ここの背景画像は「Mariの色鉛筆」さんからお借りしました。
そもそも、公安委員会を中枢とした「革命政府」は内外の危機に立ち向かうための臨時政府でした。12人の委員は自分達の職務を全うし、フランスを脅えさせていた内外の危機を一致団結して回避しました。
フルーリュスの勝利等、5月から6月にかけて革命軍は各地で大勝しました。国内の反革命内乱はほとんど鎮圧され、外国からの侵入も阻止し、革命政府を脅かすものはもはやありませんでした。
1794年6月8日の「最高存在の祭典」で国民を一つにまとめたロベスピエールは、その時、押しも押されぬフランスの統治者でした。
二次関数では頂点に達すると、あとは下降の一途です。ロベスピエールの絶頂も同じでした。数々の戦勝をあげ、政局が安定しそうだと見ると、世論は窮屈な「恐怖政治」からの解放されたいと思いました。ブルジョワは、ジャコバン的な商業規制を嫌いました。民衆は、最高価格令のような統制にもかかわらず、物資が欠乏し、物価がどんどんあがっていく現状に不満を抱きました。
政局が安定し始めると、今まで隠されていた矛盾、不満がじわじわと溢れ出てきました。
国民公会…多くの議員がロベスピエールを恐れました。特に派遣議員として派遣された地方で残虐行為や収賄行為をおこなっていた「腐敗分子」と呼ばれた議員達が戦々恐々でした。
フーシェ:
リヨンやナントで残虐行為を行い、ロベスピエールによって、ジャコバン・クラブから抹消されました。 | |
タリヤン: ボルドーで盛んに残虐行為と収賄行為を行いました。そこで知り合った愛人テレーザ・カバリュスが逮捕・投獄され、毎日のようにロベスピエールをやっつけて直ちに自分を牢から出しなさい、という命令を受け、「行動」を迫られていました。 | |
バラス: ツーロンで残虐行為を行う。テレーザ・カバリュスにそそのかされているタリヤンをうまく味方に取り入れる。 | |
フレロン:収賄行為を行い、ロベスピエールを恐れる。 |
政府内部…治安、警察の権限を持っているはずの保安委員会は、ル・バとダヴィッドを除いて、自分達の職権が公安委員会に取って代わられている現実に不満を持ちました。ロベスピエールを中心とした公安委員会の権力はあまりにも大きかったのです。
カンボン:財政を牛耳っているカンボンは、自分達の提案した法律がブルジョワに有利だと言う理由でロベスピエールに却下されてから、反ロベスピエールになりました。公安委員会…ロベスピエールの腹心はサン・ジュストとクートンだけです。それ以外のメンバーは反ロベスピエールに傾いていました。
カルノー:前線で戦果をあげたことにより発言権を強め、軍事面でサン・ジュストと対立しました。元々平原派のカルノーは、根本的な面ではロベスピエールの打ち出す民衆に重きを置いた態度には賛同しかねました。 | |
ビョー・ヴァレンヌ:ロベスピエールの成功に嫉妬し、敵対するようになりました。 | |
コロー・デルボワ:派遣議員として派遣されたリヨンでの残虐行為をロベスピエールに睨まれていました。 |
ダントン | カミーユ |
サン・ジュスト |
クートン |
ロベスピエール自身も二度ほど暗殺の危機に遭ったので、余計他人を疑うようになり、ますます厳しく妥協しない道を歩み出しました。そのように張り詰めた日々はいずれ壊れてしまいます。孤高の人ロベスピエールは、既に「私は生き過ぎた」と洩らし、革命の殉教者になることを願っていました。
ロベスピエールの失脚は、彼自身が願ったものなのかもしれません。
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