袁宏道竹枝詞　詩詞世界　碇豊長の詩詞：漢詩

　　
　dingfengchang　dingfengzhang　shicishijie

　　　竹枝詞
　　　　　　　　　　明　袁宏道

船上女兒畫春蛾，
一葉飄隨水上波。
左手牽姝右牽板，
雲冠不動靑峨峨。

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船上の女兒　　春蛾(しゅんが)を畫(ゑが)き，
一葉(いちえふ)　飄(へう)として　　水上の波に隨(したが)ふ。
左手に　姝(しゅ)を牽(ひ)きて　右に板(ばん)を牽(ひ)けども，
雲冠(うんくゎん)　動かずして　　靑(せい) 峨峨(がが)たり。

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◎私感註釈

※袁宏道：明代の文学者。隆慶二年（１５６８年）～万暦三十八年（１６１０年）。字は中郎、また、無学。号は石公、六休。公安（現・湖北省内）の人。万暦二十年の進士。兄の袁宗道、弟の袁中道とともに公安派の三袁と呼ばれた。思想家・李贄（し；Zhi4）の影響を受け、性霊説を倡え、形式主義の復古派に対した。

※竹枝詞：この作品は、舟の上の美少女姉妹を描くか。詩は表面上は風光を描くが、実際は美少女姉妹を描いている。

※船上女児画春蛾：舟の上で、少女が蛾（が）の触角のような形の細長く美しい眉を描いた（眉で）。　・画：〔くゎく；hua4●〕えがく。動詞。また、「劃」〔くゎく；hua2●〕（櫂(かい)で舟を）こぐ。なお、櫓（ろ）で船をこぐのは「搖」。『搖啊搖』に「搖啊搖，搖到外婆橋，外婆叫我好寶寶，我叫外婆洋泡泡，外婆罵我小赤佬！」とある。　・蛾：まゆげ。蛾（が）の触角のような形の、細長く美しい眉。

※一葉飄随水上波：（舟は、）一枚の葉（のように）水面の波に弄（もてあそ）ばれるがままである。　・一葉：一枚の葉。（波に弄（もてあそ）ばれる）船のさま。また、少女の眉の形容。ここは、両者の意。　・飄：ひるがえるさま。風にただよう。さまよいただよう。　・随：したがう。

※左手牽姝右牽板：左手では美少女（の手）を引き、右手では舵を取っている（ものの）。　・牽：（人や家畜等を）引く。引っ張る。　・姝：〔しゅ；shu1○〕美しい女性。美人。また、美しい。みめよい。ここは、前者の意。　・板：かじの板。

※雲冠不動青峨峨：帽子のように上部を覆っている雲は動くことが無く、（山々は）青々として険しい。また、少女のふさふさした髷（まげ）は動くことが無く、（眉は）黒々として細長く美しい。　・雲冠：帽子のように上部を覆っている雲。また、婦人のふさふさした髷（まげ）。ここは、両者のかけことば。なお、「峨冠」で「高いかんむり」の意がある。前者の意に、晉・陸機の『擬靑靑陵上柏』に「冉冉高陵蘋，習習隨風翰。人生當幾時，譬彼濁水瀾。戚戚多滯念，置酒宴所歡。方駕振飛轡，遠遊入長安。名都一何綺，城闕郁盤桓。飛饋纓虹帶，層臺冒雲冠。高門羅北闕，甲第椒與蘭。侠客控絶景，都人驂玉軒。遨遊放情願，慷慨爲誰嘆。」とある。　・青峨峨：青々として険しい（山）。また、黒々とした細長く美しい（眉）。ここでは、両者の意で使われる。「峨峨」は：けわしい。山の高く険しいさま。なお、「峨」〔e2；が○〕は「蛾」〔e2；が○〕に通じる。「青娥」〔せいが；qing1e2○○〕は：眉の別称であり、転じて、美貌の少女。「青峨峨」は「青娥　娥たり」とも？

◎　構成について
　　
　平韻一韻到底。　韻式は「AAA」。韻脚は「蛾波峨」で、平水韻下平五歌。次の詞調はこの作品のもの。

　　　○●●○●○○，（韻）
　　　●●○○●●○。（韻）
　　　●●○○●○●，
　　　○○●●○○○。（韻）
　