一九三〇年二月 |
漫天皆白,
雪裏行軍情更迫。
頭上高山,
風捲紅旗過大關。
此行何去?
贛江風雪迷漫處。
命令昨頒,
十萬工農下吉安。
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減字 木蘭花 広昌 路上
漫天 皆 白く,
雪裏 の行軍情 更 に迫る。
頭上 の高山 ,
風は紅旗 を捲 きて大關 を過 ぐ。
此 の行 何 こに去 くや?
贛江 の風雪 迷漫 せる處。
命令昨 頒 たれ,
十萬の工農 吉安 に下る。
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私感註釈
※減字木蘭花:詞牌の一。『偸聲木蘭花』の句を減らしてできた。詞牌。双調。四十四字。換韻。韻式は「aaBB ccDD」(毛沢東のこの作品は「aaBB ccBB」か)。詳しくは「構成について」を参照。
※広昌路上:(吉安市の攻撃の際に)広昌に立ち寄った時の作。 ・広昌:江西省の南豊県の南、汝水の上流の西北岸にある町の名。南昌の南200キロメートルのところで、武夷山の江西省側(西側)ににある。 ・一九三〇年二月:1930年2月に紅軍が広昌を通って進軍して吉安を攻撃した時の作。農村の革命根拠地を拡大していき、勢力の伸長を図り、やがて都市攻撃(この詞では吉安攻撃)に方針を移した、その時の詞。
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※漫天皆白:空一面がみな白く。 ・漫天:〔まんてん;man4tian1●○〕空を覆う。空いっぱいの。
※雪裏行軍情更迫:雪中行軍の情勢は、一層急迫してくる。 ・雪裏行軍:雪中行軍。 ・情:情況。情勢。 ・迫:せまる。急迫する。
※頭上高山:頭上の高山(を見上げれば)。
※風捲紅旗過大関:風が赤旗を巻き上げて、大きなせきを通過していく。 ・風捲紅旗:風が赤旗を巻き上げる意。 ・大関:おおきなせき。
※此行何去:この行軍は、どこに行くのか。(それは…)。 ・此行:この行軍の意。 ・何去:どこに行く(のか)の意。 ・去:(現代語では)行く。
※贛江風雪迷漫処:贛江(かんこう)の風や雪が天地に立ちこめてぼうっとしているところ(であって)。 ・贛江:〔かんかう;Gan4jiang1●○〕贛水。江西省最大の川で、江西省の南から北流れして鄱陽湖に注ぎ込む。長江右岸の支流の一。 ・迷漫:〔mi2man4○●〕=瀰漫・弥漫〔びまん;mi2man4○●〕(煙や霧などが)充満する。(水が)一面に広がる。(煙や霧などが)天地に立ちこめてぼうっとしている。
※命令昨頒:命令は、昨日出した(その命令とは)。 ・昨:きのう。 ・頒:〔はん;ban1○〕公布する。法令などを行きわたらせる。(上から下へ物を)分かち与える。しく。わかつ。
※十万工農下吉安:十万人の労働者・農民(出身の兵士)が吉安に下れ(という内容だ)。 ・工農:労働者と農民。 ・吉安:江西省中部にある都市名。南昌の南南西200キロメートルのところにある。井崗山(=井岡山)の北東100キロメートルのところ。
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◎ 構成について:
双調。四十四字。換韻。韻式は「aaBB ccDD」(毛沢東のこの作品は「aaBB ccBB」か)。脚韻は、「白迫 山關 去處 頒安」で、詞韻第十七部入声、第十部平声、第四部去声、第十部平声。
○●(仄韻),
●○○●●(仄韻)。
●○○,(平韻)
●○○●○(平韻)。
○●(仄韻),
●○○●●(仄韻)。
●○○,(平韻)
●○○●○(平韻)。
2013.8.26
8.27
8.28
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