乞猫 | |
北宋・黄庭堅> |
秋來鼠輩欺猫死,
窺甕翻盆攪夜眠。
聞道貍奴將數子,
買魚穿柳聘銜蟬。
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猫を乞 ふ
秋來 鼠輩 猫の死せるを欺 り,
甕 を窺 ひ盆 を翻 して夜眠 を攪 す。
聞道 らく貍奴 數子 を將 ゆと,
魚 を買ひ 柳に穿 ちて銜蟬 を聘 せん。
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◎ 私感註釈
※黄庭堅:北宋の詩人。慶暦五年(1045年)〜崇寧四年(1105年)。字は魯直、号は涪翁。山谷道人。洪州の分寧(現・江西省修水県)の人。党争に巻き込まれ、紹聖元年(1094年)新法党に中傷され、以後地方を転々として、最後は(現・広西省)宜州で没した。蘇軾の門下として、秦観らと「蘇門四学士」と、また、蘇軾と並んで「蘇黄」と称される。
※乞猫:ネコをねだる。 *作者の飼いネコが死んだことで、ネズミが跳梁跋扈し、そのため困った作者は、子ネコのいる家の主に、「子ネコを一匹、下さいな〜」と、ねだった詩。 ・乞:〔きつ(こつ);qi3●〕ねだる。請う。求める。ねがう。 *猫を詠った詩に、北宋・梅堯臣の『祭猫』「自有五白猫,鼠不侵我書。今朝五白死,祭與與魚。送之于中河,呪爾非爾疎。昔汝齧一鼠,銜鳴遶庭除。欲使衆鼠驚,意將C我盧。一從登舟來,舟中同屋居。糗糧雖甚薄,免食漏竊餘。此實爾有勤,有勤勝雞猪。世人重驅駕,謂不如馬驢。已矣莫復論,爲爾聊欷歔。」や南宋・陸游の『贈猫』「裹鹽迎得小狸奴,盡護山房萬巻書。慙愧家貧策勳薄,寒無氈坐食無魚。」がある。
※秋来鼠輩欺猫死:秋になってより、ネズミどもが、ネコの死んだことでなめてきて。 ・秋来:秋になって、秋よりこのかた、の意。 ・鼠輩:取るに足りないネズミども。(罵語)。 ・輩:やから。 ・欺:〔き(ぎ);qi1○〕あなどる。馬鹿にする。また、あざむく。ここは、前者の意。
※窺甕翻盆撹夜眠:(ネズミどもは)かめ(の中身)をのぞきうかがっ(たり)、鉢(はち)をひっくり返し(たり)して、夜も寝られない(ほどに我が家を)かき乱している。 ・窺:〔き;kui1○〕のぞきうかがう。うかがう。 ・甕:〔をう;weng4●〕かめ。みか。 ・翻:ひっくり返す。 ・盆:〔ぼん(ほん);pen2○〕はち。ほとぎ。たらい。 ・攪:〔かう(かく)jiao3●〕かき乱す。混乱させる。
※聞道狸奴将数子:聞くところでは、お宅のネコは、何匹かの子ネコを率いているとのことだが。 ・聞道-:聞くところでは…だそうだ。「聞くならく」。伝聞の表現。 ・狸奴:〔りど;li2nu2○○〕ネコ。ネコの別名。 ・将:〔しゃう;jiang1○〕率いる。 ・数子:何匹かの子ネコを指す。
※買魚穿柳聘銜蝉:(子ネコを迎えるため、)魚を買って、柳の枝に通して(歓迎の威儀として、)ネコを招きたい。 *「新来のネコを大切にする」意のみならず、花嫁を迎えるかの如き「新来のネコを迎える儀式的風景」として描写したのか。 ・穿:穴をあける。通す。うがつ。 ・聘:〔へい;pin4(ping4)●〕招く。招聘(しょうへい)する。 ・銜蝉〔かんせん;xian2chan2○○〕ネコの名。=銜蝉奴。『漢語大詞典』(漢語大詞典出版社 上海)巻3 1609ページに「銜蝉 銜蝉奴:『猫名。』(用例紹介二例)」とある。
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◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「眠蝉」で、平水韻下平一先。この作品の平仄は、次の通り。
○○●●○○●,
○●○○●●○。(韻)
○●○○○●●,
●○○●●○○。(韻)
2019.11.21 11.22 11.23完 12. 3補 |
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