huanying xinshang Ding Fengzhang de zhuye
 
嘲熱客

                        晉・程曉


平生三伏時,
道路無行車。
閉門避暑臥,
出入不相過。
今世褦襶子,
觸熱到人家。
主人聞客來,
顰蹙奈此何。
謂當起行去,
安坐正跘跨。
所説無一急,
沓沓吟何多。
疲瘠向之久,
甫問君極那。
搖扇臂中疼,
流汗正滂沱。
莫謂此小事,
亦是人一瑕。
傳戒諸高朋,
熱行宜見訶。






*******************
               熱客を(あざけ)

平生(へいぜい)  三伏(さんぷく)の時,
道路  行車(かうしゃ) 無し。
門を(とざ)し  暑さを()けて(ぐゎ)し,
出入(しゅつにふ)  ()()ぎらず。
今世(こんせい)の  褦襶子(だいたい し )
熱に()れて  人家に(いた)る。
主人  客の(きた)るを聞き,
顰蹙(ひんしゅく)すれども  (これ)奈何(いかん)せん。
(おも)へらく  (まさ)に 起行( き かう)して()くべしと,
安坐するに  (まさ)跘跨(はん こ )
()く所は  (いつ)に急なること無く,
沓沓(たふたふ)  吟ずること (なん)ぞ多き。
疲瘠( ひ せき)  (これ)()かふこと(ひさ)しく,
(はじ)めて問ふ:「(きみ) (きは)まりし()」と。
(あふぎ)(ゆりうご)かせば  臂中(ひちゅう) (いた)く,
流汗(りうかん)  (まさ)滂沱(ばう だ )
()(なか)れ  ()小事(せう じ )なりと,
()()れ  人の一瑕(いつ か )
(いましめ)(つた)ふ  諸高朋(かうほう)に,
熱行(ねつかう)  (よろ)しく()せらるべし」と。

             ******************





◎ 私感訳註:

※程曉:魏〜晋の詩人、文学者。生没年不詳。字は季明。東郡東阿(現・山東省)の人。魏の黄初年間(221年〜226年)に列侯に封ぜられ、後に黄門侍郎、汝南太守となる。代表詩作に『贈傅休奕』等がある。

※嘲熱客:暑い時期に熱気を押して来る客人を嘲(あざけ)る。 *1981年8月に、カーター前大統領が中国を訪問した際に挨拶の言葉で、詩中の「暑い中、分からず屋がお邪魔して、もうしわけない!」の部分(「今世褦襶子,觸熱到人家。」)を引用し、当時の中国当局者は、すぐには詩の典拠が分からず、「アメリカの中国通は大したものだ」と思わされたと云う。 ・嘲:からかう。軽蔑してわらう。あざける。 ・熱客:〔ねっかく;re4ke4●●〕暑い時期に暑さをおかして訪れてきた客。暑い時期の訪問客。権勢のある人に媚びる俗人。

※平生三伏時:ふだん(夏の最も暑い時期である)三伏(さんぷく)の時には。 ・平生:ふだん。つね日ごろ。 ・三伏:〔さんぷく;san1fu2○●〕夏の最も暑い時期。盛夏。夏至後の第三の庚(かのえ)の日を初伏、第四の庚(かのえ)の日を中伏、立秋後の最初の庚(かのえ)の日を末伏といい、この三つをあわせていう。陰気が起ころうとするが陽気に押さえられて出ることができず、蔵伏しているから伏日という。後世、晩唐・杜荀鶴は『夏日題悟空上人院』で、「
三伏閉門披一衲,兼無松竹蔭房廊。安禪不必須山水,滅得心中火自涼。」と使う。

※道路無行車:(暑さのために、)道を行く車も無い。 ・無行車:(暑気のため、)行き交う車が無い。 *晉・陶潛の『飮酒二十首』其五に「結廬在人境,
而無車馬喧。問君何能爾,心遠地自偏。采菊東籬下,悠然見南山。山氣日夕佳,飛鳥相與還。此中有眞意,欲辨已忘言。」とある。

※閉門避暑臥:暑さを避けるため、門を閉ざして横になって寝ころんでおり。 ・避暑:暑さを避ける。 ・臥:ふす。横になって寝る。

※出入不相過:(家から)出ていったり、(家に)入ってくるということは、どちらもしない。 ・出入:ここでは、(家から)出ることと(家に)入ることと。 ・不相過:どちらも通り過ぎない。

※今世褦襶子:当世のわからず屋は。 ・今世:今の世(よ)。当世。 ・褦襶子:〔だいたいし;nai4dai4zi0●●●〕わからず屋。暑い日に盛装して、青絹を張った夏の日傘をさして、人を訪問する者。ものの事情に通じないうかつな人を嘲(あざけ)る言葉。 ・褦襶:〔だいたい;nai4dai4●●〕ものの道理がわからない。本来の意は、青絹を張った夏の日傘。

※触熱到人家:暑さを侵して、他人の家にやってくる。 ・触熱:暑さを侵しての意。 ・触:犯す。衝く。ふれる。 ・人家:他人の家。よその家。

※主人聞客来:主人(=作者)は「客が来られた」という(使用人の報告を)聞き。 ・主人:ここでは、作者のこと。

※顰蹙奈此何:眉をしかめながら、これ(=来客という事態の発生)をどうしようかと。 ・顰蹙:〔ひんしゅく;pin2ci4○●〕眉をしかめる。うれえてたのしまないさま。 ・奈…何:どうしよう。いかん。=奈何。 ・奈此何:これをどうしようか。 *「
奈何」の間に代詞の「」(これ)が入って、「」となる。上代漢語語法の疑問文の用法。秦末漢初・項羽の『垓下歌』に「力拔山兮氣蓋世,時不利兮騅不逝。騅不逝兮可奈何,虞兮虞兮。」とある。後世、南宋・楊萬里は『送コ輪行者』で「瀝血抄經奈若何,十年依舊一頭陀。袈裟未著愁多事,著了袈裟事更多。」と使う。 ・此:これ。この。ここでは、「来客という事態の発生」を指す。

