戦記のお部屋(第十一分室)

本土防空、フィリピン、硫黄島まで。

 

本土防空:くうしゅ〜!なんぞお〜そるべき〜!という勇ましい歌詞の戦時歌謡がありました・・国民の中には、不安の思いもちらほら・・・

あヽ疾風戦闘隊 新藤常右衛門 /光人社文庫
本土防空戦 渡辺洋二/ソノラマ戦記文庫
本土防空戦 渡辺洋二/講談社文庫
昭和二十年一月十九日 津本陽/「危地に生きる姿勢」所収/講談社文庫 津本氏は川崎航空機の明石工場で勤労学徒として飛行機を作らされていたそうで、題名の日に体験した通常爆弾による明石工場大空襲で見聞きしたことを淡々と綴られています。この恐ろしい体験を他人事のように淡々と綴られているのは、空襲のショックでたぶん本当に淡々と見るだけの視覚機械のようになっていたからで、それを裏付ける結末に今度は読者である我々が衝撃を受けるのです。リアルさにせつなくなるのです。

子供がこんな思いをするのは本当にせつない。

内心でもうこの戦争に勝てないと思っている荒んだ徴用工の心理を子供と思えない鋭さで捉えて興味深い。工場内に暴力組織ができていて、それが放置されている、という事態をみれば、もう陸軍機は官指定のチャートに厳密にしたがって塗られていたなどという意見はたわごとにしか聞こえません。きっとテキトーな在庫でテキトーに塗ってあったんだろな。

明石では十九年暮れから飛燕も作りはじめていたという情報も。

楠の立つ岡 津本陽/幻冬舎文庫 上の作品から時間を置いて、静かに自分の子供時代をふり返った小説。小説として主人公の名を「進吉」にしているものの、ほとんど自伝のように見えます。また、そこに出てくる人々のちょっとしたしぐさや言葉が津本氏の作品のあちこちに顔を出す懐かしいそれであってファンにはたまりません。家族に愛された幸せさと、進吉少年の幼い感性がたのしい。

和歌山中学の生徒が川崎航空機明石工場で働かされる様子が綴られますが、この能率の悪さは、まあ、戦争負けるワナ。

「日本には、しっかりひた大臣いてへんのかえ。ほんまに国民をこんな目ぇ遭わひて、どんな申し訳たてるつもりよ」

という進吉のおばあちゃんの言葉は今の日本の大臣とかにも聞いていただきたい。

 

台湾沖:この時期の戦時歌謡はかっこいいものが多いです。たまに歌う。

レイテ・ミンダナオ:戦前、フィリピンの「王様」だったマッカーサー。エゴむき出しで帰ってきました。ちなみに、オレはマッカーサー大嫌い。

予科練の空 本間猛/光人社文庫 飛行機の無くなった飛行艇から水偵に転属になって利根に乗ってレイテへ。黛艦長が出てきます。

戦う前に潜水艦にやられる大巡3隻の披雷の様子が描かれています。「司令部は、またなんで「愛宕」を旗艦にしたのだろう?」という疑問と、「聞くところによると」以下の理由を読むと、「敵前反転」の理由も同じなのかな〜とか思ったり・・・

初日に射出されてサンホセへ。その直前に三式弾の発射の様子が描かれています。

空から見た、沈む直前の筑摩と武蔵の描写と、艦隊反転後の意気あがらない基地の様子。呉に戻って大和を下りる宇垣纒の様子。

動けなくなった艦隊から、彩雲へ。

なぐりこみ艦隊 木俣滋郎/ソノラマ戦記文庫 レイテのついでにルソン南のミンドロ島もとっちゃえということで上陸した米軍をはるばるカムラン湾から出撃して襲撃した第二水雷戦隊。出てくるフネは足柄、大淀、霞、清霜、朝霜、杉、榧(かや・・・読めなかった、恥・・・)、樫の8隻。水上打撃戦もなく、地味な作戦ですが、前半はそれにいたるまでの数々のエピソード。瑞雲の活躍も出てきます。

