******
一身能擘兩雕弧,
虜騎千重只似無。
偏坐金鞍調白羽,
紛紛射殺五單于。
少年行
一身 能(よ)く擘(ひ)く 兩雕弧(りゃうてうこ),
虜騎(りょき) 千重(せんちょう) 只(た)だ無きに 似たり。
偏(ひと)へに 金鞍に 坐して 白羽(はくう)を 調(ととの)へ,
紛紛として 五單于(ぜんう)を 射殺す。
*****************
◎ 私感註釈
※王維:盛唐の詩人。701年(長安元年)?~761年(上元二年)。字は摩詰。太原祁県(現・山西省祁県東南)の人。進士となり、右拾遺…尚書右丞等を歴任。晩年は仏教に傾倒した。
※少年行:いなせな若者の歌、の意。楽府題。王維には『少年行』「新豐美酒斗十千,咸陽遊侠多少年。相逢意氣爲君飮,繋馬高樓垂柳邊。」がある。唐の崔國輔『長樂少年行』「遺卻珊瑚鞭,白馬驕不行。章臺折楊柳,春日路傍情。」
や李白『少年行』「五陵年少金市東,銀鞍白馬度春風。落花踏盡遊何處,笑入胡姫酒肆中。」
、王昌齢『少年行』「走馬遠相尋,西樓下夕陰。結交期一劍,留意贈千金。高閣歌聲遠,重門柳色深。夜闌須盡飲,莫負百年心。」や沈彬の『結客少年場行』「重義輕生一劍知,白虹貫日報讎歸。片心惆悵清平世,酒市無人問布衣。」
や、宋の賀鑄『六州歌頭』「少年侠氣,交結五都雄。肝膽洞,毛髮聳。立談中,生死同,一諾千金重。推翹勇,矜豪縱,輕蓋擁,聯飛
, 斗城東。轟飮酒
,春色浮寒甕。吸海垂虹。閒呼鷹嗾犬,白羽摘雕弓,狡穴俄空。樂怱怱。」
等、極めて多い。
※一身能擘兩雕弧:一人で、よく二人張りの彫刻を施した立派な弓をひきしぼることができ。 ・一身:一人で。 ・能:…することができる。よく。副詞。 ・擘:〔はく;bo4●〕弓をひきしぼる。ひく。さく。わけさく。 ・兩雕弧:強弓。 ・兩:二人張り(の強い弓)。 ・雕弧:〔てうこ;diao1hu2○○〕彫刻を施した立派な弓。「雕」〔てう;diao1○〕を「彫」〔てう;diao1○〕ともする。同義で、ほる。える。えぐる。 ・弧:〔こ;hu2○〕木の弓。きゆみ。
※虜騎千重只似無:異民族の騎兵の幾重もの包囲も、無きに等しいものである。 ・虜騎:〔りょき;lyu3ji4●●〕異民族の軍隊。異民族の騎兵。 ・千重:〔せんちょう;qian1chong2○○〕幾重もの。 ・只似無:無いに等しい。
※偏坐金鞍調白羽:ひとえに黄金色に輝くりっぱなくらに跨り続けて、白く美しい矢をそろえており。 ・偏:〔へん;pian1○〕ひとえに。ひたすら。また、かたよって。副詞。 ・坐:すわる。 ・金鞍:黄金色に輝くりっぱなくら。騎乗する馬に対する一種の美称とも謂えるもので、「金鞍」といえば「玉勒」とこたえるところ。前出・李白の『少年行』では「五陵年少金市東,銀鞍白馬度春風。」と、詠う。 ・調:そろえる。ととのえる。 ・白羽:白い矢羽根。白羽の矢。美しく立派な矢。「黄金裝戰馬,白羽集神兵。」というふうになる。
※紛紛射殺五單于:次々と多くの単于を射殺した。 ・紛紛:〔ふんぷん;fen1fen1○○〕連続して、絶え間ないさま。続々と。次々と。どしどしと。混じり乱れるさま。また、入り乱れるさま。ごたつくさま。ここでは、前者の意。 ・射殺:射殺(いころ)す。 ・五:ここでは多数のことをいう。 ・單于:〔ぜんう;chan2yu2○○〕匈奴の王の尊称。漢代漢民族と対峙した匈奴の王。前出「虜騎」の指導者のことになる。
***********
◎ 構成について
韻式は「AAA」。韻脚は「弧無于」で、平水韻上平七虞。なお、「羽」は韻脚ではない(上声)。次の平仄はこの作品のもの。
●○○●●○○,(韻)
●●○○●●○。(韻)
○●○○◎●●,
○○●●●○○。(韻)
2005.12.17 |
![]() ![]() ![]() ************ ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
![]() メール |
![]() トップ |