日中戦争:昭和の陸軍は、暴走官僚の悪しき見本。その、ねじくれた独善の中に巻き込まれ、徴兵された壮丁たちも、その土壌の世論も、おかしなふうにねじくれて、これをリセットするには、アメリカの手を借りて、国土を灰じんに帰さなきゃならなかった。それでもなお、いまだにそのなごりはたくさん。陸軍だけにかぎらずね。
ただ、徴兵制が悪いことかといえば、韓国やイタリア(近々廃止・・・)なんかはうまくやってるみたいなので、ようは、ムリ、ごまかしのないシステムでやってけるかどうかであって、ナアナアな日本人にはそんな器用なことは無理なので、日本にはむいてない制度なのかな・・・クソエリート官僚に〔ゴーマンにも)人件費タダだと思われちゃメーワクだし。
アイテム |
出版社 |
内容 |
兵隊やくざ〔正・続) |
有馬頼義/光人社 |
「軍隊で物をいうのは、階級よりメンコの数」。
古参兵の主人公が、入営してきた無法者とともに痛快に暴れるシリーズ。とにかくおもしろい。
「こんなに本を読んで、どうするんです?」
「さあな、人間が憶病になったよ」
勝新太郎の顔がうかんでしまうくらいはまってます。
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呉淞クリーク/野戦病院
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日比野士朗/中公文庫 |
「呉淞」は「うーすん」と読むらしい。
第二次上海事変に投入された百一師団の加納部隊---歩兵第157連隊の一伍長から見た兵隊達のウースンクリーク渡河作戦。
戦前の発表なのに部隊名とか指揮官名とか伏せ字にされなかったみたい。ドイツ人の指導によって構築されたらしい中国軍の陣地は堅いです。強力だったというべきです。弾の雨降る中でたぶん大隊長らしい「宇野部隊長」は「前進だ、前進するんだ」しかいいません。それでいいのかな?
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土と兵隊/麦と兵隊 |
火野葦平/新潮文庫 |
「土と兵隊」は、当時現役下士官だった著者がその体験をつづった杭州湾敵前上陸作戦従軍記。
「麦と兵隊」は、その後従軍記者として徐州作戦に参加したときの体験記。突出しすぎて逆に包囲され、緊張下にすごす一夜、ようやく救出されたときの「お父さん、お母さん、生きていました。生きました」という感動的なフレーズは、実体験したもののみが語ることのできる魂の声です。
この記が元で、「徐州、徐州と人馬は進む、徐州いよいかすみよいか・・・」の歌謡曲が生まれました。
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飛燕対グラマン |
田形竹尾/ 今日の話題社 |
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僕の昭和史(1) |
安岡章太郎/講談社文庫 |
昭和の子供だった著者の回想エッセイ。このひとの書くこと、ぼくはハナについて好きでないんだけれど、兵隊にとられて、(いやいやだけど)けれどちゃんとつとめあげたところは尊敬します。で、この本の中に出てくる戦友たちのエピソードが優しくて好き。 |
生きている兵隊 |
石川達三/中公文庫 |
南京攻略を目指す一個分隊の兵士たちの心理を描いた小説作品。目に付いた現地民間人を、虫の居所が悪いというだけで刺し殺したりする描写が戦後残虐日本軍の戦争犯罪の証拠として利用されたようです。じつのところ、どうなんでしょう・・・住民を並べて機関銃で・・・等というナンセンスな描写(重機関銃での皆殺しはかなりの数の銃をそろえなければ不可能で、そもそも弾薬が不足してその後の作戦に支障が出ます。十一年式軽機では、能力的に不可能。オラドゥールでドイツ軍がやったように、ひとつの建物に押し込めて火をつけるとかじゃないと・・・それでも全員はムリでした・・・映画みたいにうまくはゆきません。)はないだけに、妙なリアリティがあります。
兵隊たちの心理描写は、なにか、納得させられる凄みをもっています。発表が戦中だったので、当時の検閲による伏せ字部分がわかるようになっているのが資料的に○。
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坂井三郎空戦記録 |
坂井三郎/講談社/講談社α文庫 |
世界的に有名な「大空のサムライ」のひな形になった坂井三郎氏の処女(?)作品。内容はかなり「サムライ」とかぶります。前半は、中国での九六戦や零戦11型に乗っての空戦記。 |
大空のサムライ |
坂井三郎/講談社/光人社/講談社文庫 |
上記の作品をブラシアップしました。
ガダルカナル上空での負傷からの生還シーンを冒頭にもってくる秀逸な構成は、読む人をはじめから氏の語る回想の虜にしてしまいます。
こういった面でも、戦術家としての氏の優秀さがわかります。
で、前半は、中国での九六戦や零戦一一型に乗っての空戦記。
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零戦の運命(上) |
坂井三郎/
講談社α文庫
