洪湖水呀,浪呀麽浪打浪啊, 洪湖岸邊是呀麽是家鄕啊。 清早船兒去呀麽去撒網, 晩上回來魚滿艙。 四處野鴨和菱藕,啊-- 秋收滿畈稻穀香。 人人都説天堂美,啊-- 怎比我洪湖魚米鄕。 洪湖水呀,長呀麽長又長啊, 太陽一出閃呀麽閃金光啊。 共產黨的恩情比那東海深, 共產黨像呀麽像太陽。 漁民的光景一年更比一年強。 |
******
洪湖水,浪打浪
洪湖の水や, 浪、浪は 浪を打ち,
洪湖の岸邊は 是れ 家鄕。
清早 船兒 去きて 網を撒き,
晩上 回り來りて 魚 艙に滿つ。
四處 野鴨と菱藕 ,
秋收 畈に滿ち 稻穀 香(かんば)し。
人人 都(すべ)て 天堂 美(うるは)しと説(い)へども,
怎(いかで)か 我が洪湖・魚米の鄕に 比せん。
洪湖の水や, 長く 長く又た長く,
太陽 一たび出づれば 閃きて 金光を閃かす。
共産黨の恩情は 那(か)の東海よりも深く,
共産黨は 太陽の像(ごと)し。
漁民の光景は 一年 更に一年よりも 強(さかん)なり。
*****************
◎ 私感註釈
※洪湖水,浪打浪:洪湖の水面に立つ浪は、浪を打って。 *(日本語の古文での)書き下し文にすべきなのか、現代語訳にすべきか迷った末、擬似古文で、読み下したが…。 ・洪湖:〔こうこ;Hong2hu2○○〕湖北省の南部で、長江の北岸側の湖。昔の 雲夢澤:〔うんぼうたく;Yun2meng4ze2○●●〕の一部分で、長江を夾んで洞庭湖と向かい合う湖。春秋・楚の国にあった大きな湖。現・湖北省南部一帯。北限は安陸、南限は長江で、長江を夾んで洞庭湖・岳陽に近く、東は武漢、西は沙市一帯にあった、一辺100キロメートルほどで、洞庭湖の五、六倍ある広い湖沼。『中国歴史地図集』第一冊 原始社会・夏・商・西周・春秋・戦国時期(中国地図出版社)29-30ページ「春秋 楚呉越」参照。
(左は、msnの地図だが、この地図は?音(ピンイン=中国語のローマ字綴り)でしか表示されないので念のため、拼音(ピンイン)を次に示す:(北:安陸(Anlu)、南:岳陽(Yueyang)、東:武漢(Wuhan)、西は沙市(Shashi))。これで囲まれる内側が雲夢沢。また、長江北岸にあった沢を雲沢、南岸のを夢沢、合わせて雲夢沢ともいう。『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)52-53ページ「山南東道 山南西道」では消えていた。 ・浪打浪:
※洪湖水呀,浪呀麽浪打浪啊:洪湖の水よ、浪は浪に打ちつけて。 ・呀:〔が(か);ya0〕…よ。…か。語勢を整えるため、文末に附けられる助詞。 ・呀麽:動詞の後に附いて、続けさまに行うことを示す。『白毛女』(扎紅頭繩)「人家的閨女有花戴,你爹我錢少不能買。扯上了二尺紅頭繩,我給我喜兒扎起來。唉 扎起來。人家的閨女有花戴,我?錢少不能買。扯上了二尺紅頭繩,給我扎起來。唉 扎呀扎起來。」と似るか。 ・啊:〔あ;a0〕ああ。感嘆の意を表す。感動詞。
※洪湖岸邊是呀麽是家鄕啊:洪湖の岸辺は故郷である。 ・是:〔ぜ;shi4●〕…は…である。これ。主語と述語の間にあって述語の前に附き、述語を明示する働きがある。〔A是B:AはBである〕。 ・家鄕:ふるさと。故郷。
※清早船兒去呀麽去撒網:早朝に、船は網を打ちに行き。 ・清早:早朝。 ・船兒:ふね。「-兒」は名詞接尾尾字で、小さいもの、愛らしいもの好ましいもの、といった感じを添える。 ・去:(…に)行く。 ・撒網:網を打つ。
※晩上回來魚滿艙:夕方には、船の胴の間(ま)に魚を満載して帰ってくる。 ・艙:〔さう;cang1○〕 ・晩上:夕方。 ・回來:戻る。帰る。 ・艙:〔さう;cang1○〕船の胴の間(ま)。船腹。船の間取りの一つで、船体中央部の間(ま)をいう。
※四處野鴨和菱藕:どこもかしこも、カモとヒシ(の実)と蓮根(れんこん)で。 ・四處:〔ししょ;si4chu4●●〕四方。各所。どこもかしこも。 ・野鴨:カモ。マガモ。 ・和:…と。 ・菱藕:ヒシ(の実)と蓮根(れんこん)。共に食用にする。
