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岳陽晩景 | |
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唐 張均 |
晩景寒鴉集,
秋風旅雁歸。
水光浮日出,
霞彩映江飛。
洲白蘆花吐,
園紅柿葉稀。
長沙卑溼地,
九月未成衣。
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岳陽 の晩景
晩景 寒鴉 集 ひ,
秋風 旅雁 歸る。
水光 日を浮かべて出 で,
霞彩 江 に映 えて飛ぶ。
洲 は白くして蘆花 は吐 き,
園 は紅 にして柿葉 稀 なり。
長沙 は卑溼 の地,
九月未 だ衣 を成 さず。
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◎ 私感註釈
※張均:盛唐の政治家。玄宗に仕えた。生没年不詳。玄宗時代の名宰相・張説の長子で、太子通事舍人から郎中、中書舍人にまで昇進した。しかし、安史の乱の際、安禄山に仕え宰相に取り立てられたため、配流された。
※岳陽晩景:岳陽(=岳州)の夕方の景色(日の光)。 *なお、父の張説も五律を得意とした。 ・岳陽:洞庭湖の東北端の湖に臨む都市名。また、岳陽を含む岳州を指そう。なお、岳陽は、父の張説が晩年に左遷されたところでもある。(張籍の作として『岳州晩景』「晩景寒鴉集,秋聲旅雁歸。水光浮日去,霞彩映江飛。洲白蘆花吐,園紅柿葉稀。長沙卑濕地,九月未成衣。」がある。)『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)57-58ページ「江南西道」にあり、『中国歴史地図集』第六冊 宋・遼・金時期(中国地図出版社)27-28ページ「荊湖南路 荊湖北路」に岳州とある。現・湖南省の北部にある。瀟湘の川の流れが洞庭湖へ注ぎ込み、その洞庭湖から長江へ連なる水路の口に該る戦略上の重要都市。市街の北西、岳陽城の西城門上の楼閣・岳陽楼で有名。宋の戴復古の『柳梢靑』『岳陽樓』「袖劍飛吟」がある。北宋の范仲淹の『岳陽樓記』
で、とりわけ有名になる。唐・杜甫『登岳陽樓』に「昔聞洞庭水,今上岳陽樓。呉楚東南坼,乾坤日夜浮。親朋無一字,老病有孤舟。戎馬關山北,憑軒涕泗流。」
とあり、清・王士禛の『樊圻畫』に「蘆荻無花秋水長,淡雲微雨似瀟湘。雁聲搖落孤舟遠,何處靑山是岳陽。」
とある。 ・晩景:夕方の日の光。夕方の景色。
※晩景寒鴉集:夕方の日の光に冬の烏(からす)が集まり。 ・寒鴉:冬の烏。盛唐・李白の『三五七言』に「秋風清,秋月明。落葉聚還散,寒鴉棲復驚。相思相見知何日,此時此夜難爲情。」とある。
※秋風旅雁帰:(それとは別に)秋風に(乗って)、カリが遠くへ渡って行く。 ・旅雁:遠くへ飛んで行くかり。渡りのかり。
※水光浮日出:水面に(夕)日の輝きを浮かべて流れ去り。 *「水光浮日去」ともする。 ・水光:水面の輝き。 ・浮日出:(水面に夕)日(の輝き)を浮かべて(流れ)行く。 「浮日去」:(水面に夕)日の輝きを浮かべて流れ去る意。
※霞彩映江飛:(夕)焼けの美しいいろどりが川面に映(は)えて、散っていく。 ・霞彩:朝焼け、夕焼けの美しいいろどり。 ・映江飛:夕焼けの美しいいろどりが川面に映(は)えて、散っていく。 「飛」:散る。空を翔(かけ)る。
※洲白芦花吐:川の中州(なかす)は白く、アシの花はひらいている。 ・洲:川の中州(なかす)。州(す)。 ・芦花:アシの花。 ・吐:ひらく。「吐花」。また、(口や隙間から)出る。出す。 「吐穂」穂が出る。穂を出す。
※園紅柿葉稀:にわは赤く(なって)、柿の(木の)葉は、まばらである。 ・園:にわ。その。 ・稀:まばらである。まれである。
※長沙卑湿地:長沙は、土地が低くて湿気が多い。 ・長沙:現・湖南省省都。岳陽の真南100キロメートルのところ。前出・『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)57-58ページ「江南西道」では、岳陽の真南100キロメートルのところにある。岳州の南隣の潭州の中の潭州(=長沙)。 ・卑湿:土地が低くて湿気が多い。また、へりくだる。心が卑しく下劣。ここは、前者の意。 「卑」:低い所。さわ。湿地。
※九月未成衣:(晩秋の陰暦)九月となっても、まだ(冬支度の)衣更えが(できてい)ない。 ・九月未成衣:晩秋の陰暦九月となっても、まだ冬支度の衣更えができていない。『詩經・國風・豳風』に「七月流火,九月授衣。一之日觱發,二之日栗烈;無衣無褐,何以卒歳?三之日于耜,四之日舉趾。同我婦子,饁彼南畝,田畯至喜。 七月流火,九月授衣。春日載陽,有鳴倉庚。女執懿筐,遵彼微行,爰求柔桑。春日遲遲,采蘩祁祁。女心傷悲:殆及公子同歸?…」とある。 ・九月:陰暦九月。晩秋で、現在の十月後半~か。
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◎ 構成について
韻式は、「AAAA」。韻脚は「歸飛稀衣」で、平水韻上平五微。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●,
○○●●○。(韻)
●○○●●,
○●●○○。(韻)
○●○○●,
○○●●○。(韻)
○○○●●,
●●●○○。(韻)
2016.12.18 12.19 12.20 12.23 |
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