許渾秋思詩詞世界　碇豊長の詩詞　漢詩 xuhun

                    　　　
      秋思

      　　　　　　　　　　　許渾

琪樹西風枕簟秋，
楚雲湘水憶同遊。
高歌一曲掩明鏡，
昨日少年今白頭。

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秋思

　
琪樹（きじゅ）の　西風　　枕簟（ちんてん）の秋，
楚雲　湘水　　同遊を　憶（おも）ふ。
高歌　一曲　　明鏡を　掩（おほ）ふ，
昨日の　少年　　今は　白頭。

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◎　私感註釈

※許渾：晩唐の詩人。７９１年（貞元七年）～８５４年（大中八年）？。字は仲晦。丹陽（現・江蘇省丹陽市）の人。陶淵明の時代には曲阿といった。鎭江市のすぐ南。

※秋思：秋の寂しいもの思い。秋の悲しみ。季節の秋と人生の秋との双方の意を兼ねる。

※琪樹西風枕簟秋：玉のように美しい木に秋風（が訪れ）、夏物のまくらとたかむしろなどの寝具も（肌寒くなって、秋が訪れたのが分かるようになった）。　・琪樹：〔きじゅ；qi2shu4○●〕玉のように美しい木。雪をかぶった木のさま。　・西風：秋風。　・枕簟：〔ちん（しん）てん；zhen3dian4●●〕まくらとたかむしろ。夏物の寝具。

※楚雲湘水憶同遊：楚の国の雲に湘江の流れに、昔の仲間を思い起こす。　・楚雲：楚の国の雲。中唐・韋應物の『登樓寄王卿』に「踏閣攀林恨不同，楚雲滄海思無窮。數家砧杵秋山下，一郡荊榛寒雨中。」とあり、中唐・劉長卿の『送李判官之潤州行營』に「萬里辭家事鼓鼙，金陵驛路楚雲西。江春不肯留行客，艸色靑靑送馬蹄。」とある。　・楚：楚の国。長江中流一帯・洞庭湖周辺の地域。　・湘水：湘江。湘江の流れ。湖南省を北流して洞庭湖に注ぐ大河。　・憶：思い起こす。　・同遊：ともに遊んだ人たち。また、一緒に遊ぶ。ともに遊ぶ。中唐・白居易の『夢亡友劉太白同遊彰敬寺』に「三千里外臥江州，十五年前哭老劉。昨夜夢中彰敬寺，死生魂魄暫同遊。」とあり、中唐・張謂の『同王徴君湘中有懷』に「八月洞庭秋，瀟湘水北流。還家萬里夢，爲客五更愁。不用開書帙，偏宜上酒樓。故人京洛滿，何日復同遊。」とある。

※高歌一曲掩明鏡：高らかに一曲歌おうとしたが、鏡に蓋をしてしまった（鏡に映った自分の年老いた姿を見たため）。　*班妤の『擣素賦』を考えなければ、「高らかに歌ったが、鏡に映った自分の姿を見て、歌うのをやめた」になる。・高歌：高らかに声に出して歌う。　・掩：〔えん；yan3●〕おおう。おおいかくす。やむ。　*鏡に映った自分の老けた姿を見ての行動になる。　・明鏡：澄み渡った鏡。くもりのない鏡。元末明初・楊基の『登岳陽樓望君山』に「洞庭無煙晩風定，春水平鋪如練淨。君山一點望中靑，湘女梳頭對明鏡。鏡裏芙蓉夜不收，水光山色兩悠悠。直敎流下春江去，消得巴陵萬古愁。」とあり、盛唐・杜甫の『八月十五夜月』に「滿目飛明鏡，歸心折大刀。轉蓬行地遠，攀桂仰天高。水路疑霜雪，林棲見羽毛。此時瞻白兔，直欲數秋毫。」とある。

※昨日少年今白頭：あの頃の若者は、今は白髪頭の老人となってしまった。　・昨日：きのう。ここでは､過去の意になる｡　・少年：若者。　・白頭：白髪頭の老人。

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◎　構成について

韻式は「AAA」。韻脚は「秋遊頭」で、平水韻下平十一尤。次の平仄は、この作品のもの。

○●○○●●○，（韻）
○○○●●○○。（韻）
○○●●●○○，
●●●○○●○。（韻）