鳥鳴澗
	唐・王維

人 ��(しづ)かにして　　桂花(けいくゎ) 落ち，
夜 靜かにして　　春山(しゅんざん) 空(むな)し。
月 出(い)でて　　山鳥(さんてう)を驚かし，
時に鳴く　　春澗(しゅんかん)の中(うち)。

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◎　私感註釈

※王維：盛唐の詩人。７０１年（長安元年）？〜７６１年（上元二年）。字は摩詰。太原祁県（現・山西省祁県東南）の人。進士となり、右拾遺…尚書右丞等を歴任。晩年は仏教に傾倒した。

※鳥鳴澗：鳥が鳴く谷。　・鳴：（獣や鳥が）なく。　・澗：〔かん；jian4●〕たに。たにみず。谷川。

※人閑桂花落：人々は（夜も更けたので）ひっそりと静まりかえり、（その中で）木犀（モクセイ）の花が（静かに）散り。　・人閑：人々は（夜も更けて、山間の谷川沿いの僅かな住居なので）ひっそりと静まりかえり。　・�閨F俗字は「間」〔かん等；jian1等 ○等〕字とするが、「閑」〔かん；xian2○〕に通じる。「人�闌j花落」は、この句だけ見ると「人間桂花落」のようにも訓めるが、この句は「夜静春山空」との対句なので、「人閑桂花落」と読むのが妥当。ここは、後者の意。＝閑〔かん；xian2○〕。　・桂花：木犀（モクセイ）（の花）。伝説で、月の中にあるという木。通常は、秋に花が咲く。この詩では「春山」「春澗」との語が出てきており、その中での「桂花落」とは、春に（花が咲いて）花が散った、ということなので、春咲きの木犀（モクセイ）ということになるが…。

※夜静春山空：夜が更けて（人が寝）静まって、（周囲の）春の山は、ひっそりとさびしい。　・夜静：夜が更けて（人が寝）静まる意。なお、「夜静」は現代語でも、「夜静更深」や「夜深人静」とよく使う句。　・空：ひっそりとした。さびしい。また、うつろ。むなしい。ここは、前者の意。「山空」山に人気（ひとけ）が無い。中唐・韋應物は『秋夜寄丘二十二員外』で「懷君屬秋夜，散歩詠涼天。山空松子落，幽人應未眠。」と使う。なお、王維の『鹿柴』では「空山不見人，但聞人語響。返景入深林，復照青苔上。」とあるが、「山空」と「空山」とはどちらも○○だが、句の構成が異なる。「山空松子落」と「空山不見人」では、それぞれが句中の対になっており、

山空松子落：	山空　松子落	：山は 空しく　⇔　松子は 落ちる	実・虚＋実・虚
空山不見人：	空山　　不見人	：空しい 山　⇔　見えない 人	虚・実＋虚・実

というように、句中の前半と後半の構成を揃えるための配慮。

※月出驚山鳥：月が昇ってきて、山鳥を驚かして。　・驚：驚かす。SVO構文（S：〔月出〕 ＋ V：〔驚〕 ＋ O：〔山鳥〕）なので他動詞として訓むべきところ。

※時鳴春澗中：（驚かされた山鳥が）時おり、春の谷間で鳴いている。　・時：時折。時たま。


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◎　構成について

韻式は、「AA」。韻脚は「空中」で、平水韻上平一東。この作品の平仄は、次の通り。

○○●○●，
●●○○○。（韻）
●●○○●，
○○○●○。（韻）

２０１２．８．　６（８．７：滝美術館） 　　　　　８．　８ 　　　　　８．１０

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