣である范蠡の故事とは、越王勾践に仕え、呉王夫差を討って会稽の恥を雪(すす)がせ、自分の果たすべき事をした後、隠棲をするとして湖に舟を浮かべて過ごした。(実際は、その後、貨殖の中心地・山東の陶へ行き、陶朱公と自称して巨万の富を築いた。)『史記・貨殖列傳』范蠡の條には「范蠡既雪會稽之恥,乃喟然而歎曰:『計然之策七,越用其五而得意。既已施於國,吾欲用之家。』乃乘扁舟浮於江湖,(變名易姓,適齊爲鴟夷子皮,之陶爲朱公。朱公以爲陶天下之中,諸侯四通,貨物所交易也。)」とされ、江湖に舟を浮かべたのは勾践の目を欺くためのもので『史記・越王句踐世家』「范蠡遂去,自齊遺大夫種書曰:「蜚鳥盡,良弓藏;狡兔死,走狗烹。越王爲人長頸鳥喙,可與共患難,不可與共樂。子何不去?」種見書,稱病不朝。」を実践したもの。狡兔である呉が滅んだ後、走狗として烹(に)られるのは范蠡自身であり、かつての伍子胥の二の舞になることを避けた。『史記・貨殖列傳』の古註には「句踐滅呉,反至五湖,范蠡辭於王曰:『君王勉之,臣不復入國矣。』遂乘輕舟,以浮於五湖,莫知其所終極。」という部分に合致している。この詩は隠棲の意を借りて作った。  ・五湖:太湖のこと。また、太湖附近の五つの湖。洞庭湖。薛瑩の『秋日湖上』に「落日五湖遊,烟波處處。浮沈千古事,誰與問東流。」とある。また、中唐・薛瑩の『秋日湖上』に「
落日五湖遊,烟波處處愁。浮沈千古事,誰與問東流。」とあり、唐・無名氏の『漁父 和張志和詞』に「雪色髭鬚一老翁,時開短棹拔長空。微有雨,正無風。宜在五湖煙水中。」 とある。

※誰見汀洲上:(「誰見汀洲上,相思愁白蘋」で)一体だれが、渚(なぎさ)で(、(あなたを)思って白い花をつけた浮き草を(ぼんやりと見て)憂えていようとは、)誰が見抜いていようか(だれも見抜いてはいない)。 ・誰-:…とは、一体だれが…うか(だれも…しない)。 ・汀洲:〔ていしう;ting1zhou1○○〕中州(なかす)。渚(なぎさ)。北宋・寇準の『江南春』で「杳杳煙波隔千里,白蘋香散東風起。日落汀洲一望時,柔情不斷如春水。」とする。 
・上:ほとり。金・完顏亮の『呉山』「萬里車書盡混同,江南豈有別疆封。提兵百萬西湖,立馬呉山第一峰。」や盛唐・岑參の『與高適薛據同登慈恩寺浮圖』「塔勢如湧出,孤高聳天宮。登臨出世界,磴道盤虚空。突兀壓~州,崢エ如鬼工。四角礙白日,七層摩蒼穹。下窺指高鳥,俯聽聞驚風。連山若波濤,奔走似朝東。松夾馳道,宮觀何玲瓏。秋色從西來,蒼然滿關中。五陵北原,萬古濛濛。淨理了可悟,勝因夙所宗。誓將挂冠去,覺道資無窮。」や中唐・白居易の『送春』「三月三十日,春歸日復暮。惆悵問春風,明朝應不住。送春曲江,拳拳東西顧。但見撲水花,紛紛不知數。人生似行客,兩足無停歩。日日進前程,前程幾多路。兵刃與水火,盡可違之去。唯有老到來,人間無避處。感時良爲已,獨倚池南樹。今日送春心,心如別親故。」や中唐・張籍の『征婦怨』「九月匈奴殺邊將,漢軍全沒遼水。萬里無人收白骨,家家城下招魂葬。婦人依倚子與夫,同居貧賤心亦舒。夫死戰場子在腹,妾身雖存如晝燭。」や元・楊維驍フ『西湖竹枝歌』「蘇小門前花滿株,蘇公堤女當壚。南官北使須到此,江南西湖天下無。」がある。現代でも張寒暉の『松花江上』「我的家在東北松花江,那裡有森林煤鑛,還有那滿山遍野的大豆高粱。我的家在東北松花江,那裡有我的同胞,還有衰老的爹娘。」がある。