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海軍の兵隊さんたちの生活に触れていて、興味深い部分があります。航空隊のみでなく、ふつうの水兵さんにも触れています。戦艦「霧島」についてもとっても興味深いことが書いてあったり。
海軍は怖いところです。
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日本撃墜王 |
赤松 貞明/土曜通信社・今日の教養文庫・太平洋戦争実戦記(1)「日本撃墜王」所収
/今日の話題社・太平洋戦争ドキュメンタリー(1)「トラ トラ トラ われ奇襲に成功せり〜」所収
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自称撃墜数350機を誇り、初陣ですでに飛行時間が3000時間超という海軍の超ベテラン戦闘機乗りが語る空中戦。
伝記ではアル中とかおっさんとか性格破たん者みたいに書かれがちな赤松氏ですが、文章をみるかぎり論理的思考のできる頭のいい人のようです。ケンカは嫌いと言ってるし・・・
単騎巴戦に執着するわが海軍にとって中国空軍は手ごわかったと書いてあります。氏の基本はあくまで一撃離脱で、敵を抑えつけて上で回れといっていたり、深追い禁止とか、空戦のモットーはあくまでその他生き残れたエース達と同じく安全第一なものであったようです。
日中戦争では南郷少佐の人柄についてほめています。
岡村基春氏ともめて、海軍やめかけたなどというエピソードもあって、おもしろい。
ひねりこみについての解説をしていて、これは「零戦の秘術」(加藤寛一郎・講談社α文庫)で坂井三郎氏が解説し加藤氏が解析されている事とほとんど同じで、かなりわかりやすい。加藤氏はこの本は読まれたのでしょうか・・・
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帝国ホテル厨房物語 |
村上信夫/日経ビジネス人文庫 |
波乱万丈のフルコースを生きた偉大なシェフの自伝。
十歳で両親を亡くし、小僧さんからニコニコと働き続けて上を見て、名門帝国ホテルの厨房に入り陰ひなたなく努力してようやく認められたと思ったら軍隊へ。でも軍隊でもニコニコと惜しまずいじけず前向きに全力で努力するのでした。自ら志願して一線の歩兵砲手として。中国戦線でのめずらしいエピソードがいっぱい。
この人は努力家で健康で魅力的で、そういう意味で天才ですね。ちゃんとハメ外して遊ぶことも知ってるし。尊敬できる素晴らしい本です。
料理人に限らず、鍛練と研鑽で研ぎ澄まされた、宝石のような数々の才能も、官僚の面子のための一銭五厘の戦争の消耗財としてあっけなくすりつぶされてしまうということは、やはり昭和の国家の罪であると思った。
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わたしの中の日本軍 |
山本七平/文春文庫 |
戦争中新聞に載った「百人斬り」報道で、自ら新聞記者に吹いたホラが元でやってもいない百人斬りをやったことにされて戦犯として処刑されてしまった砲兵隊副官の「ホラ」を論証するために自らの軍隊経験を回顧する本。兵隊心理や、日本人の嗜好などを鋭くつかんでいると思います。
日本刀については、津本陽の書いたものを読めばわかるように、刀身を痛めずに何人も斬ることのできる達人は日本にもそうはいません。江戸時代にもいなかったはずです。往時の剣豪はいちんちじゅう木剣を振る暇があったけど、陸軍軍人は官僚なので、そんな暇ありません。
筆者はさらに、内輪から見た日本陸軍の殺人能力の限界についても触れ、マスコミが南京大虐殺について発表するような殺人ノルマを達成する能力は、日本陸軍にはなかったと主張します。
ぼくも、その意見に賛成です。南京での一般市民虐殺はあったことはたしかでしょうが、マスコミの言うだけの数を殺戮したら弾丸不足に陥って以後の作戦はできなくなっていたでしょう。日本はとてつもなく貧乏だったのです。でも、無抵抗の市民を一人殺しても虐殺にはかわりありません。
ところで、筆者は砲兵だったので、砲兵の内務についてかなりくわしく書いてくれています。大量発砲後の砲腔内はローレットから落ちた銅で銅メッキしたみたいだとか、モデリングの参考になるかも。
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ある異常体験者の偏見 |
山本七平/文春文庫 |
戦争が終わり、反省をしたはずなのに、相変わらず(ベクトルが変わっただけで)なにかおかしい日本人の思考と行動と「行き方」を、考察。
戦後も戦中と同じく、じぶんでは信じてもいない金科玉条を盾に、トリックを混ぜて自己の言い条を押し通す人々が言論界で主導権をとり続けていることに危機感を持ち、自己の体験を例に色々と興味深い話を展開します。
雑誌に連載されたものなので、途中反論者からの手紙などが来たものを取り上げ、これをまた反論する形で考察の材料に使ったりしていますが、山本氏の方が一枚上手のようで、最後のほうでは反論者の反論は主軸と関係のない瑣末の方に流れていってしまっています。この新井氏の反論の流れ方にも、やはり上述のトリックを感じるのはぼくだけでしょうか?
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予科練の空 |
本間猛/光人社文庫 |
巻末に横須賀時代の予科練の様子。クラスメートの想い出。 |