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樊圻畫 | |
清・王士禛 |
蘆荻無花秋水長,
淡雲微雨似瀟湘。
雁聲搖落孤舟遠,
何處靑山是岳陽。
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樊圻の畫
蘆荻 花 無く 秋水 長く,
淡雲 微雨 瀟湘に似たり。
雁聲 搖落して 孤舟 遠く,
何處の靑山か 是れ 岳陽なる。
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◎ 私感註釈
※王士禛:清代の詩人。字は貽上、また子眞。号して漁洋。士禎と名を賜る。1634年(明・崇禎七年)~1711年(洪煕五十年)。
※樊圻畫:樊圻(はんき)の絵。 ・樊圻:〔はんき;Fan2Qi2〕十七世紀の清代の画家。金陵(現・南京)の人。
※蘆荻無花秋水長:アシやオギは(まだ)花を著けておらず、秋の清く澄みきった川の流れは長く(続いており)。 ・蘆荻:〔ろてき;lu2di2○●〕アシとオギ。共に水辺の植物。 ・秋水:秋の清く澄みきった水。
※淡雲微雨似瀟湘:淡い雲に小雨(のさまは、南方)の瀟湘(しょうしょう)(一帯の雰囲気)に似ている。 ・微雨:小雨。細雨。 ・瀟湘:〔せうしゃう;Xiao1xiang2○○〕(六朝までの詩では)湘水のこと。「清らかな湘江」の意。また、瀟水(瀟江)と湘水(湘江)のこと。湖南省を流れる川の名で、瀟水と湘水は零陵で合流後、瀟湘ともいう。唐・張若虚の『春江花月夜』に「春江潮水連海平,海上明月共潮生。灩灩隨波千萬里,何處春江無月明。江流宛轉遶芳甸,月照花林皆似霰。空裏流霜不覺飛,汀上白沙看不見。江天一色無纖塵,皎皎空中孤月輪。江畔何人初見月,江月何年初照人。人生代代無窮已,江月年年祗相似。不知江月待何人,但見長江送流水。白雲一片去悠悠,青楓浦上不勝愁。誰家今夜扁舟子,何處相思明月樓。可憐樓上月裴回,應照離人妝鏡臺。玉戸簾中卷不去,擣衣砧上拂還來。此時相望不相聞,願逐月華流照君。鴻雁長飛光不度,魚龍潛躍水成文。昨夜閒潭夢落花,可憐春半不還家。江水流春去欲盡,江潭落月復西斜。斜月沈沈藏海霧,碣石瀟湘無限路。不知乘月幾人歸,落月搖情滿江樹。」とある。
※雁聲搖落孤舟遠:ガンの啼き声は、(空から)風で揺れ落ちてくるかのようであり、ぽつんとひとつだけの小舟が遠くにある。 ・雁聲:ガンの啼き声。ガンは、夜景や便り(雁信:蘇武の項参照 )を表現するのに用いられる。南唐後主・李煜の『喜遷鶯』に「曉月墜,宿雲微,無語枕頻欹。夢回芳草思依依,天遠雁聲稀。 啼鶯散,餘花亂,寂寞畫堂深院。片紅休掃儘從伊,留待舞人歸。」や南宋・陸游の『望江道中』に「吾道非邪來曠野,江濤如此去何之。起隨烏鵲初翻後,宿及牛羊欲下時。風力漸添帆力健,艣聲常雜雁聲悲。晩來又入淮南路,紅樹靑山合有詩。」
とある。 ・搖落:〔えうらく;yao2luo4◎●〕(秋の季節になって草木の葉が)凋(しぼ)んで、風で揺れおちること。草木の葉がひらひらと散る。物が揺れ落ちる。唐・蘇頲の『汾上驚秋』に「北風吹白雲,萬里渡河汾。心緒逢搖落,秋聲不可聞。」
とあり、唐・陳子昂の『感遇三十八首』其二に「蘭若生春夏,芊蔚何靑靑。幽獨空林色,朱蕤冒紫莖。遲遲白日晩,嫋嫋秋風生。歳華盡搖落,芳意竟何成。」
とある。 ・孤舟:ぽつんとひとつだけの小舟。詩詞では孤独な人生の旅路にある者の表現にも使う。唐・柳宗元の『江雪』に「千山鳥飛絶,萬徑人蹤滅。孤舟簑笠翁,獨釣寒江雪。」
とあり、南唐後主・李煜の『望江梅』に「閑夢遠,南國正芳春。船上管絃江面淥,滿城飛絮輥輕塵。忙殺看花人。 閑夢遠,南國正淸秋。千里江山寒色暮,蘆花深處泊孤舟。笛在月明樓。」
とある。この李煜詞の後闋とイメージは似ている。
※何處靑山是岳陽:どのあたりの青山が岳陽なのだろうか。 ・何處:どのあたり。どこ。 ・是:…は…である。これ。主語と述語の間にあって述語の前に附き、述語を明示する働きがある。〔A是B:AはBである〕。「『何處靑山』が『岳陽』であるのか」。 ・岳陽:洞庭湖の東北端の湖に臨む都市名。『中国歴史地図集』第六冊 宋・遼・金時期(中国地図出版社)27-28ページ「荊湖南路 荊湖北路」に岳州とある。現・湖南省の北部にある。なお、前出・瀟湘の川の流れは洞庭湖へ注ぎ込む。その洞庭湖から長江へ連なる水路の口に該る戦略上の重要都市。市街の北西、岳陽城の西城門上の楼閣・岳陽楼で有名。本サイトでは、宋の戴復古の『柳梢靑』『岳陽樓』「袖劍飛吟」がある。北宋の范仲淹の『岳陽樓記』
で、とりわけ有名になる。唐・杜甫『登岳陽樓』に「昔聞洞庭水,今上岳陽樓。呉楚東南坼,乾坤日夜浮。親朋無一字,老病有孤舟。戎馬關山北,憑軒涕泗流。」
とある。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「長湘陽」で、平水韻下平七陽。この作品の平仄は、次の通り。
○●○○○●○,(韻)
●○○●●○○。(韻)
●○○●○○●,
○●○○●●○。(韻)
2010.10.1 10.2 |
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