レイテ海戦の失態の後とは思えない士気の高さです。

この本の主人公、キスカでも有名な木村昌福(まさとみ)少将は、日本軍には珍しく、度胸があって幾多の修羅場をくぐっていて、仲間を見捨てない将軍で、尊敬してます。ぼくが日本軍で唯一好きといえる人かも。海軍きらいなんだけど・・・ミッドウエーでは沈んだ三隈の救助に鈴谷単艦で引き返したという伝説も。その際のまっさきに逃げちゃった第七戦隊司令官がレイテでも逃げちゃったあの人というのには因縁を感じますが。

著者は存命中の木村氏に取材している点も貴重。

空母瑞鶴 神野正美/ソノラマ戦記文庫 瑞鶴の闘いを日米両方の記録を突き合わせつつ書き留めたすばらしいレポート。海軍の経験したほとんどの海戦を生き抜いた「幸運な」瑞鶴にも最後の時が。

大淀に旗艦を移す小沢司令部のカッターに向けて「お前らだけ逃げるのか!」という瑞鶴からの罵声には、従来の海軍のロマン的な調子の戦記には見ることのできない(全てがこうではないでしょうが)きれい事で済まない戦争と人間の本音のようなものが見えて、衝撃的です。勇気のある記録といえます。

この本は、瑞鶴だけではなく、他のふねについても誠実に記録しています。

司令部と大淀はさっと溺者を置いて帰ってしまったのですが、若月と初月は残って救助を開始。(これは他の帝国海軍物には珍しい美しい行為です)若月を逃がすために自ら殿となり、追っ手の追撃を食い止めつつ沈んでいった初月には涙。このあたりの文章は、非常に感動的です。救われる気持ちがします。沈んだ初月の生存者は・・・!

レイテ沖海戦 半藤一利/PHP文庫 「巻き込まれた」海軍士官の若者たちから見たレイテ沖。かなり海軍のえらい人の行動に同情的。
戦艦武蔵のさいご 渡辺清/フォア文庫 25ミリ機銃手の体験した戦艦武蔵の最後。

総ルビ付きの子供向けの本なのに、ものすごく強烈な描写で、子供の頃恐ろしい思いをして読みました。

でも、彼らより年くってしまった今読むと、とてもかなしい。

「きょう一日の戦闘で、自分がすっかりふけこんでしまったような気がする。なにもかも、どうでもよくなって、心はくらく、ささくれだってしまった。」

このただ淡々と語ってゆくという手段であらわされた静かな怒りは、だれに向けられるべきなのか。読んだ子供さんには、わかるのでしょうか・・

見ていないはずの艦橋の様子などが挿入されていますけれど、これは戦後に取材したのでしょう。子供に戦闘の経過を理解させるためには必要な挿入だと思います。(ぼくは当時、わかってなかったけど・・・)

この本は色彩情報も豊かです。〔それが描写の強烈さを更に強めているのです〕黒いとの粉を塗ったデッキ、最後にむき出しになる艦底の「にんじん色」・・・カキがらのついた・・・旗竿にしがみついて泣き叫ぶ少年水兵・・・

・・・悲しすぎ。

巻末の早乙女勝元氏の情緒的かつ誘導的なエッセイは邪魔なだけ。何も生み出さない。「悪いのは軍部と金持ち」という、ある水兵の言葉だけをまるでそれだけで著者の言葉すべてであるかのように引用して・・・子供にそう吹き込んで・・・悪いのは全部一部の人間で、私たちは被害者という・・・軍部や金持ちにに提灯ふってたのはあんたの親達(世論)なんだぜ!どうしてこう、問題をもっと深いとこからもちかけられないのかね?教材としての企画だろうに。

ところで、ビスマルクやプリンスオブウエールズ、そしてこの武蔵と、意外にもろい部分があって、運悪くそこに魚雷が当たって、致命傷になっていますね。21本の魚雷をうけてもなかなか沈まなかったとはいえ、最初の被弾で射撃指揮が完全に不能になるのは、砲戦しかできない戦艦としては、「おれたちのフネは、どこかひどくおかしいぞ・・」っていうかんじです。

戦艦武蔵の最期 渡辺清/朝日選書 上記の原作ともいえる内容。「仲間たちのいのちが、いかに理不尽に奪い去られていったかを書かなければならない」という気持ちで記録された怒りの書であります。後書きにその気持ちがつづられていて、やはり、この人もまた、地獄を見て、誰かにリアルに伝えたかったのだなあと。無駄にしたくなかったのだろうと。

