題豐社 | ||
松永尺五 |
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豐國尋來春色加, 廟前依舊著櫻花。 頽垣壓草苔埋徑, 鶯曲如悲助怨嗟。 |
豐國 尋 ね來 れば春色 加 はり,
廟前 舊 に依 りて櫻花 を著 く。
頽垣 草を壓 して苔 徑 を埋 め,
鶯曲 悲みて怨嗟 を助 くるが如し。
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◎ 私感註釈
※松永尺五:江戸前期の儒者。文禄元年(1592年)〜明暦三年(1657年)。京都の人。名は昌三。字は遐年。松永貞徳の子。松永久秀は曽祖父。藤原惺窩の高弟で、窩門四天王の一人。禄仕せずに京都に講習堂を開き、門下から木下順庵・貝原益軒らを出した。
※題豊社:豊国神社を詩題にして。 ・題-:…を詩題にしてを詩を作る。 *作者は桃山時代・豊臣秀吉の時代に生まれ、江戸時代になってこの詩を作った。 ・豊社:豊国神社のこと。現・京都市東山区茶屋町にある神社で、豊臣秀吉を祀(まつ)る。慶長四年(1599年)に創建されたが、豊臣家滅亡とともに徳川家の命により廃絶となり、後に明治天皇の勅命により再興された神社。
※豊国尋来春色加:豊国神社に、春の景色を尋ねてくれば、一段の春で。 ・豊国:豊国神社のこと。 ・春色:春の景色。春の気配。
※廟前依旧著桜花:(自然の景観では、)御霊屋(みたまや)の前には、相変わらず、桜の花が咲いている。 ・廟:貴人を祀った御霊屋(みたまや)。祠(ほこら)や社(やしろ)。 ・依旧:むかしながら。相変わらず。元どおりに。 ・著:つける。
※頽垣圧草苔埋径:(人工の施設や設備では、)くずれた垣(かき)は、草をおしつぶして、小道は苔に埋もれている。 ・頽垣:くずれた垣(かき)。 ・径:こみち。
※鶯曲如悲助怨嗟:ウグイスのさえずりは、うらみなげく気持ちを助長させる(ように)悲しげに鳴いているかのようである。 ・鶯曲:ウグイスのさえずり。 ・怨嗟:〔ゑんさ;◎○yuan4jie1(jue1)〕うらみなげく。 ・如:ようだ。ごとし。「如」は「悲助怨嗟」にかかるが、読み下し文ではそれを充分にあらわせない。 なお、国語(日本語)の「ごとし」について: 「如+名詞」は(〔普通名詞〕の+ごとし)と読み、「如+動詞」は(〔動詞〕が+ごとし)と読む。もし、原文が「如龍」(ru2long2)とあれば、「竜の如し。」(終止形)と読む。連用形が相応しい場合は「竜の如く…」となる。なお、「如+動詞」の場合で、原文が「如流」(ru2liu2)とあれば、「流るるが如し。」(終止形)と読む。連用形にする必要がある場合には「流るるが如く…」とする。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「加花嗟」で、平水韻下平六麻。この作品の平仄は、次の通り。
○●○○○●○,(韻)
●○○●●○○。(韻)
●○●●○○●,
○●○○●●○。(韻)
平成29.12.28 12.29 12.30 |
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