江戸の金使い・大阪の銀使いは有名です。商人はソロバンで勘定をします。もちろん武士も勘定奉行所はソロバンを使います。江戸時代のソロバンは五珠玉2個(少ないが1個品もあった様です)と一珠玉5個であり、十進法で+−×÷の四則演算をします。さらには平方根・立方根まで出した。ソロバンで五珠玉2個は中国が1斤=16両の16進法であった名残だそうです。まずは大阪の銀は秤量貨幣で1匁2分3厘と十進法で問題なくソロバンが出来ます。例えば年1割6分の利息を計算すると1匁2分3厘は1分9厘6毛8糸と簡単である。ただし金の分(ぶ)と区別する為銀は分(ふ・ふん)と呼んだ。しかし江戸の小判分金は四進法です「1両=4分=16朱」。これを十進法のソロバンでどうやって1両2分3朱の年1割6分の利息計算をどうしたかが問題です。因みの電卓では1分80文(相場1朱=250文として)と取りあえずなりました。そのやり方は1両2分3朱=27朱と朱単位に換算して16%=4.32朱=1分+0.32朱=1分+0.32×250文=1分80文であった。
この4進法のソロバンに付き、ソロバンメーカー・造幣局・日銀貨幣博物館・日本珠算連盟に問い合わせた。回答はソロバンメーカー・造幣局は判らない、日本珠算連盟は大阪の村上耕一先生から返事が来てソロバンは高価で持っている人は意外と少なかったなど良いお話が聞けました。日銀貨幣博物館が文単位に変換して算定した回答がきてヒントになりました。そこで江戸・明治初期の書簡・大福帳・家計簿を見ながら四進法計算のソロバンの方法を探った。
1、福沢諭吉の書簡
(明治3「1870」年2月20日九鬼隆義宛)
〔前略〕ご注文の『世界国尽』の製本ができましたので、200部を納めます。代金等のことは担当の係の者が管理することであって、直接に申し上げるのは昔からの習慣に反し、礼を失するようですが、無益の手数を省き、有害の間違いを防ぐため、わざと直接に勘定書をご覧に入れました。悪く思わないでお聞き入れ下さるようお願い申し上げます。〔後略〕
この書簡にも、次のような「三田藩宛福沢屋諭吉覚書」が同封されている。
覚金250両也
世界国尽 200部代 1部につき金1両1分 内金37両2分 定価1割半引残正味金212両2歩也この通りになりますので、代金は為替でお送り下さるようお願い申し上げます。以上。 2月20日 福沢屋諭吉 三田様御取次衆中様
この覚書の意味は定価が1部1両1分で200部だと250両ですが、大量買いで割引を15%します。
ここで1分=0.25両なので1両1分=1.25両と十進法表示が可能です。
割引額=200部×1.25両×0.15=37.5両=37両2分 (0.5両=2分より)
請求額=200部×1.25両×0.85=212.5両=212両2歩(歩は分の当て字)
なお金判単位の分は歩や切で表示された藩札がある。また贈答用語で100疋(ぴき)とは金1分のことである。
両分朱を十進法に揃える場合両(頭)を基準にするか?また朱(尾)を基準にするか?になります。一般にソロバンは頭から計算するので両を基準にすると思われますがどうでしょうか?また五珠玉2個を使った朱単位の16進法計算は掛算・割算九九が十進法であり使わなかったと思う。
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