歳月人間促,
煙霞此地多。
殷勤竹林寺,
更得幾迴過。
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竹林寺に 題す
歳月 人間に 促(せま)り,
煙霞 此の地 多し。
殷勤にす 竹林寺,
更に 幾迴か 過(よぎ)ることを 得ん。
◎ 私感註釈 *****************
※朱放:唐の詩人。字は長通。襄州の人。越の溪に隠棲する。江西節度參謀となる。後、貞元の初めに、拾遺に召されたが就かなかった。
※題竹林寺:『題鶴林寺』『宿慧山寺』ともする。廬山にあるという。(未確認)。「竹林寺」は、劉長卿の『送靈K』「蒼蒼竹林寺,杳杳鐘聲晩。荷笠帶斜陽,青山獨歸遠。」と同様、普通名詞のようで、固有名詞としては「鶴林寺」「慧山寺」になろうか。
※歳月人間促:歳月は、人の世の(全てに)せまって、あわただしく急(せ)き立てる(が)。 ・歳月:年月。後出・『漁歌子』の「抛歳月,臥煙霞」の歳月(紫字)でもある。 ・人間:〔じんかん;ren2jian1○○〕この世。現世。人の世。世間。唐・李白『山中問答』「問余何意棲碧山,笑而不答心自閑。桃花流水杳然去,別有天地非人間。」
や、宋・蘇軾の『水調歌頭』「明月幾時有?把酒問天。不知天上宮闕,今夕是何年。我欲乘風歸去,又恐瓊樓玉宇,高處不勝寒。起舞弄C影,何似在人間!」
や、『念奴嬌』「大江東去,浪淘盡、千古風流人物。故壘西邊,人道是、三國周カ赤壁。亂石穿空,驚濤拍岸,卷起千堆雪。江山如畫,一時多少豪傑。 遙想公瑾當年,小喬初嫁了,雄姿英發。註綸巾,談笑間、檣櫓灰飛煙滅。故國~遊,多情應笑我,早生華髪。人間如夢,一樽還
江月。」
などと使う。 ・促:〔そく;cu4●〕せまる。せきたてる。うながす。漢樂府に『蒿里曲』「蒿里誰家地,聚斂魂魄無賢愚。鬼伯一何相催促,人命不得少踟
。」
や、沈
期の『臨高臺』「高臺臨廣陌,車馬紛相續。回首思舊ク,雲山亂心曲。遠望河流緩,周看原野香B向夕林鳥還,憂來飛景促。」
がある。
※煙霞此地多:(俗塵から隔絶したところにある)もややかすみが、この地に満ちている。 *時間がゆったりと流れる感覚をいう。 ・煙霞:〔えんか;yan1xia2○○〕山水のよい景色。もややかすみ。朱放の『題竹林寺』「歳月人間促,煙霞此地多。殷勤竹林寺,更得幾迴過。」、柳永の『望海潮』「東南形勝,三呉都會,錢塘自古繁華。煙柳畫橋,風簾翠幕,參差十萬人家。雲樹繞堤沙。怒濤卷霜雪,天塹無涯。市列珠
,戸盈羅綺競豪奢。 重湖疊
清嘉。有三秋桂子,十里荷花。羌管弄晴,菱歌泛夜,嬉嬉釣叟蓮娃。千騎擁高牙。乘醉聽簫鼓、吟賞煙霞。異日圖將好景,歸去鳳池誇。」
、元・無名氏『漁歌子』「一任孤舟正又斜,乾坤何路指生涯。抛歳月,臥煙霞,在處江山便是家。」
と使う。 ・此地:廬山の竹林寺のあるところ。
※殷勤竹林寺:心をこめて念入りに竹林寺(の幽勝を味わい尽くそう)。 *作者は再びは、この地を訪れることは(年齢的・健康的な問題などで)難しいことと自覚していたので、今回、心を込めて参拝することとした。 ・殷勤:〔いんぎん;yin1qin2○○〕心をこめて念入りにするさま。きわめて叮嚀なさま。=慇懃。李益の『幽州』に「征戍在桑乾,年年薊水寒。殷勤驛西路,此去向長安。」とある。
※更得幾迴過:このあと何回、訪れることができることだろうか。 *白居易の『五年秋病後獨宿香山寺三絶句』其一「經年不到龍門寺」や、『五年秋病後獨宿香山寺三絶句』其二「飮徒歌伴今何在」
、『五年秋病後獨宿香山寺三絶句』其三「石盆泉畔石樓頭」
、また、『遊趙村杏花』「趙村紅杏毎年開,十五年來看幾迴。七十三人難再到,今春來是別花來。」
とイメージが似ている。 ・更得:あと、どれだけ…できるか。ここは、「更能」ともする。杜牧の『張好好詩』に「君爲豫章,十三纔有餘。…怪我苦何事,少年垂白鬚。朋遊今在否,落拓更能無。門館慟哭後,水雲秋景初。斜日挂衰柳,涼風生座隅。灑盡滿襟涙,短歌聊一書。」
とあり、宋・辛棄疾の『摸魚兒』に「更能消、幾番風雨,怱怱春又歸去。惜春長恨花開早,何況落紅無數。春且住,見説道、天涯芳草無歸路。怨春不語,算只有殷勤,畫簷蛛網,盡日惹飛絮。 長門事,準擬佳期又誤。蛾眉曾有人妬。千金縱買相如賦,脈脈此情誰訴。君莫舞,君不見、玉環飛燕皆塵土。闖D最苦。休去倚危樓,斜陽正在,煙柳斷腸處。」
とある。 ・幾迴:何回。 ・過:すぎる。よぎる。ここでは、竹林寺を訪れることになる。
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◎ 構成について
韻式は「AA」。韻脚は「多過」で、平水韻下平五歌。次の平仄はこの作品のもの。
●●○○●,
○○●●○。(韻)
○○●○●,
●●●○○。(韻)
2006.1.15 1.16 1.17 |
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