※相思愁白蘋:(「誰見汀洲上,相思愁白蘋」で)(一体だれが、渚(なぎさ)で、)(あなたを)思って白い花をつけた浮き草を(ぼんやりと見て)憂えていようとは(、誰が見抜いていようか(だれも見抜いてはいない))。 ・相思:思っている。思い遣る。「相」は、動作が対象に及んでくる時に使う。「…てくる」「…ていく」の意。「相互に」の意味はここではない。白居易の『勸酒』「昨與美人對尊酒,朱顏如花腰似柳。今與美人傾一杯,秋風颯颯頭上來。年光似水向東去,兩鬢不禁白日催。東鄰起樓高百尺,題照日光
。」 李白に『把酒問月』「天有月來幾時,我今停杯一問之。人攀明月不可得,月行卻與人。皎如飛鏡臨丹闕,拷喧ナ盡C輝發。但見宵從海上來,寧知曉向雲陝刀B白兔搗藥秋復春,娥孤棲與誰鄰。今人不見古時月,今月曾經照古人。古人今人若流水,共看明月皆如此。唯願當歌對酒時,月光長照金樽裏。」や、陶潜の『飮酒二十首』其一「衰榮無定在,彼此更共之。邵生瓜田中,寧似東陵時。寒暑有代謝,人道毎如茲。達人解其會,逝將不復疑。忽與一觴酒,日夕歡。」 、陶淵明の『雜詩十二首』其七の「日月不肯遲,四時催迫。寒風拂枯條,落葉掩長陌。弱質與運頽,玄鬢早已白。素標插人頭,前途漸就窄。家爲逆旅舍,我如當去客。去去欲何之,南山有舊宅。」や張説の『蜀道後期』「客心爭日月,來往預期程。秋風不,先至洛陽城。」杜甫の『州歌十絶句』其五に「西一萬家,江北江南春冬花。背飛鶴子遺瓊蕊,趁鳧雛入蒋牙。」とある。李U『柳枝詞』「風情漸老見春羞,到處消魂感舊遊。多謝長條似,強垂煙穗拂人頭。」 、范仲淹の『蘇幕遮』「碧雲天,黄葉地,秋色連波,波上寒煙翠。山映斜陽天接水,芳草無情,更在斜陽外。   黯ク魂,追旅思,夜夜除非,好夢留人睡。明月樓高休獨倚,酒入愁腸,化作思涙。」 前出・韋莊の『浣溪沙』「夜夜思更漏殘 など、下図のように一方の動作がもう一方の対象に及んでいく時に使われる。
B
もっとも、李白の『古風』「龍虎相啖食,兵戈逮狂秦」、「遠別離」の「九疑聯綿相似,重瞳孤墳竟何是。」や『長相思』「相思,在長安」や王維の「入鳥不相亂,見獸相親。」などは、下図のような相互の働きがある。
B
これらとは別に言葉のリズムを整える働きのために使うことも詩では重要な要素の一。 ・愁:憂える。思い悩む。悲しむ。心の浮かぬこと。心配する。 ・白蘋:〔はくひん;bai2pin2(bo2ping2)●○〕浮き草。白い花をつけている。デラシーネ。蘋≒萍。晩唐・温庭『夢江南』其二「斜暉脈脈水悠悠。腸斷白蘋。」とある。前出・寇準の『江南春』で「杳杳煙波隔千里,白蘋香散東風起。日落汀洲一望時,柔情不斷如春水。」とする。

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◎ 構成について

韻式は、「AAAA」。韻脚は「巾人春蘋」で、平水韻。この作品の平仄は、次の通り。

◎○○●●,
○●●○○。(韻)
○●●○●,
○○◎●○。(韻)
○○●◎●,
●●●○○。(韻)
○●○○●,
○○○●○。(韻)
2013.6.10
     6.11
     6.12
     6.13
     6.14完
2021.8.14補




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