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懶起吟

                        北宋・邵雍

半記不記夢覺後,
似愁無愁情倦時。
擁衾側臥未忺起,
簾外落花繚亂飛。






    **********************


      懶起(らん き )の吟 

(なか)()し ()せざるは  夢 ()めし(のち)
(うれ)ひに似て (うれ)ひ無きは  情 ()みし時。
(きん)(よう)し 側臥(そくぐゎ)して  (いま)()くるを(のぞ)まず,
簾外(れんぐゎい) 落花(らくくゎ)  繚亂(れうらん)として飛ぶ。

            ******************



◎ 私感訳註:

※邵雍:〔せうよう(現代仮名遣い:しょうよう);Shao4Yong1〕北宋の学者。大中祥符四年(1011年)〜煕寧十年(1077年)。字(あざな)は堯夫。謚(おくりな)は康節。安楽・伊川翁と号し、後に百源先生と称せらる。范陽(現・河北省の涿県)の人。幼時に、父に随って共城(現・河南省の輝県:『中国歴史地図集』第六冊 宋・遼・金時期(中国地図出版社)12−13ページ「京畿路 京西南路 京西北路」にある。)に遷り、後に洛陽に住む。招かれたが官に就かず、耕作して自活し、人に教えることを生業とした。自分の居を安楽窩と称して、そこで多くの詩を作った。易学、天文にくわしく、その学派は百源学派と呼ばれる。

※懶起吟:ものうげに起きた時に口ずさんだうた。 ・懶:〔らん;lan3●〕ものうい。たいぎである。疲れて横になる。無精(である)。おっくうがり(である)。いやいやながら…する。不承不承…する。おこたる。なまける。 ・起:おきる。 ・吟:詩歌を口ずさむ。歌う。吟じる。

※半記不記夢覚後:なかば覚えているようで(あるが)、覚えていないのは、夢ら覚(さ)めたあと(の夢であって)。 ・記:覚えている。 ・半記不記:なかば覚えているようで、覚えていない、意。 ・夢覚後:夢ら覚(さ)めたあと。『莊子・齊物論』に「夢飲酒者,旦而哭泣。夢哭泣者,旦而田獵。方其夢也,不知其夢也。夢之中又占其夢焉,
覺而後其夢。且有大覺而後知此其大夢也。」とある。 ・覚:めざめる。さめる。

※似愁無愁情倦時:かなしそうでいて、かなしくないのは、心が倦(う)み疲れている時である。 ・似:…のようである。 ・愁:〔しう;chou2○〕悲しむ。憂える。 ・似愁無愁:かなしそうでいてかなしくない、意。 ・情:こころ。 ・倦:〔けん;juan4●〕疲れる。くたびれる。飽きる。うむ。

※擁衾側臥未忺起:かけぶとんを抱(だ)き抱(かか)えて横を向いて寝て、まだ起きることをのぞんでいない。 ・擁:〔よう;yong1○〕抱(だ)く。抱(かか)える。 ・衾:〔きん;qin1○〕かけぶとん。しとね。 ・側臥:〔そくぐゎ;ce4wo4●●〕横を向いて寝る。=横臥。 ・忺:〔けん、こん;xian1○〕のぞむ。このむ。ねがう。欲す。≒欲。また、うれしい。気持ちがよい。ここは、前者の意。

※簾外落花繚乱飛:(窓の)カーテンの外側では、散ってゆく花が、もつれみだれて飛んでいる。 ・簾外:(窓の)カーテンの外。窓の外の意。窓外。 ・繚乱:〔れうらん;liao2luan4○●〕もつれみだれる。散りみだれる。咲きみだれるさま。=撩乱。





◎ 構成について

韻式は「AA」。韻脚は「時飛」で、平水韻上平四支(時)・五微(飛)。次の平仄はこの作品のもの。

●●●●●●●,
●○○○○●○。(韻)
○○●●●○●,
○●●○○●○。(韻)
2014.2.19
     2.20
     2.21
     2.22
     2.23完
     3. 2補
                               
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