韋応物与村老対飲　詩詞世界　碇豊長の詩詞：漢詩　Wei Yingwu

與村老對飮
	唐・韋應物

鬢眉雪色猶嗜酒，
言辭淳朴古人風。
鄕村年少生離亂，
見話先朝如夢中。

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與村老對飮

鬢眉びんび　雪色せつしょく　　猶なほ酒を嗜たしなみ，
言辭げんじ　淳朴じゅんぼく　　古人の風ふう。
鄕村がうそんの年少は　　離亂りらんに生まれ，
先朝せんてうを話かたるを見て　　夢中むちゅうの如し。

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◎　私感註釈

※韋應物：中唐の詩人。７３７年（開元二十五年）～８０４年頃（貞元年間）。謝霊運、陶淵明の伝統を継ぐ自然派詩人。京兆万年（現・西安）の人。

※與村老對飲：村の老人と向かい合って酒を飲む。　・與：…と。介詞（前置詞）。　・村老：村の老人。田舎の年寄り。村役の長。　・對飲：向かい合って酒を飲む。対酌。

※鬢眉雪色猶嗜酒：びんの毛やまゆは、（真っ白な）雪の色になっており、その上に酒をたしなみ。　・鬢眉：〔びんび；bin4mei2●○〕びんの毛やまゆ。　・猶：その上に。やはり。また、まだ。ちょうど…のようだ。なお…ごとし。ここは、前者の意。　・嗜酒：酒をたしなむ。酒を味わう。　・嗜：〔し；shi4●〕常に好む。たしなむ。

※言辭淳朴古人風：ことばづかいは、かざりけがなくて、素直であり、昔の人の趣（おもむき）がある。　・言辭：ことば。ことばづかい。　・淳朴：〔じゅんぼく；chun2pu3○●〕かざりけがなくて、素直。質素で人情に厚い。＝淳樸。　・古人風：昔の人の趣（おもむき）。　・風：すがた。おもむき。

※鄕村年少生離亂：村里の若者は、戦乱（安史の乱）の最中に生まれた（ので（））。　・鄕村：むらざと。いなかの村。さと。　・年少：若者。　・離亂：戦争や自然災害等の混乱のために、家族が離れ離れになること。名詞。歴史的に見ると７５０～７６０年代年代の安史の乱（７５５年～７６３年）や吐蕃の入寇を指すことになる。中唐・李益の『喜見外弟又言別』に「十年離亂後，長大一相逢。問姓驚初見，稱名憶舊容。別來滄海事，語罷暮天鐘。明日巴陵道，秋山又幾重。」とある。

※見話先朝如夢中：（若者達は、安史の乱以前のことは分からないため）先帝の朝政の話すところを聞いては、まるで夢の中のできごとのよう（に感じていたようだった）。　・見話：人々の話すところによると。人の話すのに出逢った。いうならく。また、動詞の前に置いて、受身を表す。　・先朝：以前の王朝。また、先帝の朝廷。ここは、前者の意。　・如夢中：夢の中のようだ。

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◎　構成について

韻式は、「AA」。韻脚は「風中」で、平水韻上平一東。この作品の平仄は、次の通り。

●○●●○●●，
○○○●●○○。（韻）
○○○●○○●，
●●○○○●○。（韻）