欧陽修豊楽亭遊春　詩詞世界碇豊長の詩詞：漢詩 Ouyang Xiu

豐樂亭遊春
	北宋・歐陽脩

紅樹靑山日欲斜，
長郊草色綠無涯。
遊人不管春將老，
來往亭前踏落花。

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豐樂亭にて春を遊ぶ

紅樹(こうじゅ)　青山(せいざん)　　日(ひ) 斜めならんと欲(ほっ)し，
長郊(ちゃうかう)の草色(さうしょく)　　綠(みどり) 涯(はて) 無し。
遊人(いうじん)　管(くゎん)せず　　春(はる) 將(まさ)に老いんとするを，
亭前に來往(らいわう)して　　落花(らっくゎ)を踏(ふ)む。

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◎　私感註釈

※欧陽修：（歐陽脩）：北宋時代の政治家。詩人、散文作家。１００７年（景徳四年）～１０７２年（煕寧五年）。姓は欧陽（複姓）。字は永叔。号して醉翁、六一居士。謚は文忠。唐宋八大家の一。

※豊楽亭遊春：豊楽亭のあずまやで春を気儘に過ごす。花を賞でる人の姿は中唐・劉禹錫の『元和十一年自朗州召至京戲贈看花諸君子』「紫陌紅塵拂面來，無人不道看花回。玄都觀裏桃千樹，盡是劉郎去後栽。」がある。　・豊楽亭：欧陽修が滁州（現・安徽省滁県）の西南に築いたあずまやの名称。　・遊：気儘に出かける。

※紅樹青山日欲斜：（赤い）花の咲いている木や青々とした山に（も）日が傾いて暮れようとして。　・紅樹：（赤い）花の咲いている樹木。花木。　・青山：青々と草木が茂った山。　・日欲斜：太陽が傾いて暮れようとしている意。後出・「春将老」と対になり得る表現。

※長郊草色緑無涯：広々とした郊外の草の緑色は、果（は）てしが無い。　・長郊：広々とした郊外。　・無涯：果（は）てが無い。

※遊人不管春将老：物見遊山をする人は、（季節としての/人生の）春が終わろうとしているもにかかわらず。　・遊人：遊覧客。物見遊山をする人。唐・蜀・韋莊の『菩薩蠻』に「人人盡説江南好，遊人只合江南老。春水碧於天，畫船聽雨眠。　　　爐邊人似月，皓腕凝雙雪。未老莫還鄕，還鄕須斷腸。」とある。　・不管：…であろうと。…にかかわりなく。…にかかわらず。　・春将老：（季節としての/人生の）春が暮れようとしている。（季節としての/人生の）春が老いて尽きようとしている。前出・「紅樹青山日欲斜」や唐・劉方平の『春怨』に「紗窗日落漸黄昏，金屋無人見涙痕。寂寞空庭春欲晩，梨花滿地不開門。」とある。

※来往亭前踏落花：（そのことに気付こうともしないで）（豊楽）亭の辺りを行き来して、散った春の花（≒曽ての栄光日々の残滓）を踏んでいる。　・来往：〔らいわう；lai2wang3○●〕行き来する。蛇足になるが、「往来」はここでは使えない。「来往」は詩句中で●●とすべきところで使い、「往来」は○○とすべきところで使う。この句は「●●○○●●○」（○●○○●●○）で、「●●○○●●○」と赤字部分で使うので「来往」。（更なる蛇足：それ故、「●●○○●●○」の第三、四字めの青字部分で使うとすれば「往来」）。　・亭前：ここでは､豊楽亭の前/附近のことになる｡　・落花：散った花。ここでは曽ての栄光の日々の残滓でもある。

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◎　構成について

韻式は、「AAA」。韻脚は「斜涯花」で、平水韻下平六麻。この作品の平仄は、次の通り。

○●○○●●○，（韻）
○○●●●○○。（韻）
○○●●○○●，
○●○○●●○。（韻）