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 これは岸本冑山先生の作品です。
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東日本大震災 地震行 其一 天殃篇


奥羽春浅雪未消
三陸海岸鮮魚饒
午餘風静波浪穏
漁夫投網舟順潮

忽驚大地起激震
眼前光景誰可信
崖崩地裂城市焼
倒壊家屋帰灰燼

震餘更恐驚濤来
萬畳如山石堤隤
水都萬戸沈蒼海
人呑奔流座視哀

返潮四顧市街惨
尽化瓦礫傷万感
忍見海上多溺屍
溺屍幾萬砕心胆

骨肉離散問安危
未無消息報道遅
相呼哀叫声摧裂
五内摧敗雙涙垂

殊哀少児失怙恃
未知阿母已溺死
空曳人裾何欲伝
傍人欲尋嗚咽耳

生者尚苦苛飢寒
雖逃鬼手多辛酸
渇無飲料飢無食
縦得仮寓心難安

如此災禍人泣哭
看目惨状空掩目
争応救援送資糧
人人唯願復興速

無奈政府尚糊塗
宰相無能甚凡愚
恋恋盗位面皮厚
暗澹国歩一嗟吁

冗子終日心不楽
七字書憤濁酒酌
詩成酔余為一歌
憂国慷慨有誰託






奥羽春浅く雪未だ消えず
三陸の海岸鮮魚饒し
午餘風静かに波浪穏やか
漁夫網を投じて 舟潮に順う

忽ち驚く大地激震起り
眼前の光景 誰か信ず可き
崖を崩し地を裂いて 城市を焼き
家屋を倒壊させては 灰燼に帰す

震餘更に恐る 驚濤来たり
萬畳山の如く石堤を隤す
水都の萬戸 蒼海に沈み
人は奔流に呑まれ座視哀し

潮返り四顧すれば市街惨たり
尽く瓦礫と化して万感傷む
忍くも見る海上溺屍多く
溺屍幾萬心胆を砕く

骨肉は離散して安危を問うも
未だ消息無く 報道遅し
相呼び哀叫すれば 声摧裂し
五内は摧敗して 雙涙垂る

殊に哀れむ 少児怙恃を失い
未だ知らず 阿母已に溺死するを
空しく人裾を曳いては 何をか伝えんと欲っするも
傍人尋んとしては 嗚咽するのみ

生者尚を苦しむ 飢寒に苛なまれ
鬼手を逃ると雖も 辛酸多し
渇しても飲料無く 飢えても食無し
縦え仮寓を得とも 心は安じ難し

此の如き災禍 人は泣哭し
目に惨状を看ては空く目を掩う
争って救援に応じては資糧を送り
人人唯願うは 復興の速きを

奈んともする無し 政府尚お糊塗たり
宰相無能にして甚だ凡愚
恋恋位を盗んでは 面皮厚く
暗澹たる国歩 一に嗟吁す

冗子終日 心楽まず
七字憤を書して濁酒酌まん
詩成て酔余 為に一歌すれば
国を憂い慷慨して誰有りてか託さん

                           *********
 

2011年7月3日




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