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別輞川別業 | |
盛唐・王維 |
依遲動車馬,
惆悵出松蘿。
忍別青山去,
其如綠水何。
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輞川 の別業 に別る
依遲 として 車馬を動かし,
惆悵 として松蘿 を出 づ。
忍んで青山 に別れて去るも,
其 れ綠水 を如何 んせん。
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◎ 私感註釈
※王維:盛唐の詩人。701年(長安元年)?~761年(上元二年)。字は摩詰。太原祁県(現・山西省祁県東南)の人。進士となり、右拾遺…尚書右丞等を歴任。晩年は仏教に傾倒した。
※別輞川別業:輞川の別荘と別れる。 *進み行く馬車の窓から見える光景を詠った。 ・輞川:〔まうせん;Wang3chuan1●○〕長安の東南50キロメートルに位置する藍田県にある川の名。その川の畔に、王維は別荘を建てた。別荘の地でもある。藍田は、『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社))40-41ページ「京畿道 関内道」「長安附近」にある。作者の『輞川集』の序に「余別業在輞川山谷,其遊止有孟城坳、華子岡、文杏館、斤竹嶺、鹿柴、木蘭柴、茱萸沜、宮槐陌、臨湖亭、南垞、欹湖、柳浪、欒家瀨、金屑泉、白石灘、北垞、竹里館、辛夷塢、漆園、椒園等。」とある。 ・別業:〔べつげふ;bie2ye4●●〕別荘。
※依遅動車馬:ゆるゆると馬車が動き出して。 ・依遅:〔いち;yi1chi2○○〕ぐずぐずする。ゆるゆるする。
※惆悵出松蘿:うれえ悲しみ(ながら)、松の木に絡まる蔦(つた)(の生い茂った所=輞川)から出た。 ・惆悵:〔ちうちゃう;chou2chang4○●〕うれえ悲しむさま。うらみなげくさま。失意のさま。曹丕の『寡婦』に「霜露紛兮交下,木葉落兮淒淒。候鴈叫兮雲中,歸燕翩兮徘徊。妾心感兮惆悵,白日忽兮西頽。」とあり、中唐・白居易の『靈巖寺』に「館娃宮畔千年寺,水闊雲多客到稀。聞説春來更惆悵,百花深處一僧歸。」
とある。用例は婉約詞に多い。 ・松蘿:〔しょうら;song1luo2○○〕松の木に絡まる一種の蔦(つた)。サルオガセ。
※忍別青山去:青い山とは、耐えしのんで別れて去ってゆけるが。(見なれた青い山は、馬車の動きとともに視野から容易に消え去ったが)。 ・忍:我慢して耐える。しのぶ。 ・青山:青々と木が茂った山。「青山綠水」「綠水青山」。
※其如緑水何:緑の川の流れは、(川は道に沿って流れ続けているので(/道は川に沿って続いているので、)川と別れようにも)どうしようもない。 ・其:それ。その。語調を整える。事物を指す。 ・如…何:…をどうしようか。…をどうしたらよいのか。どうしようもない。「〔目的語〕を如何(いかん)せん。」。「其如…何」「其〔如(目的語)何〕」秦末漢初・項羽の『垓下歌』に「力拔山兮氣蓋世,時不利兮騅不逝。騅不逝兮可奈何,虞兮虞兮奈若何。」とあり、『論語』子罕第九之五に「子畏於匡。曰:「文王既沒,文不在茲乎?天之將喪斯文也,後死者,不得與於斯文也。天之未喪斯文也,匡人其如予何?」とある。「奈+O+何」、「如+O+何」(O:目的語)。(〔目的語〕を如何(いかん)せん。)。 ・緑水:樹木の映じた水。深い水。澄んだ水の川。緑色の川。
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◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「蘿何」で、平水韻下平五歌。この作品の平仄は、次の通り。
○○●○●,
○●●○○。(韻)
●●○○●,
○○●●○。(韻)
2019.11.26 11.27 |
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