※謂当起行去:(主人=作者は)起き上がって、(きちんと応接に)行かなければと思う(が)。 ・謂:思う。考える。考えるところでは。おもえらく。 ・当:あたる。応じる。その時にある。まさに…べし。 ・起行:発(た)つ。出発する。 ・去:さる。行く。

※安坐正跘跨:(それに反して、客は)気楽に坐っていて、ちょうど、(膝を崩して、楽な)あぐら坐り(になっている)。 *「安坐正跘
」では、「跨」が韻脚(「車過家何多那沱瑕訶」で、平水韻下平五歌(多過何沱那訶)、下平六麻(車家瑕))となり平声であるが、「跨」は去声(去声二十二禡(跨))であり、押韻するには苦しいものがある。その点、「安坐正恣」は問題がない(平水韻下平六麻(嗟))。 ・安坐:落ち着いてすわる。気楽に座る。静かに座る。何もしないでいる。 ・正:ちょうど。 ・跘跨:〔はんこ(くゎ);ban4ku4●●〕膝を開いて坐る。当時の坐り方。我が国(=日本)のあぐらをかいて坐るようなものか。 ・跘:〔まん(はん、ばん);pan2、man2○〕よろめく。ふらふら歩くさま。 ・跨:〔こ(くゎ);kwa4●〕(足を張って)またぐ。またがる。両足を大きく踏ん張る。

※所説無一急:(客の)言うところのことは、一つとして急ぐ事柄ではなくて。 ・所説:言うところのこと。「所-」は動詞の前に置き、動詞の名詞化をする。 ・無一-:一つとして…はない。みな…である。 ・急:いそぐ。

※沓沓吟何多:べちゃくちゃとよくしゃべることの、何と多いことか。 ・沓沓:〔たふたふ;ta4ta4●●〕べちゃくちゃよくしゃべる。ことば数の多いさま。しゃべりまくるさま。心のたるんでいるさま。 ・吟:うめく。なげく。うたう。吟じる。鳴く。(平声)。うそぶく。(去声)。 ・何多:何と多いことか。 ・何:何と。感嘆を表す。

※疲瘠向之久:やせ細った姿(=主人・作者の姿)で客人に向かうことが長く及び。/つかれうんで、客人に向かうことが長く及び。 ・疲瘠:〔ひせき;pi2ji2○●〕やせていること。やせ細(った姿)。作者の姿である。「疲倦」では、「つかれていやになる。つかれうむ。 ・向:むかう。動詞。 ・之:これ。客人を指す。 ・久:長い。ひさしい。

※甫問君極那:(主人・作者が)やっと、「あなた(の言いたいこと)は終わりましたか」と問いかけた。 ・甫:〔ふ(ほ);fu3●〕はじめて。やっと。 ・極:きわまる。尽きる。終わる。 ・那:…か。疑問文の文末につけて、語勢を助ける助字。

※揺扇臂中疼:(主人・作者は)団扇(うちわ)で扇(あお)いでいる二の腕がうずきいたみ。 ・揺扇:団扇(うちわ)で扇(あお)ぐ。 ・臂:〔ひ;bi4●〕ひじ。にのうで。 ・疼:うずく。いたむ。ひどくいたむ。

※流汗正滂沱:流れる汗が、まことに大雨か涙のように盛んにこぼれている。 ・流汗:流れる汗。また、汗を流す。ここは、前者の意。 ・正:ほんとうに。まさに。 ・滂沱:〔ばうだ;pang1tuo2○○〕涙の盛んにこぼれるさま。大雨が降るさま。

※莫謂此小事:これを些細(ささい)な事柄といいなさるな。 ・莫-:…なかれ。禁止の表現。 ・謂:いう。 ・小事:些細(ささい)な事柄。

※亦是人一瑕:(これ)もまた、人の一つのあやまちである。 ・亦是:(これ)もまた…である。 ・瑕:〔か;xia2○〕きず。玉の傷。あやまち。罪。

※伝戒諸高朋:いましめを立派な友人がたに伝えよう。 ・戒:いましめ。 ・諸高朋:立派な友人のみなさまがた。「高-」は敬意を表す接頭語。立派な…。けだかい…。

※熱行宜見訶:暑い時期の訪問は、とがめられて、もっともなことであると。 ・熱行:暑い時期の外出・訪問。 ・宜:〔ぎ;yi2○〕…したほうがよい。…するのがよろしい。適当である。もっともである。むべなり。 ・見:…られる。受身の表現。 ・訶:〔か;he2○〕しかる。大声でどなる。責める。とがめる。いかる。




◎ 構成について

韻式は「AAAAAAAAAA」。韻脚は「車過家何跨多那沱瑕訶」で、平水韻下平五歌(多過何沱那訶)、六麻(車家瑕)。去声二十二禡(跨)。次の平仄はこの作品のもの。

○○○●○,
●●○○○。(韻)
●○●●●,
●●●○◎。(韻)
○●●●●,
●●●○○。(韻)
●○●●○,
○●●●○。(韻)
●◎●○●,
○●●●○。(韻)
●●○●●,
●●○○○。(韻)
○●●○●,
●●○●◎。(韻)
○●●○○,
○●●○○。(韻)
●●●●●,
●●○●○。(韻)
○●○○○,
●○○●○。(韻)

2013.8.10
     8.11
     8.12
     8.13
     8.14
     8.16完
     9. 8補
     9.12
    11. 4
七忘斎補



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