![]() |
![]() |
|
![]() |
||
蚊 | ||
山崎闇齋 |
||
妙理時時細思想, 都來天物皆堪賞。 夏蚊耳畔喚醒予, 能使此身識痛痒。 |
![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
妙理 時時 細 かに思想 すれば,
都來 天物 皆 賞するに堪 へたり。
夏蚊 耳畔 に予 を喚 び醒 まして,
能 く此 の身をして痛痒 を識 らしむ。
*****************
◎ 私感註釈
※山崎闇斎:江戸前期の儒者・神道学者。元和四年(1618年)~天和二年(1682年)。名は嘉。字は敬義。通称、嘉右衛門。別号を垂加。京都の人。浪人の子に生まれ、初め京都妙心寺に入り禅僧となった。後、土佐吸江寺に移り、谷時中に朱子学を学んだ。後、神道に傾倒し、神儒の総合として唯一神道を提倡。それをもとに歴史の考察を試み、後世の復古運動に影響を与えた。
※蚊:か。蚊を詠った詩に、日本・鎌倉時代・虎關師錬の『蚊』「齊嘴頭,尖頴錐。殷殷雷聲繞閤閨。自一羅穀隔透過,鐵牛背上爛如泥。」や清・黄中堅の『蚊』「斗室何來豹脚蚊,殷如雷鼓聚如雲。無多一點英雄血,閑到衰年忍付君。」
がある。
※妙理時時細思想:すぐれて奥深い道理をいつも細(こま)かく(次のように)思う。(それは)。 ・妙理:すぐれて奥深い道理。玄妙な理。不思議な真理。 ・時時:常に。いつも。 ・細:こまかに。 ・思想:思う。
※都來天物皆堪賞:言ってみれば、天の与えたあらゆる物は、みな、味わい楽しむに足る(ということだ)。 ・都来:言ってみれば。言うなれば。すべて。完全に。全部(で)。みんな(で)。いつも。≒“算来”;“提起来”、“説起来”。北宋・范仲淹の『御街行』に「紛紛墜葉飄香砌。夜寂靜,寒聲碎。真珠簾卷玉樓空,天淡銀河垂地。年年今夜,月華如練,長是人千里。 愁腸已斷無由醉。酒未到,先成涙。殘燈明滅枕頭敧,諳盡孤眠滋味。都來此事,眉間心上,無計相迴避。」とあり、明・湯顯祖の『牡丹亭・写真』》に「春歸恁寒悄,都來幾日意懶心喬?」とある。 ・天物:〔てんぶつ;tian1wu4○●〕天の生じた物。天の与えたあらゆる物。 ・堪賞:味わい楽しむに足る。
※夏蚊耳畔喚醒予:夏の蚊が、耳の側(そば)でわたしを呼び覚まして。 ・耳畔:耳の側(そば)。 ・喚醒:呼び覚ます。呼び起こす。 ・予:〔よ;yu2○〕われ。自分。自称の代名詞。=余〔よ;yu2○〕。
※能使此身識痛痒:よくこの身をして痛みと痒みの見分けが付くようにさせ(てくれる)。 ・能使:…を…させることができる。よく…しむ。盛唐・賈至の『西亭春望』に「日長風暖柳青青,北雁歸飛入窅冥。岳陽城上聞吹笛,能使春心滿洞庭。」とあり、後世、清末・秋瑾は『秋風曲』で「秋風起兮百草黄,秋風之性勁且剛,能使羣花皆縮首,助他秋菊傲秋霜。秋菊枝枝本黄種,重樓疊瓣風雲湧。秋月如鏡照江明,一派淸波敢搖動?昨夜風風雨雨秋,秋霜秋露盡含愁。靑靑有葉畏搖落,胡鳥悲鳴繞樹頭。自是秋來最蕭瑟,漢塞唐關秋思發。塞外秋高馬正肥,將軍怒索黄金甲。金甲披來戰胡狗,胡奴百萬囘頭走。將軍大笑呼漢兒,痛飮黄龍自由酒。」
と使う。 ・能:よく。 ・使:…させる。使役表現。 ・識:見分けが付く。見分ける。 ・痛痒:いたみとかゆみ。
***********
◎ 構成について
韻式は、「aaa」。韻脚は「想賞痒」で、平水韻上声二十二養。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●◎●,(韻)
○○○●○○●。(韻)
○○●●●○●,
○●●○●●●。(韻)
平成31.2.18 2.19 2.20 |
![]() トップ |