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秋日東村偶題 | ||
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五柳靑靑醉裏春,
那能長作折腰人。
情知縱酒非生事,
昨日罷官今日貧。
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秋日東村偶題
五柳靑靑 たり醉裏 の春,
那 ぞ能 く長 へに折腰 の人と作 らん。
情 に知る縱酒 は 生事に非ずと,
昨日 官を罷 めて 今日 貧す。
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◎ 私感註釈
※李攀龍:明の文学者。正徳九年(1514年)~隆慶四年(1570年)。字は于鱗。号して滄溟。歴城(現・山東省済南)の人。嘉靖二十三年(1544年)の進士。官は河南按察使に至った。王世貞とともに「後七子」(こうしちし)の領袖となり、盟主になった。古文辞を重んじて「文は秦漢、詩は盛唐」を主張した。著書に『滄溟集』等があり、日本には『唐詩選』の選者とされている。
※秋日東村偶題:秋の日に、東村で即興で作った詩。 *陶淵明に藉(か)りて、自分を詠う。 ・偶題:即興の詩。たまたま作る。「題」は、書き付ける意。
※五柳青青酔裏春:(隠棲をした五柳先生=陶淵明(陶潜))の家の前にあるのと同様な)五本の柳の木は、青々として、酔いの中に春を送った。 ・五柳:五柳先生のことで、陶淵明(陶潜)の自称。東晋末から南朝宋の文学者。自伝的作品の『五柳先生傳』「先生不知何許人,不詳姓字,宅邊有五柳樹,因以爲號焉。閑靜少言,不慕榮利。好讀書,不求甚解,毎有會意,欣然忘食。性嗜酒,而家貧不能恒得,親舊知其如此,或置酒招之,造飮必盡,期在必醉,既醉而退,曾不吝情。環堵蕭然,不蔽風日,短褐穿結,箪瓢屡空,晏如也。常著文章自娯,頗示己志,忘得失,以此自終。」に因る。 ・青青:青々としている。漢・古樂府の『長歌行』に「青青園中葵,朝露待日晞。陽春布德澤,萬物生光輝。常恐秋節至, 焜黄華葉衰。百川東到海,何時復西歸。少壯不努力,老大徒傷悲。」
とあり、『古詩十九首之二』「青青河畔草,鬱鬱園中柳。盈盈樓上女,皎皎當窗
。娥娥紅粉妝,纖纖出素手。昔爲倡家女,今爲蕩子婦。蕩子行不歸,空牀難獨守。」
とあり、北宋・曾鞏の『城南』に「雨過橫塘水滿堤,亂山高下路東西。一番桃李花開盡,惟有青青草色齊。」
とある。 ・酔裏:酔いの中に。
※那能長作折腰人:こしを曲げて、人に頭を下げる(宮仕えを)、永遠に続けることがどうしてできようか。 ・那能:どうして…しようか。どうして…できようか、とてもできない。反語の表現。≒安能、焉能、惡能。 ・那:〔な;na3●〕なんぞ。いかんぞ。いかん。なお、「那」は、疑問詞の「那」〔na3●〕の外に、「あの」「かの」といった遠称の指示詞もあり、現代語では両者を区別するために、疑問詞は特に“哪”〔na3●〕と表記し、遠称の指示詞は“那”〔na4●〕と表記する。ここは現代語では、“哪”〔na3●〕と表記されるところ。 ・長作:永遠に…となる。 ・長:永遠に。盛唐・李白の『江上吟』「木蘭之枻沙棠舟,玉簫金管坐兩頭。美酒尊中置千斛,載妓隨波任去留。仙人有待乘黄鶴,海客無心隨白鴎。屈平詞賦懸日月,楚王臺榭空山丘。興酣落筆搖五嶽,詩成笑傲凌滄洲。功名富貴若長在,漢水亦應西北流。」とある。 ・折腰:こしを曲げる。人に頭を下げる。 *陶淵明は、貧窮に迫られて、糧を得るために小役人に任官した。『晉書・列傳第六十四・隱逸・陶潛』では、「『吾不能爲五斗米折腰,拳拳事鄕里小人邪!』」として、官に在ること八十余日で、辞して田園に帰っていった。僅かの俸給のために、田舎の木っ端役人にぺこぺこすることは、我慢がなならなかったのだ。“鄕里小人”に仕えるぐらいならば、飢寒に苛まれている方がましだ、という次第である。やがて、「義熙二年,解印去縣,乃賦歸去來。其辭曰:」と『歸去來兮辭』
に続けている。その間の心情は、『歸園田居』
でも詠う。
※情知縦酒非生事:酒浸りは、生活上で不都合なことは、まことによく分かった。 ・情知:まことに知る。明らかに知る。本当に知る。東晋・陶淵明の『乞食』では「情」を「まことに」と読み、その意で使われる:「彈諧終日夕,觴至輒傾杯。情欣新知歡,言詠遂賦詩。感子漂母惠,愧我非韓才。銜戢知何謝,冥報以相貽。」。 ・縦酒:〔しょうしゅ;zong4jiu3●●〕酒を存分に飲む。 ・縦:〔しょう;zong4●〕任せる。放任する。勝手にさせておく。ほしいままにする。ほしいまま。 ・非:(後に名詞形をとって、)…ではない。また、よくない。まずい。非とする。責める。 ・生事:生活上の事。生きてゆくための事。また、生きている者に仕えること。生きている者に仕える礼。また、事を起こす。ここは、前者の意。
※昨日罷官今日貧:この前、免官となって、今は貧しく(なったので)。 ・罷官:〔はい(ひ)くゎん;ba4guan1●○〕官吏を免職する。免官する。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「春人貧」で、平水韻上平十一真。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●●○,(韻)
●○○●●○○。(韻)
○○●●○○●,
●●●○○●○。(韻)
2012.11.4 11.5 11.6 |
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