上記の本にないディティールがこれまた視覚的あるいは心理的に鮮明に追加されています。凄惨でない部分では、出撃前のペンキ塗り(濃いグレイだがぴかぴかだったので目立った・・・白く塗ったわけではないようです)の理由を艦内の可燃物(ペンキの在庫)処理ではないかと思ったというところが、意外にそんな理由だったのかもと思わせてくれたりします。

自分だけ生き残ってしまった罪悪感ということが、この本にかぎらず日本の戦記回想にはよく現れてきますが、この心理は若い我々には理解できないことなのでしょう。できるような環境には追い込まれたくないものです。

空母零戦隊 岩井勉/ソノラマ戦記文庫、文春文庫 今度は空母瑞鶴の戦闘隊となって出陣、でもこの艦隊は知っての通りの案山子です。出撃後、さっそく敵の制空部隊に遭遇して・・・

内地へは陸軍の新重爆(百式?)で帰ることになるのですが、その顛末が興味深いです。

また、「血気盛んな駆逐艦艦長が」追撃してきた敵艦隊につっこんでいってしまったことをちょっと恨めしそうに書いてありますが、これは仲間を道連れにされた著者の立場からは仕方ないことではあるけれど、実際には、血気盛んだったのではなく、他のフネをかばって殿軍した結果なので、ちょっと初月には気の毒な評価です。全部おいてけぼりでとっとと逃げ帰った司令部と大淀のほうがひどいと思う。

最後の零戦 白浜芳次郎/ソノラマ戦記文庫/学研M文庫 マリアナから帰ってきて、第653航空隊として比島へ。

連日の戦闘で飛行機は漸減していきます。

われレイテに死せず 神子清/早川文庫
あヽ疾風戦闘隊 新藤常右衛門 /光人社文庫
レイテ・ミンダナオ戦 御田重宝/徳間文庫
レイテ戦記(上・中・下) 大岡昇平/中公文庫
靴の話 大岡昇平/
九九双軽空戦記 土井勤/光人社文庫 戦争の進展とともに、航空隊の幹部が消耗、不足してきた我が陸軍は、他の兵科からエリートを航空に転科させるということを行ないましたが、これも硬直した年功人事の弊害でしょう。ベテランの下士官を出世させればいいのにねえ。

でも、この本の著者は砲兵から転科したにもかかわらず勉強熱心で、操縦できない戦隊長としては好感がもてます。で、たまに純粋な疑問から隊のベテランの痛いとこを突いたりするのですが、ベテランもさるもの、さらりと言い逃れます。

でも、計器飛行しないから還ってこれないんだって・・・

青春天山雷撃隊 肥田真幸/光人社文庫
大空戦 E・H・シムズ/石川好美/ソノラマ戦記文庫 インタビュー。マッキャンベル
神風、米艦隊撃滅 C・R・カルホーン/妹尾作太男・大西道永/ソノラマ戦記文庫 アメリカの駆逐艦「デューイ」の艦長の回想。レイテ決戦前にハルゼーの部隊は大きな台風に遭遇します。日本海軍以上の損害を与えたという台風に、この船の属する駆逐隊も遭遇し、死ぬ目に合うのです。「デューイ」と同形の船「ハル」、「モナハン」とフレッチャー級の「スペンス」は沈没。「第四艦隊事件」以上の損害です。でも邦題は悪乗りしすぎ・・・
隼のつばさ 宮本郷三/光人社文庫
F/A-18の秘密 オア・ケリー/吉良忍 訳/ソノラマ文庫 カミカゼに対抗するために空母搭載機中の戦闘機の比率を挙げた結果、攻撃機不足になったので戦闘機をそれに当てた結果、海軍の戦闘爆撃機というジャンルが誕生したと書いてあります。へえ〜!20へえ。
太平洋に消えた勝機 佐藤晃/光文社 戦果確認も無しに台湾沖の大戦果を発表し、その後敵が無傷であることに気付いたにもかかわらず、陸軍には戦果の下方修正を連絡しなかった海軍の怠惰を糾弾。そのために35軍の戦略が狂ってしまったと。

敵前逃亡した第4航空軍の富永司令官を叩く声は多いが、捕虜になって、機密書類を抜かれて、生きて帰ってきた福留参謀長にはだれも何も言わないという指摘は、もっともです。

