和李秀才邊庭四時怨 (其四 冬) |
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唐・廬弼(廬汝弼) |
朔風吹雪透刀瘢,
飮馬長城窟更寒。
半夜火來知有敵,
一時齊保賀蘭山。
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李秀才の『邊庭四時怨』に和す
朔風 雪を吹きて刀瘢 に透 り,
馬を飲 へば 長城の窟 更に寒し。
半夜 火 來 りて 敵 有るを知り,
一時 齊 しく保 つ賀蘭山 。
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◎ 私感註釈
※盧汝弼:盧弼(ろ ひつ)は、中国・唐の詩人。『唐詩選』では盧弼とし、『全唐詩』では盧汝弼とする。盧汝弼は、字は子諧。 范陽(現・河北省涿県)の人、或いは蒲州(現・山西省永済)の人。盧綸の子孫。唐・景福年間(892年〜893年)年間に進士に及第し、祠部員外郎、知制誥となり、昭宗に従って洛陽に移る。後に、李克用(856年〜908年)を頼り、太原節度副使となった。
※和李秀才辺庭四時怨:李秀才が作った『辺庭四時怨』詩(辺境の四季のものがなしさの詩)に韻を合わせて詩を作る。この詩は其の第四である冬の詩。秋の詩は「八月霜飛柳半黄,蓬根吹斷雁南翔。隴頭流水關山月,泣上龍堆望故ク。」。 ・和:(他の詩に)韻を合わせて詩を作る。和韻。また、答えて詩を作る。「和す」とは、作詩の際、同一の韻部の中の韻字を使った詩作をいう。全く同一の文字を同一配列で使うことを特に次韻といい、同一の韻字を自由な配列で使うことを用韻といい、同一の韻部の中の文字を使うことを広く和韻という。 ・李秀才:李という姓の科挙(官吏登用試験)に応じた人物。李という姓の読書人階層の人。 ・秀才:読書人(=学問を積み、科挙を受けて官になった人、士大夫のこであり、また、学者、知識人階級のこと。読書を好む人のことではない。)また、科挙(官吏登用試験)に応じた人物のこと。本来の意は、前漢・後漢から南北朝時代にかけて、地方が朝廷に人材を推薦した科目の一つ(=茂才)。隋代唐初の科挙試験のなかにはこの科目があり、(後、廃止されるが、明代で復活し、清朝まで続く制度の)合格者や有資格者。 ・辺庭四時怨:李秀才が作った詩の題。 ・辺庭:辺疆。辺境。国境地帯。 ・四時:四季。 ・怨:うらめしくおもう。詩題末に『……怨』と附ける。王之煥の『涼州詞』に「黄河遠上白雲間,一片孤城萬仞山。羌笛何須怨楊柳,春風不度玉門關。」がある。
※朔風吹雪透刀瘢:北風が雪を舞い上げて吹いて、(寒さが)刀傷の跡に浸(し)み通って来て。 ・朔風:〔さくふう;shuo4feng1●○〕北風。 ・透:〔とう;tou4●〕浸(し)み通る。通す。突き抜ける。 ・刀瘢:〔たうはん;dao1ban1○○〕刀傷の跡。
※飲馬長城窟更寒:長城の側で馬に水を飲ませれば、一層、寒くなる。 *楽府題の『飲馬長城窟行』から「飲馬長城窟」を使う。王翰に『飮馬長城窟行』(『古長城吟』)「長安少年無遠圖,一生惟羨執金吾。麒麟前殿拜天子,走馬西撃長城胡。胡沙獵獵吹人面,漢虜相逢不相見。遙聞撃鼓動地來,傳道單于夜猶戰。此時顧恩寧顧身,爲君一行摧萬人。壯士揮戈回白日,單于濺血染朱輪。歸來飲馬長城窟,長城道傍多白骨。問之耆老何代人,云事秦王築城卒。黄昏塞北無人煙,鬼哭啾啾聲沸天。無罪見誅功不賞,孤魂流落此城邊。當昔秦王按劍起,諸侯膝行不敢視。富國強兵二十年,築怨興徭九千里。秦王築城何太愚,天實亡秦非北胡。一朝禍起蕭墻内,渭水咸陽不復キ。」がある。 ・飲馬:〔いんば;yin4ma3●●〕馬に水かう。「飲」は、「水かう、(家畜に)水を飲ませる」意では〔yin4〕。通常の「(人が酒などを)のむ」意では〔yin3〕。 ・長城窟:長城の傍らにある泉水が湧き出る穴。 ・窟:〔くつ;ku1●〕ここでは、泉が湧き出る穴。泉窟。また、ほらあな。巣窟。人や物の集まる所。ここは、前者の意。 ・更:一層。その上。さらに。
※半夜火來知有敵:夜半に烽火(のろしび)が伝わってきて、敵が来ているのが分かり。 ・半夜:夜半。 ・火:ここでは烽火(のろしび)を謂う。
※一時齊保賀蘭山:一度に、賀蘭山の守備に一斉に就いた。 ・一時:一時(ひととき)に。いちどに。いちじに。 ・齊:ひとしく。一斉に。 ・保:保持する。 ・賀蘭山:〔がらんさん;He4lan2shan1●○○〕中国の北西部、現・寧夏回族自治区にある山。当時、異民族の漢土侵攻の根拠地があると思われていたところ。後世、南宋・岳飛の『滿江紅』に「怒髮衝冠,憑闌處、瀟瀟雨歇。抬望眼、仰天長嘯,壯懷激烈。三十功名塵與土,八千里路雲和月。莫等閨A白了少年頭,空悲切。 康耻,猶未雪。臣子憾,何時滅。駕長車踏破,賀蘭山缺。壯志饑餐胡虜肉,笑談渇飮匈奴血。待從頭、收拾舊山河,朝天闕。」がある。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「瘢寒山」で、平水韻上平十四寒(瘢寒)、十五刪(山)。この作品の平仄は、次の通り。
●○○●●○○,(韻)
●●○○●●○。(韻)
●●●○○●●,
●○○●●○○。(韻)
2012.3.10 3.11(大震災忌) |
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