詩詞世界　碇豊長の漢詩　燦爛陽光之歌　文化大革命期の詩歌白毛女北風吹

革命現代芭蕾舞劇
　　　　　　　　　　白毛女

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
『北風吹』

北風那個吹，
雪花那個飄，
雪花那個飄飄，
年來到。
風卷那個雪花在門那個外，
風打着門來門自開。
我快回家。
歡歡喜喜過個年，
歡歡喜喜過個年。

　
******

　　　　　　　　　　　　　　　　　白毛女　　北風が吹いて

北風が　あんなにも吹き，
雪が　あんなにも舞い，
雪が　あんなにも飄飄としている，
新年が　來た。
風は　あのように雪を巻いて，　門のあの外では，
風は　門に打ちつけ続け、　門は　ひとりでに開いたりしている。
わたしは　待ち望んでいる　　お父さんが　はやく家に帰って，
歡（たの）しく　年を越しょうと，
歡しく　年を越しょうと。

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◎　私感註釈：

※革命現代芭蕾舞劇：革命的現代バレエ。文革の初期、中国で入手したレコード『白毛女』上海市舞蹈學校演出（中国唱片社）に附いている解説書（上掲写真）では、「革命現代様板戯」（革命現代模範劇）　「八場芭蕾舞劇」となっている。余計なことですが、わたしは政治的には無色です。念のため…。　・芭蕾舞：バレエ。

※白毛女：「白い髪になった女性」の意。貧農の楊白勞の娘である喜兒の地主との階級闘争の物語。詳しくはこちら

。この唱のある第一場は大晦日の場面。金策に奔走する父・楊白勞の帰宅を待ちわびる娘の喜兒（後の“白毛女”）の歌。

※北風吹：『北風の歌』。本来はこの題は無かった。元々ここは「『白毛女』の第一場（楊白勞家）の唱詞」という位置づけになる。かつてはNHKの『中国語講座』の主題曲だった。（確認すると、現在もだった。）似た雰囲気に中唐の張仲素の『塞下曲』「朔雪飄飄開雁門，平沙歴亂捲蓬根。功名恥計擒生數，直斬樓蘭報國恩。」

がある。

※北風那個吹：北風があんなにも吹いて。　*「那個」は、動詞、形容詞の前に用いて誇張を表す。あんなにも。また、歌の調子をとる働きもしている。竹枝詞

の「竹枝」「女兒」や『詩経』『楚辞』

の「兮」また、「而」のように。　・ここは「北風（那個）吹」の意の誇張。

※雪花那個飄：雪のつぶが（風に）あんなにも空から舞い落ちてきて。　・雪花：雪。雪片。　・飄：（軽いものが）空から舞い落ちる。　*「雪花（那個）飄飄」と繰り返す。ここは「雪花（那個）飄，雪花（那個）飄飄」の意の誇張。

※年來到：新年がやって来た。　・年：新年。　・來到：来る。来た。

※風卷那個雪花：風があのように雪を巻き込んで。　・ここは「雪花」の誇張の意はないが、前の句とともに「那個」でリズムを取っている。

※在門那個外：門の外で。やはり、前の句とともに「那個」でリズムを取っており、ここは「在門外」の意。

※風打着門來門自開：風が門に打ち付けてきて、門が勝手に開いたりしている。　・打着：打ち付けている。　*「着」は動詞の後に附いて、継続、進行を表す。…している。…しつつある。「著」のこと。

※我

快回家：お父さんがはやく家に帰ってくるのを待ち望んでいる。お父さんがはやく家に帰って来て、（楽しく大晦日を送り）たい。　・

：待ち望む。　・

：お父さん。　・快：はやく。　・回家：家に帰る。帰宅する。

※歡歡喜喜過個年：楽しく喜んで新年を迎えよう。　・歡歡喜喜：喜んで。　*形容詞「歡喜」のAABB型の副詞的用法。　・過個年：年を越す。新年を迎える。「過年」に「個」が附き、具体性を帯びさせる。〔動詞〕＋〔個〕＋〔補語〕と、動詞と補語の間に置く。補語を導く「得」に近い働きをする。

◎　構成について：

　　自由詩。韻脚は「飄到　　外開　　年年」。現代語韻〔-ao〕〔-ai〕〔-ian〕韻。平水韻では、多くの声調に分かれており一言に表し難い。平仄には、顧慮していない。この作品の平仄は次の通り。

●○●●○，
●○●●○，（韻）
●○●●○○，（韻）
○○●。（韻）
○●●●●○，　●○●●●，（韻）
○●●○○○●○。（韻）
●●○○●○○，（韻）
○○●●●●○，（韻）
○○●●●●○。（韻）
　　　　　　　　　　　　

２００４．２．　４
　　　　　２．　５
　　　　　２．　６完
２００７．４．１０補