※秋收滿畈稻穀香:秋の収穫は田畑に満ちて、籾米(もみごめ)が香(かぐわ)しい。 ・秋收:秋の収穫。 ・畈:〔?;fan4●?〕田畑。大きな田畑の量詞。方言。 ・稻穀:籾米(もみごめ)。 ・香:かおる。香(かぐわ)しい。
※人人都説天堂美:どの人も皆、天国はすばらしいところだとと、すべて言う(が)。 *晩唐・韋荘の『菩薩蠻』に「人人盡説江南好,遊人只合江南老。春水碧於天,畫船聽雨眠。 壚邊人似月,皓腕凝雙雪。未老莫還鄕,還鄕須斷腸。」とある。 ・人人:みんな。どの人もどの人も。 ・都説:すべて言う。ことごとく言う。 ・説:言う。 ・天堂:天国。極楽浄土。楽園。パラダイス。 ・美:すばらしい。
※怎比我洪湖魚米鄕:水産物も米もよく獲れる所(のこの洪湖)と、どうして比べられようか。 ・怎比:どうして比べられようか。 ・怎:どうして…か。 ・比:くらべる。なお、後出・「共產黨的恩情比那東海深」や「漁民的光景一年更比一年強」の「比」は「…よりも」の意。 ・魚米鄕:海や川に近い肥沃な土地で、水産物も米もよく獲れるところ。「魚米之鄕」のこと。
※洪湖水呀,長呀麽長又長:洪湖の水面よ、大きくて大きいが上にも大きくて。 ・長:おおきい。おおい。よい。 ・又:…くて。且つ。
※太陽一出閃呀麽閃金光:太陽がひとたび出て、黄金(こがね)色の光を輝かせる。 ・太陽:日。また、共産党であり、毛沢東であり、毛沢東思想を形容する。『白毛女』では「太陽就是毛澤東。太陽就是共産黨」とうたいあげる。『大海航行靠舵手』に「大海航行靠舵手,萬物生長靠太陽。雨露滋潤禾苗壯,幹革命靠的是毛澤東思想。魚兒離不開水呀,瓜兒離不開秧。革命群衆離不開共産黨,毛澤東思想是不落的太陽。」
とある。 ・一出:ひとたび出(れば)。 ・閃:輝かす。きらめく。 ・金光:黄金(こがね)色の輝き。
※共產黨的恩情比那東海深:共産党の(階級的な)恩情は、あの東方の海(東シナ海)よりも深く。 *文化大革命時期の現代詩に『爹親娘親不如毛主席的親』「天大地大不如黨的温情大,爹親娘親不如毛主席的親,千好萬好社會主義好,河深海深不如階級友愛深。」(リンク未)がある。 ・共產黨:ここでは、中国共産党のことになる。中国共産党が指導する中華人民共和国が建国されたのは1949年であり、この部分の歌詞ができたのはそれ以降か。或いは1921年以降、地方に生まれた共産党の勢力圏でのことをいうのか。或いは、建国以降、昔からの民謡の一部が改変されたのか。待考。 ・的:…の。 ・恩情:恩誼。階級の敵の抑圧から解放してもらった恩誼。 ・比:…よりも。 ・那:あの。 ・東海:東の方の海。東シナ海。
※共產黨像呀麽像太陽:共産党は、太陽のようだ。 *『東方紅』に「東方紅,太陽昇,中國出了個毛澤東;他爲人民謀幸福,呼兒咳呀,他是人民大救星。毛主席,愛人民,他是我們的帶路人;爲了建設新中國,呼兒咳呀,領導我們向前進。共産黨,像太陽,照到哪裡哪裡亮。哪裡有了共産黨,呼兒咳呀,哪裡人民得解放。」とある。 ・像:…のようだ。文語の「如」に近い働きをする。
※漁民的光景一年更比一年強:漁民の生活は、日増しに過ごしやすくなった。 ・一年更比一年:一年更にまた一年と。 ・強:ましである。よくなる。
◎ 構成について
韻脚は次の通り:
洪湖水呀,浪呀麽浪打浪啊,
洪湖岸邊是呀麽是家鄕啊。
清早船兒去呀麽去撒網,
晩上回來魚滿艙。
四處野鴨和菱藕,啊--
秋收滿畈稻穀香。
人人都説天堂美,啊--
怎比我洪湖魚米鄕。
洪湖水呀,長呀麽長又長啊,
太陽一出閃呀麽閃金光啊。
共產黨的恩情比那東海深,
共產黨像呀麽像太陽。
漁民的光景一年更比一年強。
韻式は「aAaA AA AAAA」。韻脚は「浪鄕網艙 香鄕 長光陽強」で、平水韻では下平七陽。平仄はこの作品のもの。
○○●*,●**●●●,(韻)
○○●○●**●○○。(韻)
○●○*●**●●●,(韻)
●●○○○●○。(韻)
●●●●○○●,
○○●●●●○。(韻)
○○○●○○●,
●●●○○○●○。(韻)
2010.4. 9 4.10 4.11 |
![]() メール |
![]() トップ |