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浣溪沙 | |
清・陳維嵋 |
綠剪堤邊楊柳絲,
紅堆門外小桃枝。
一春人在謝家池。
事去已荒前日夢,
情多猶憶少年時。
江南紅豆最相思。
紅豆(福建省寧徳市宝橋村 志遠氏 写真撮影・提供(2008.8.21)
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浣溪沙
綠は剪 るがごとし堤邊 楊柳 の絲 ,
紅 は堆 むがごとし 門外小桃 の枝。
一春 人は謝家 の池に在 り。
事 去りて已 に荒 たり前日 の夢,
情 多くして猶 ほ憶 ふ 少年の時。
江南 の紅豆 最も相 ひ思ふ。
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◎ 私感註釈
※陳維嵋:清代の人。諸生。明・毅宗・崇禎三年/清・太宗・天聰四年(1630年)~清・康煕十一年(1672年)。字は半雪。江蘇省の宜興の人。酒の上で詩を賦すことを好んだが、俗に流れなかった。家はもと貧困で、詩、填詞(=詩余、詞)、南曲等をつくるのを楽しみとした。
※浣溪沙:詞牌の一。四十二字。双調。
※緑剪堤辺楊柳糸:土手の畔(ほとり)のヤナギの枝は、緑の(繁っているところは、)はさみできりそろえた(かのようであり)。 ・剪:(はさみで)きりそろえる。(はさみで)切る。裁つ。裁断する。 ・堤辺:土手の畔(ほとり)。 ・楊柳糸:ヤナギの枝。
※紅堆門外小桃枝:門外の小桃(しょうとう)の枝(の下に)赤い(はなびら)がうずたかく積み上がっている。 ・紅:赤い(はなびら)。赤い(はな)。 ・堆:積み上げる。うづたかし。 ・小桃:初春に花が咲く桃の一種。 (*「小桃」の「小」が、或いは「个」=「箇」なのか。「箇」ならば:この…。かく。盛唐・李白の『秋浦歌』に「白髮三千丈,縁愁似箇長。不知明鏡裏,何處得秋霜。」とある。)
※一春人在謝家池:春の間まるまる、人(=作者=男性)は、謝嬢の家の池で過ごした。 ・一春:春の全て。春の期間まるまる。 ・人:ひと。ここでは、作者(=男性)のことになる。 ・謝家:(恋人である)女性側の家。謝は、東晋の才媛・謝道韞のことで彼女の姓。ここでは、こよなく可愛い女性の意で使われている。謝道韞とは、魏晋時代随一の才女といわれた東晋・謝安の姪の謝道韞のこと。謝安は姪の謝道韞をこよなく可愛がったという。中唐・元稹の『遣悲懷』に「謝公最小偏憐女,嫁與黔婁百事乖。顧我無衣搜藎篋,泥他沽酒拔金釵。野蔬充膳甘長藿,落葉添薪仰古槐。今日俸錢過十萬,與君營奠復營齊。」とある。晩唐・張泌の『寄人』に「別夢依依到謝家,小廊迴合曲闌斜。多情只有春庭月,猶爲離人照落花。」
とある。
※事去已荒前日夢:(色々な)出来事は過ぎ去り、既に忘れわすれて、ぼんやりとした昔の夢になった。 ・事去:出来事は過ぎ去り…、の意。 ・已:とっくに。すでに。 ・荒:わすれる。ぼんやりする。 ・前日:先日。また、一昨日。おととい。
※情多猶憶少年時:(昔の夢、それは、)多情多感で、まるで若者の時の……を思い出す。 ・猶:まるで…のようである。なお…ごとし。 ・憶:思い出す。 ・少年:若者。
※江南紅豆最相思:(それは)江南の紅豆は、一番慕わしい。 ・江南:長江下流の南岸地帯。 ・紅豆:紅い色の木の実。相愛をいう。「相思子」の謂。紅豆については、以前(2007年、2008年)にそれについてのメールをいただいたので転載しておきます)「紅豆は豆の樹になる豆で、福建省の寧徳市宝橋村には、20メートルにもなる一株の大きな「相思樹」があり、毎年、)紅豆をつけています。紅豆は、とても綺麗な赤い色の果実で(果実ではあるものの食べられませんが)、皮が硬くて色が何時までも褪せません。そのために恋の象徴とされてきたのでないかと思っています。紅豆を石にこすりつけて磨いていて、豆が熱くなっても、皮は破れません。その硬さは、想像できるでしょうか。王維の『相思』は恋情だけではなく、人と人の情誼を詠う詩だと主張する人もいるようです。豆はエンドウマメのように莢(さや)に入っており、一つの莢(さや)に直径1センチメートルほどの紅豆が普通は一つ、場合によっては二つか三つ入っています。木の下で拾う時、多くは莢と豆が既に離れて、土や草の中から紅豆を拾います」とのことで、千載不磨、不変顔色を象徴する赤い果実ということ。盛唐・王維の『相思』に「紅豆生南國,春來發幾枝。願君多采擷。此物最相思。」
とある。 ・相思:(男女が)慕いあう。恋しあう。
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◎ 構成について
◎ 浣溪沙 四十二字(双調)。韻式は「AAA AA」で、平声韻一韻到底。韻脚は「糸枝池 時思」で、詞韻第三部平声四支。
●○○●●○,(韻)
○
●●○○。(韻)
○
●●○○。(韻)
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○○●●,
○
●●○○。(韻)
○
●●○○。(韻)
2017.5.22 5.23 5.24 |
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