日本はなぜ敗れるのか 山本七平/角川oneテーマ21 陸軍雇員としてネグロス島を逃げ回った体験記「虜人日記」(小松真一 著)を解説することで見えてくる大日本帝国というものの負けるべくして負けた「おかしな」点の数々を解説。非常に興味深い。

小松氏はフィリピンでガソリン添加剤を生産するという話で現地へ行ったらナンにもなかったというお話。言葉の上だけで存在する生産設備だったらしい。「決戦」前の緩みきったフィリピンの日本人達の様子もよくわかります。

「いいか、山本。ここはもう野戦じゃからな。ああいった参謀が無理無態を言いおったら、腹の中で、これ以上何か言いおったらブッタ斬ってやると度胸をきめるこった。死ぬときゃ中尉も少尉もないデ・・・・・」

また、この本は「空気の研究」を理解する参考書にもなります。

鉄の棺 齋藤寛/光人社文庫 伊-56潜水艦の戦い。レイテ海戦の模様が電文としてこの潜水艦にも届きます。

輪形陣を襲撃してヘッジホッグで返り討ちにあいます。そのうち一発が不発で艦橋に引っかかって持ち帰られたという描写は興味深いです。

本当の潜水艦の戦い方 中村秀樹/光人社文庫 捷一号作戦の我が潜水艦作戦を解説、講評。

我が潜水艦のハードウエア上の対策。

ルソン:レイテとルソンを同時に防衛する持ち駒はない。ルソンへ兵力を集中し、状況を膠着させたいという山下将軍以下出先の判断を、景気のいい後方のいけいけで踏みにじり、レイテでイタズラに消耗させたツケと、占領後まったくいい加減にフィリピンを経営してきたツケが全部跳ね返ってきて・・・フィリピンの将兵は、20年8月まで、地獄をあじわいつづけながらの生をつづけさせられることになるのです。
一下級将校の見た帝国陸軍 山本七平/文春文庫 現地の文化をまるで無視した強引でおろかな占領政策、レイテでの友軍の負けっぷりにパニックを起こし、混乱するルソン防衛計画、すべてがおそまつで、米軍の侵攻を受ける前に、すべては終わってしまっていたということが、現代の出来事と照らし合わされながら回想されます。

馬無しで上陸させられ、前後車あわせて10トン以上ある十五榴を馬無しで臂力搬送する重砲兵、放列布陣が終わるたびの「決心変更」で混乱し、戦う前に放列も段列もちりじりになってゆく103師団砲兵隊。苦労して南部へ移した砲弾は置き去りに、北部へ向かう途中に砲兵隊は不期遭遇戦で戦わずして全滅。

「お荷物」として残された筆者は残った「使えない」砲をもって転進します。しかし、米軍が・・・

人には運命というものがあるのでしょう。「山本少尉」は、終戦まで生き延びることができました。味方にも敵にも殺されることなく。

わたしの中の日本軍 山本七平/文春文庫 伝説と化した日本陸軍の大量殺人能力の幻を証明する過程で、筆者自身の体験したフィリピン戦線を回想。戦後の「誤解」(神話)ヘの憤りの静かなエネルギーはものすごい。

本を読むと氏がただの文句屋でなく、かなり抜け目のない「やとわれ」下級将校だったことがわかります。ガソリンをちょろまかし、艀をちょろまかし、労働力をちょろまかし、とりあえず後方任務を全うします。(そのあとでその一切が無駄になるのですけれど・・・そこがまた日本軍らしく・・・)

ブンドリ品の米軍自走砲が出てきますが、75ミリ砲を積んだハーフトラックのようです。さらに、ガソリンエンジン装備の89式戦車を3台装備した部隊も出てきます。

切れ切れに触れられる米軍上陸後の転進、全てが崩壊したあとのジャングルの中の放浪生活、終戦後の収容所生活の寸描をとおして、氏の見てきた地獄をかいま見ると、ああ、この人はたくましいなとただ感嘆するばかり。

また、所々で触れられる「演劇やマスコミに出る間違った陸軍言葉」への指摘も参考になります。「排除」という用語は英語で言うと「delete」ですが、彼らは敵に対してはすべて「delete them」なので、べつに黄色い人間だから物扱いというわけではないという指摘は、英語のニュアンスを感じるうえの参考になりました。

