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除夕懷弟 | ||
賴支峰 |
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雪聲燈影笑談新, 濁酒乾魚侍老親。 獨恨一年年欲盡, 天涯猶有未歸人。 |
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雪聲 燈影 笑談 新 に,
濁酒 乾魚 老親 に侍 す。
獨 り恨 む 一年年 盡 きんと欲 すれど,
天涯 に猶 ほ未 だ歸らざる人 有るを。
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◎ 私感註釈
※頼支峰:頼山陽の第二子。文政六年(1823年)~明治二十二年(1889年)。名は復、字は士剛、幼名は又二郎、号して支峰。山陽死没のときは十歳。やがて、父の後を継いで家塾を開く。弟に頼三樹三郎(鴨崖)がいる。明治維新の際、天皇に随行して上京。
※除夕懐弟:一年の最終日の夜(=大晦日)に、弟を懐(なつ)かしく思う。 ・除夕:大晦日(おおみそか)の夜。=除夜。一年の最終日の夜で、旧暦では十二月三十日。新暦では十二月三十一日。 ・懐弟:弟を懐(なつ)かしむ。この「弟」とは頼三樹三郎(鴨崖)のこと。頼三樹三郎とは、儒者で幕末の尊攘派の志士。梁川星巌、梅田雲浜らと交わり、尊攘討幕に奔走。安政の大獄で刑死。
※雪声灯影笑談新:降る雪の立てる音と灯火の下、(楽しい)談笑が次々と新たに生まれ 。 ・-声:…の音。 ・笑談:談笑。 *「笑談」(●○)は○○とすべきところで使い、「談笑」(○●)は●●とすべきところで使う。この句(「雪声灯影笑談新」)は「○○●●●○○」とすべきところで、第五、六字めは「●○」で、「笑談」(●○)が相応しい。そのため、この語を用いた。
※濁酒乾魚侍老親:(安物の)濁り酒や乾物の魚でもって、老いた親に侍(はべ)っている。 ・濁酒:濁り酒。安物の酒。 ・乾魚:乾物の魚。保存食に準ずる比較的廉価な食べ物になろうか。 ・侍:はべる。 ・老親:年老いた親。父親の頼山陽は、作者が十歳の時に亡くなっているので、母親のこととなろう。
※独恨一年年欲尽:(親は、にこやかに除夜の宴席に出てくれていたが)自分ひとりの思いでは…(結句の内容=地の涯(はて)に、まだ帰ってこない人がいる(こと))…を恨めしく、按じている。 ・独恨:(親は、にこやかに除夜の宴席に出てくれていたが)自分ひとりでは…(結句の内容=地の涯(はて)に、まだ帰ってこない人がいる(こと))…を恨めしく、按じている、の意。 ・年欲尽:一年が終わろうとしている、意。
※天涯猶有未帰人:地の涯(はて)に、まだ帰ってこない人(=弟の頼三樹三郎)がいる(ことだ)。*明・徐熥に『寄弟』「春風送客翻客愁,客路逢春不當春。寄語鶯聲休便老,天涯猶有未歸人。」があり、北宋・歐陽脩の『戯答元珍』に「 春風疑不到天涯,二月山城未見花。殘雪壓枝猶有橘,凍雷驚筍欲抽芽。夜聞歸雁生鄕思,病入新年感物華。曾是洛陽花下客,野芳雖晩不須嗟。」
とある。 ・天涯:天の果て。遠く離れた地を謂う。 ・猶有:なお…がある。まだ…がある。中唐・韓愈の『題楚昭王廟』に「丘墳滿目衣冠盡,城闕連雲草樹荒。猶有國人懷舊德,一間茅屋祭昭王。」
とあり、北宋・蘇軾の『初冬作贈劉景文』に「荷盡已無擎雨蓋,菊殘猶有傲霜枝。一年好景君須記,正是橙黄橘綠時。」
とあり、南宋・陸游の『書事』に「關中父老望王師,想見壺漿滿路時。寂寞西溪衰草裏,斷碑猶有少陵詩。」
とあり、明・楊一淸の『山丹題壁』に「關山偪仄人蹤少,風雨蒼茫野色昏。萬里一身方獨往,百年多事共誰論。東風四月初生草,落日孤城早閉門。記取漢兵追寇地,沙上猶有未招魂。」
とあり、後世、毛沢東は『卜算子 詠梅』讀陸游詠梅詞,反其意而用之で「風雨送春歸,飛雪迎春到。已是懸崖百丈冰,猶有花枝俏。 俏也不爭春,只把春來報。待到山花爛漫時,她在叢中笑」
とする。 ・猶:ちょうど…のようだ。なお…ごとし。 ・未帰人:「まだ帰ってこない人」の意で、尊攘討幕に奔走していた弟の頼三樹三郎のこと。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「新親人」で、平水韻上平十一真。この作品の平仄は、次の通り。
●○○●●○○,(韻)
●●○○●●○。(韻)
●●●○○●●,
○○○●●○○。(韻)
令和2.11. 3 11. 4 11. 5 11. 6完 11.11補 3.10.24 |
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