・蚕食: かいこが桑の葉を食べるように次第に他国を侵略すること。
・鯨呑: 鯨が魚を一飲みにするように他国を飲み込んで併合すること。
・金蘭: 金のように堅く、蘭のように芳しい交わり。3・4句の「苛令・強権」とに少し矛盾する。
・膠漆: にかわとうるしのように極めて親密で離れにくいこと。
・鎚旆: 鎚が画かれている旧ソ連の旗。
・尊像: レーニン像。
・宝書: マルクス・レーニンなどが著わした書。
・平明: 公平で明らか。次句の「傀儡」に対する畳韻。
・禅譲: |
本来は帝王がその位を世襲せずに有徳者に譲ること。この場合の禅は仄韻で、禅も譲もゆずる意。 |
・当途: 枢要な地位にある人物、ここでは大統領を指す。
・傀儡: 本来首相は大統領の下位であるべきだが、現実にはその逆であることをいう。
・饉秋: 飢饉の歳。
・飛竜: ここではミサイルにあてた。
・望蜀: |
『隴を得て蜀を望む』 欲望にきりがないこと。ここでは世界中の国の反対を押し切り、ロシアがグルジアに『侵攻』したことをいう。これは恐らくは打算であろう。 |
※ この「侵攻」で60数年前の我国の敗戦時を思い出す。当時のソ連が『日ソ中立条約』を一方的に破棄して、当年8月15日後も北方四島へ進軍して、そのまま不法占拠を続けている。のみならず、北海道をソ連の管轄下にしたい野望を、当時の連合国軍最高司令官である『マッカーサー元帥閣下』が断固拒否したことは、若い人はご存じないかも知れない。もしも、北海道がソ連の支配下になっていれば、“現在の北海道はロシア領である” と誰が考えられようか。ゆえに、故元帥に閣下の称号を附したのは、一日本人として閣下への感謝の気持ちである。グルジアにこれをオーバーラップすれば、わたくしはグルジア国民の断腸の思いに惻隠の情を禁じえない。
<解説>
この詩はソ連が1991年に崩壊した後、二年くらい後に十句で完結した詩を作りました。その後、ロシア国内が飢饉に陥ったり、新たに油田が発見されたり、また最近では大統領の禅譲があり、最もロシアの行動に不信を懐いたのは、ロシア軍のグルジアへの侵攻で、直後に後半を賦しました。このことは我国とは無関係ではありません。60数年前より我国の固有領土である『北方四島』は 未だ不法占拠されたままです。
かつて南宋の愛国詩人『陸游』は亡くなるまで憂国の詩を賦しました。わたくしは『放翁』には作詩に於いては遙かに及びませんが、国を愁うことに於いては劣らない積りです。
漢詩を作る際には人それぞれの思いがありますが、わたくしにはこれが精一杯の我国を思う気持ちがこの七言排律となりました。五言では比較的に容易に出来ますが、七言は非常に難しく苦労しました。ゆえに11・12句は完全な対句には出来ませんでした。かろうじて流水対に準じる形に以ってきました。
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