小野田さんは出てくる前からその筋では有名な人だったらしいということもわかります。

ある異常体験者の偏見 山本七平/文春文庫 ほとんど敗残兵としてジャングルの中で生活したときにみた、「虫」について。視覚的に強烈な描写をしてくれます。虫と言っても、これは回虫のことで、これがつくとみな死んでしまったと・・・
洪思翊中将の処刑

(上・下)

山本七平/ちくま文庫 韓国籍でありながら陸軍中将にまで上り詰め、戦後捕虜虐待の戦犯として処刑されねばならなかった洪思翊中将の伝記。

米軍が攻めてくるまでのサクラ病院収容所の捕虜の様子と、米軍侵攻時にそれら捕虜収容所がどうやって捕虜を敵に引き渡したかの様子が書いてある点が貴重です。

ルソンの谷間
隼のつばさ 宮本郷三/光人社文庫
ルソンの砲弾
ルソン戦記〜ベンゲット道〜(上・下) 高木俊郎/文春文庫
ルソンの挽歌
ルソン決戦
フィリピン敗走記 石長真華/光人社文庫 実体験をもとに書かれた悲しい物語。

著者はまわりにいい人たちを持ったようです。まったく救いが無い話なのですが、ここにわずかに救いがあります。矛盾した言い方だけど。

とくに曹長がかっこいい。戦友の熊川の人となりが好き。

東北の兵隊さんはいい人ばかりですね。

理屈ばっかりのインテリ兵長が鼻につきますが、かれもまた・・・

部隊はたぶん全て仮名です。「突」兵団は「撃」兵団、著者は百五連隊の輜重隊?

真の地獄を見た人は、人に優しくなれるみたいです。

硫黄島:軍歌「愛馬進軍歌」制定の栗林将軍は、この小さな島でできるだけ時間稼ぎをしようと判断しました。ふつう、こういった死地への、「帰ってくんな、死ね」式の人事に会えば、ヤケになって自棄になり、ノイローゼになり、右往左往し、結果自らの死期を早めていってしまうのですが、他の多くの日本軍責任者たちとは違い、粘り強いその姿勢は騎兵出身とは思えません。また、米軍侵攻前に住民を本土に疎開させた功績は悲劇の中の救いです。
硫黄島 リチャード・ニューカム/光人社文庫
硫黄島決戦
米国初代国防長官フォレスタル 村田晃嗣/中公新書 激戦さなかの硫黄島に視察のため降り立ったフォレスタルのみたものは、一面にるいるいと敵味方の戦死体。この光景はいままでビジネス的に戦争をマネージメントしてきた彼の心に衝撃を与え、戦後の反戦的な心理を形づくったのだろうと書いてあります。

彼は戦後、アメリカの官僚のなわばり争いに疲れ、悲劇的な最期を遂げるのですが、元はウォール街の優秀なビジネスマンで、こういったシビリアンを軍のコントロールに使うアメリカという国は、そして、彼のような「シロウト」、でもビジネスのプロが平然と腕を振るって戦争をマネージメントしてしまえるところはやはり日本よりは進んでいると思います。まさに民主主義!ビジネスの国。

太平洋に消えた勝機 佐藤晃/光文社ポケットブックス 硫黄島の陸海軍について触れた章で、栗林将軍が参謀次長に当てたレポートを、防衛庁公刊戦史が故意に削除したという部分も含めて掲載しています。これを読むと、硫黄島を全部栗林将軍に仕切らせていたら、米軍がもっと苦戦したのではないかと、無念な気持ちになります。

この島での戦いにおいて、海軍は足を引っ張ることしかしなかったという意見は、他の本(たとえばアメリカのニューカムの本)を読んでも感じることです。なんというか、「なりふり構わず、じっと耐えて、敵にできるだけたくさんの出血を強い、心理的圧迫を加える」事を考えるのがこの場合のプロの行き方だと思うのですが、「カッコ良く」しか考えてないんだもん硫黄島の海軍サンは。

マ、格下だと思ってる「陸式」に仕切られたくないという「気持ち」もあったんでしょうけどね。タラワの海軍サンとはえらい違いです。

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