野水參差落漲痕, 疎林欹倒出霜根。 扁舟一棹歸何處, 家在江南黄葉村。 |
李世南の畫く所の『秋景』に書す
野水參差 として漲痕 落ち,
疎林欹倒 して霜根 を 出だす。
扁舟 一棹 何 れの處にか歸る,
家は 江南黄葉 の村に在り。
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◎ 私感訳註:
※蘇軾:北宋の詩人。北宋第一の文化人。政治家。字は子瞻。号は東坡。現・四川省眉山の人。景祐三年(1036年)〜建中靖國元年(1101年)。三蘇の一で、父:蘇洵の老蘇、弟:蘇轍の小蘇に対して、大蘇といわれる。
※書李世南所画『秋景』:李世南の描いた『秋景』に(詩を)書きつける。 ・書:書きつける。 ・李世南:北宋の画家。字は唐臣。安肅(現・河北省除水)の人で山水画にたくみだった。 ・所-:…するところ。動詞の前に附き、動詞を名詞化する。 ・『秋景』:李世南の描いた絵の(画)題。
※野水參差落漲痕:野中の流れの岸辺は、長短不ぞろいのすじとなって、水が減って、水が多かった(夏の)時の痕(あと)があり。 *「野水參差落漲痕」と「疎林欹倒出霜根」とは対句であり、(「疎林欹倒出霜根」と読みを合わせれば、)「野水參差落漲痕」は「野水 參差として 漲痕を落とし」となるが…。 ・野水:野中の流れ。 ・參差:〔しんし;cen1ci1○○〕長短不揃いのさま。『詩經』周南『關雎』に「關關雎鳩,在河之洲。窈窕淑女,君子好逑。 參差荇菜,左右流之。窈窕淑女,寤寐求之。求之不得,寤寐思服。悠哉悠哉,輾轉反側。 參差荇菜,左右采之。窈窕淑女,琴瑟友之。參差荇菜,左右芼之。窈窕淑女,鐘鼓樂之。」とある。 ・落:ひく。減る。 ・漲痕:〔ちゃうこん;zhang4hen2●○〕増水時、水が漲った時の痕(あと)かた。
※疎林欹倒出霜根:まばらに木が生えた林の木は、傾き倒れて、根には霜が降りている。 ・疎林:〔そりん;shu1lin2○○〕樹木のまばらな林。 ・欹倒:かたむきたおれたことを謂う。 ・欹:〔き;qi1○〕かたむく。そばだつ。 ・霜根:霜の降りた根を謂う。
※扁舟一棹歸何處:小舟が一こぎして、どこへ帰っていくのだろうか。 ・扁舟:〔へんしう;pian1zhou1○○〕小舟。 ・棹:〔たう;zhao4●〕(舟の)さお。かい(名詞)。また、さおさす。こぐ(動詞)。ここは、後者の意。 ・歸:本来の居場所(自宅・故郷・墓所)にもどる。 ・何處:どこ。
※家在江南黄葉村:家は、江南の黄葉した村に(あるのだろう)。 ・家在-:家は…にある。晩唐・韋莊の『送日本國僧敬龍歸』に「扶桑已在渺茫中,家在扶桑東更東。此去與師誰共到,一船明月一帆風。」とある。 ・江南:長江下流の南側の地方。
◎ 構成について
2011.12.23 12.24 12.25 12.26完 2014. 6. 6補 2015.11.11 |