施紹莘浣渓沙詩詞世界　碇豊長の詩詞：漢詩 Shi Shaoxin

玉台体

　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 明・施紹莘

浣溪沙

半是花聲半雨聲。
夜分淅瀝打窗櫺。
薄衾單枕一人聽。

密約不明渾夢境，
佳期多半待來生。
凄涼情況是孤燈。

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浣溪沙
　　　　　　　　　　　　　　　　　

半(なか)ばは是(こ)れ　花聲(くゎせい)　　半ばは雨聲(　うせい)。
夜分( やぶん)　淅瀝(せきれき)として　　窗櫺(さうれい)を打つ。
薄衾(はくきん) 單枕(たんちん)に　　一人聽く。

密約　明(あき)らかならず　　渾(すべ)て夢境，
佳期(かき)　多半(たはん)　　來生を待たん。
凄涼(せいりゃう)たる情況は　是(こ)れ孤燈( ことう)。

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◎　私感註釈

※施紹莘：〔しせう（しょう）しん；Shi1 Shao4xin1〕(1581～約1640) 明代の詞人・散曲家。明・萬暦九年（１５８１年）～明・毅宗十三年頃/清・崇徳五年頃（１６４０年頃）。字は子野。号して峰泖浪仙。華亭（現・上海市松江県）の人。才能が豊かであったが科挙には通ることなく、江南の地を放浪した。散曲と詞に秀でていた。

※浣渓沙：詞牌の一。詞の形式名。詳しくは下記の「構成について」を参照

。

※半是花声半雨声：半（なか）ばは花の散る音であり、半（なか）ばは雨の滴（しずく）の音で。＊ここの「半是花声半雨声」の句は、「半是・花声＋半・雨声」との節奏。　・半是：なかばは…である。　・半…半…：…でもあり、…でもある。　・花声：花の散る音。　・雨声：雨の滴（しずく）の音。

※夜分淅瀝打窓櫺：夜中に、寂しげな音をたてて、窓の格子に打ちつけている。　・夜分：夜中。夜半。　・淅瀝：〔せきれき；xi1li4●●〕雨・雪・あられ・風・落ち葉などの寂しい音のさま。　・窓櫺：〔さうれい；chuang1ling2○○〕窓の格子。窓のれんじ。れんじ窓。

※薄衾単枕一人聴：（その音を、）薄いふとんに粗末ななまくらで、ひとりで聴いている。　・薄衾：薄いかけぶとん。「薄衾単枕」は、「粗末な寝具」の意の互文表現。（「薄・衾＋単・枕」（薄いふとんに、簡単なまくら））。　・聴：（聴き耳を立てて）聴く。意識的に聴く。

※密約不明渾夢境：（過去の思い出を振り返れば：）こっそりとあいびきをしたことも、（もはや）はっきりしないで、すべてが夢の世界（のようで）。　・密約：（男女が）こっそりとあいびき/デートをする。　・不明：はっきりしない。明らかでない。　・渾：すべて。ことごとく。　・夢境：夢の世界。夢うつつの世界。

※佳期多半待来生：結婚の日取りも、おおかた、来世（のことになろう）。　・佳期：結婚の日。デート/あいびきの日時。素晴らしい時。　・多半：おおかた。大半。　・来生：生まれ変わった世。来世。

※凄涼情況是孤灯：もの寂しい情景を物語っているのは、ぽつんとさびしく照らすただ一つのともしびである。　・凄涼：心や情景がもの寂しい。＝淒涼、凄凉。　・情況：様子。ありさま。＝状況。　・是：…は…である。これ。主語と述語の間にあって述語の前に附き、述語を明示する働きがある。〔A是B：AはBである〕。　・孤灯：さびしく照らすただ一つのともしび。独り寝を謂う。中唐・白居易の『長恨歌』に「…西宮南内多秋草，落葉滿階紅不掃。梨園弟子白髮新，椒房阿監靑娥老。夕殿螢飛思悄然，孤燈挑盡未成眠。遲遲鐘鼓初長夜，耿耿星河欲曙天。鴛鴦瓦冷霜華重，翡翠衾寒誰與共。悠悠生死別經年，魂魄不曾來入夢。…」

とあり、両宋・左緯の『避寇即事』に「寂寞空山裏，黄昏百怪新。鬼沿深澗哭，狐出壞牆嚬。小雨俄成霰，孤燈不及晨。開門謝魑魅，我是太平人。」

とある。

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◎　構成について

　浣溪沙　　四十二字（双調）。　脚韻は、平声韻一韻到底。韻式は「AAA　AA」、韻脚は「聲櫺聽生燈」で、詞韻第十一部平声八庚（聲生）、九青（櫺聽）・十蒸（燈）。

　　　

●○○●●○，（韻）
　　　

○

●●○○。（韻）
　　　

○

●●○○。（韻）

　　　

●

○○●●，
　　　

○

●●○○。（韻）
　　　

○

●●○○。（韻）
　

２０１７．６．２１
　　　　　６．２２

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