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洛陽客舍逢祖詠留宴 | |
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唐・蔡希寂 |
綿綿鐘漏洛陽城,
客舍貧居絶送迎。
逢君貰酒因成醉,
醉後焉知世上情。
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洛陽の客舍にて祖詠 に逢ひ 留宴す
綿綿たる鐘漏 洛陽 城 ,
客舍 貧居 送迎を斷 つ。
君に逢 ひて 酒を貰 りて因 って醉 ひを成さん,
醉後 焉 んぞ知らん 世上の情を。
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◎ 私感註釈
※蔡希寂:唐の詩人。字は季深。潤州の丹陽(現・江蘇省曲阿の辺)の人。開元中に進士に及第する。緱氏の主簿をへて、渭南尉となる。天寶七年(748年)に、官は洛陽尉となる。草書や隷書にたくみであり、詩をよくした。
※洛陽客舎逢祖詠留宴:洛陽の宿舎で祖詠と出逢ったので、ひきとめて宴をした。 *『唐詩選』では「綿綿漏鼓洛陽城,客舍平居絶送迎。逢君買酒因成醉,醉後焉知世上情。」とする。詩意は同じだが、まろやかになっている。 ・洛陽:〔らくやう;Luo4yang2●○〕(副)都。唐代、東都として繁栄した副都。現・河南省。 ・客舎:旅館。宿舎。唐・王維の『送元二使安西』に「渭城朝雨浥輕塵,客舎靑靑柳色新。勸君更盡一杯酒,西出陽關無故人。」があり、後世、明・李夢陽の『送周判官』に「明燈綠酒五花裘,客舎新秋螢火流。問君不飮眞何事,明日出城風葉愁。」
とある。 ・逢:(偶然に)であう。あう。 ・祖詠:唐代の詩人。嗣聖十六年(699年)~天寶五年頃(746年頃)。洛陽(現・河南省に属する)の人。開元十二年(724年)に進士に及第するが、官職は得ることができないで、汝水(現・河南省一帯)の畔の別荘に引きこもって、農耕生活を送る。代表作に:『終南望餘雪』「終南陰嶺秀,積雪浮雲端。林表明霽色,城中增暮寒。」
がある。 ・留宴:ひき留めてうたげをする。
※綿綿鐘漏洛陽城:長々と続く時を知らせる鐘(が響く)洛陽の街(で)。 ・綿綿:〔めんめん;mian2mian2○○〕長々と続いて絶えないさま。事細かなさま。安静なさま。かすかなさま。東晉・陶潛の『始作鎮軍參軍經曲阿作』に「弱齡寄事外,委懷在琴書。被褐欣自得,屡空常晏如。時來苟宜會,宛轡憩通衢。投策命晨旅,暫與園田疎。眇眇孤舟遊,綿綿歸思紆。我行豈不遙,登降千里餘。目倦川塗異,心念山澤居。望雲慚高鳥,臨水愧遊魚。眞想初在襟,誰謂形迹拘。聊且憑化遷,終反班生廬。」とあり、中唐・白居易の『長恨歌』に「含情凝睇謝君王,一別音容兩渺茫。昭陽殿裡恩愛絶,蓬莱宮中日月長。回頭下望人寰處,不見長安見塵霧。唯將舊物表深情,鈿合金釵寄將去。釵留一股合一扇,釵擘黄金合分鈿。但敎心似金鈿堅,天上人間會相見。臨別殷勤重寄詞,詞中有誓兩心知。七月七日長生殿,夜半無人私語時。在天願作比翼鳥,在地願爲連理枝。天長地久有時盡,此恨綿綿無絶期。」
とある。 ・鐘漏:〔しょうろう;zhong1lou4○●〕時を知らせるかねと水とけい。また、水時計。 ・-城:…都市。中国は城塞都市。「洛陽城」は、洛陽の街。初唐・劉希夷(劉廷芝)の『白頭吟(代悲白頭翁)』「洛陽城東桃李花,飛來飛去落誰家。洛陽女兒惜顏色,行逢落花長歎息。今年花落顏色改,明年花開復誰在。已見松柏摧爲薪,更聞桑田變成海。古人無復洛城東,今人還對落花風。年年歳歳花相似,歳歳年年人不同。寄言全盛紅顏子,應憐半死白頭翁。此翁白頭眞可憐,伊昔紅顏美少年。公子王孫芳樹下,清歌妙舞落花前。光祿池臺開錦繍,將軍樓閣畫神仙。一朝臥病無人識,三春行樂在誰邊。宛轉蛾眉能幾時,須臾鶴髮亂如絲。但看古來歌舞地,惟有黄昏鳥雀悲。」
とある。
※客舎貧居絶送迎:宿舎での貧しい生活をしており、人との交流が絶えて無くなっていた。 ・貧居:貧しいすまい。 ・絶送迎:人との付きあいが絶えて無くなったことを謂う。中唐・白居易の『晩秋閒居』に「地僻門深少送迎,披衣閒坐養幽情。秋庭不掃攜藤杖,閒蹋梧桐黄葉行。」とあり、東晉・陶潛『飮酒二十首』其五に「結廬在人境,而無車馬喧。問君何能爾,心遠地自偏。采菊東籬下,悠然見南山。山氣日夕佳,飛鳥相與還。此中有眞意,欲辨已忘言。」
とある。
※逢君貰酒因成酔:(嬉しいことに、今日、久々に)あなたに出逢えたので、酒を掛け買いして、酔っぱらおう(ではないか)。 ・君:ここでは、前出・祖詠のことになる。。 ・貰酒:〔せいしゅ;shi4jiu3●●〕酒を掛け買いする。 ・貰:〔せい;shi4●〕借りる。おきのる(おぎのる)。掛け買いをする。 ・因:(…の)ために。(…に)よって。介詞。 ・成酔:よっぱらう。酔いをなす。
※酔後焉知世上情:酔った後は、世間のことなど知ったことではない。 ・焉知:〔yan1zhi1〕どうして知ろうか。いずくんぞ知らんや。 ・焉:どうして。いずくんぞ。疑問や反語を表す。 ・世上:世の中。世間。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「城迎情」で、平水韻下平八庚。この作品の平仄は、次の通り。
○○●●●○○,(韻)
●●○○●●○。(韻)
○○●●○○●,
●●○○●●○。(韻)
2012.8.24 8.25 8.26完 2013.5.10補 |
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