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 これは岸本冑山先生の詩で、読みも岸本冑山先生のものです。
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詠大鹽中齋天滿義擧

天保年間旱殃遭
農夫抛耒土不膏
米價高騰無由問
無奈田疇掩蓬蒿

浪華城下飢餓苦
路傍不葬滿臭腐
日日死者超百人
飢鴉坐守窺朽樹

銅臭官吏好苞苴
不憂飢饉戀積儲
齊飽美肉蓄美妓
世無安石無何如

陽明學徒一縣尉
夙愍無辜常憤愾
即以家書換金粟
施與餐飯相撫慰



鹽氏爲人頗清廉
心歸太虚良知兼
將奉天命致天討
獨吐赤心檄文嚴

世人讀此空號泣
洗心洞裏門下集
不説呉廣與陳勝
卻奏上書説危急

草莽崛起叫救民
浪華城市掩戰塵
打毀猾吏狡賈邸
世人拊掌動心神

可哀義軍烏合衆
力竭忍視天夢夢
幕閣無策經濟空

窮民狂歌徒嘲諷
鹽氏伏竄四旬過
生靈欲盡如此何
無奈上書抛山裏
竟自絶命遺恨多



冗子聞此肺腑熱
戸限不覺屐齒折
震撼天下自有功
天滿義擧至今説





天保年間旱殃に遭い
農夫耒を抛ちて土膏ならず
米価高騰して問うに由なし
奈んともするなし田疇蓬蒿を掩うを

浪華城下飢餓に苦しみ
路傍、葬られず臭腐満つ
日日死する者百人を超え
飢鴉坐守して朽樹に窺う

銅臭の官吏苞苴を好み
飢饉を憂えず積儲恋う
斉しく美肉飽きては美妓を蓄え
世に安石無くては何如ともする無し

陽明学徒の一県尉
夙に無辜を愍れんでは常に憤愾す
即ちは家書を以って金粟に換え
餐飯を施与して相い撫慰す



塩氏人と為り頗る清廉
心を太虚に帰して良知兼ぬ
将に天命を奉じて天討を致し
独り赤心を吐きては檄文厳し

世人此れを読みては空しく号泣
洗心洞裏に門下集う
説かず呉広と陳勝
却って上書を奏して危急を説く

草莽崛起して救民を叫び
浪華城市戦塵を掩う
打ち毀す猾吏狡賈の邸
世人掌を拊って心神を動かす

哀れむべし義軍烏合衆
力竭きて忍び視る天の夢夢たるを
幕閣策無く経済空し
窮民狂歌して徒に嘲諷す

塩氏伏竄して四旬を過ぎ
生霊尽きんとす此れを如何
奈ともする無し、上書山裏に抛ちられ
竟に自ら絶命しては恨を遺すこと多し



冗子此れを聞いては肺腑熱し
戸限覚えず屐歯折り
天下を震撼させては自ら功有り
天満の義挙今に至るまで説かん

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【語句の説明】●安石 謝安 安石 ●耒 すき ●蓬蒿 よもぎ ●臭腐 くさって嫌なにおいをだす ●銅臭官吏 銭の臭いがする官吏 ●苞苴 賄 賂 ●積儲 積たくわえる 史記 貨殖 ●県尉 漢代以後に県毎に置かれた警察官 の長 与力に代わる漢代以後の中国の官名 ●無辜 人民 ●家書 家本 蔵書 (手紙)●金粟 穀物 ●施与餐飯 餐飯を相施し与える ●撫慰 いつくしみいたわる●太虚 天空 虚無深玄の理 即ち道 心を太虚に帰すれば則ち非常の事皆亦道なるを知る 故に妨げず 洗心洞箚記 ●良知 明の王陽明が孟子の良知説に本づいて良知とは心の虚霊明覚(心にわだかまりがなく霊妙であきらかにさとる)な内容 心の本体と見て百行の指針としたもの ●洗心洞 大塩中斎の私塾 ●呉広與陳勝 呉広と陳勝 秦末の農民の革命政権の首班 後に張楚を建国 ●草莽崛起 ●猾吏狡 賈 悪賢い官吏と商人 ●拊掌 手を打って喜ぶ様 ●動心神 こころを動かす 心 も神もこころ ●天夢夢 世の中が乱れた様 詩経 ●経済 経世済民 ●嘲諷 あざけりそしる ●伏竄 かくれる 姿をくらます 左伝 襄二一 義挙後大塩中斎は 事の結果を知る為四〇日間民家に隠れ潜んだが事のならざるを知り自決した ●生霊  人民 ●抛山裏 大塩中斎は飢饉救済を願う為江戸の幕府高官に上書を飛脚により奏したが、後難を恐れてか、箱根山中に捨てられた 戸限不覺屐歯折 喜びの余り小躍りして下駄の歯が折れたのも気が付かない 晉書 謝安傳 過戸限心喜甚不覺屐歯 之折

2010.2.27




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