戦記のお部屋(第七分室)

ガダルカナル以後、日本軍の勢力圏はみるまにすぼんでゆきます。

「艦隊決戦」とか「航空決戦」とかいって敵の主力艦にばかり目がいっていて、足もとをおろそかにしていたツケが、じわじわとまわってきたのです。

開戦前から輸送船腹の不足は明白だったのに、追い討ちをかけて対潜作戦の機材もお粗末だったので、輸送ラインが散々。島嶼に散らばった陸軍部隊は見殺しにするしかありません。

「陸軍は勝手に輸送船や空母を作った。横暴で、下品で、バカで〜!」みたいな批判を耳にしますが、それもこれも、海軍がだらしなくいけいけでそこらじゅうの島に勝手に前進するから。オーストラリアを占領してくれなどと無責任にいっていたことを思いだしてください。そんな行き方をするなら、なぜ戦前に漸減作戦思想などというドクトリンを持っていたのでしょう・・・

海没した無名の海員たち、さらに陸軍の将兵は、半分は海軍のアンバランスなドクトリンに殺されたようなものです。

 

ラバウル:音に聞こえるラバウル航空隊の活躍は、零戦とともに輝いています。わたしも、歌謡曲「ラバウル海軍航空隊」は大好き。

零戦撃墜王

岩本徹三/

光人社文庫

自称200機以上の撃墜機数を誇る孤高のエース、岩本徹三の痛快な空戦記。

ベテラン下士官搭乗員の腕のさえとプライド。たまにエリート(艦隊航空隊とか)に対してみせる屈折したライバル意識が、たまらなく好きです。

傲慢ともとれるタイトルは本人がつけたわけではありませんでしょうが、自称「虎徹」のかれらしくもあります。西沢廣義や武藤兼義にも生き残って回想を書いてほしかったです。

空母零戦隊 岩井勉/ソノラマ戦史文庫/文春文庫 中国で実戦経験をしたものの、その後練習航空隊で教官勤務などをしていたため、太平洋ではガダルカナル撤退後に空戦デビューします。ビスマルク海の大虐殺から。(この部分には別に大虐殺シーンは出てきません。)
ラバウル空戦記

204海軍航空隊 編/

学研M文庫

ラバウル海軍航空隊 奥宮正武
水木しげるのラバウル戦記 水木しげる/

「ゲゲゲの鬼太郎」の作者の従軍記(陸軍です)。とぼけっぷりがほほ笑ましいです。めげないというか・・・好き。

ラバウルまで乗っていった船がかの日本海海戦の「信濃丸」だったという記述にビックリ。

でも、「歩哨勤務中にのんびり鳥を見てたら兵舎が襲撃にあって自分以外は全滅した」なんて逃げ帰って報告したら、やっぱぶんなぐられると思う。

太平洋に消えた勝機 佐藤晃/光文社 陸軍に較べても異常に少ない海軍兵学校出身の航空科の人員ということをテーマに、敗因を分析。

自称「国の宝」であるエリートの兵学校出身者を温存し、それ以外は「消耗品」扱いであったと怒りをあらわにしています。

海軍は負けるのわかってたからエリートはおみそにしてたということは、じつはぼくもほかで聞いたことがあった。

 

北海:勢いでアリューシャンをとってみたものの、維持できなくなったのは南方といっしょ。でも、こちらではアメちゃんの反攻もあまり大掛かりではなかったので玉砕はアッツ島だけで済みました。といっても、いくらアッツ島血戰勇士顕彰国民歌なんて勇ましい歌を作ってみても、アッツの勇士は浮かばれない気がします。

太平洋海戦 佐藤和正/光人社 日米お互いにヘッピリ腰の遠距離砲戦をだらだらとつづけて、戦果ナシというみっともない海戦「アッツ島沖海戦」を解説。ドイツ海軍の「バレンツ海海戦」並の悔しさを味わえます。
アッツ島玉砕戦 牛島秀彦/光人社文庫 アッツ島への米軍上陸から山崎部隊の最期まで。
海底十一万浬 稲葉通宗 北海では、あまりの低温に鉄も粘り気を失い、軍艦の舷梯が折れたりします。漂流即凍死のきびしい自然の中、しかも霧で視界ゼロの北海で、敵のレーダー射撃に脅かされながらも懸命に任務を遂行します。この人と板倉艦長は本当に運がいいです。
海軍工作兵戦記 木村勢舟/光人社文庫 志願して海軍に入り、工作兵として暮らした人の回想。

キスカ援助を命じられた君川丸の艦内の意気消沈ぶりと、命令解除になったあとのホッとした様子を突き放して描写。

私記キスカ撤退 阿川弘之 キスカ島撤退作戦のために天気予報をする学徒出の士官の話。出身差別の大きな海軍では、(陸軍も同じようなもんですが)気象官などというものは軽く扱われ、天気が晴れないと予報すれば、「お前のせいで晴れんのだ!」などと兵科士官に殴られたとか。スマートネスですな。
本当の潜水艦の戦い方 中村秀樹/光人社文庫 ミッドウエイ・アリューシャン作戦から北海の我が潜水艦作戦を解説、講評。

 

ビルマ航空戦:イギリス極東空軍とアメリカ陸軍航空隊をあいてに、我が陸軍航空隊は寡兵よく闘いました。(あ、ここだけすげえひいき)

あヽ隼戦闘隊 黒江保彦/光人社 独立飛行戦闘第47中隊から64戦隊に移った筆者の大活躍。隼でモスキートをやっつけたのはこの人くらい?
加藤隼戦闘隊の最後 粕谷俊夫/ソノラマ戦記文庫 64戦隊の隊員だった筆者の回想。
栄光加藤隼戦闘隊 安田義人/ソノラマ戦記文庫
蒼空の河(正・続) 穴吹智/光人社

飛行戦闘第五十九戦隊はビルマへ。全身これ闘魂ながら、おさえるとこはおさえるという優秀な操縦士である筆者の緻密な空中での動作の描写は、「大空のサムライ」を意識しているのでしょうか。迫力があって、光景が目に浮かぶようです。

坂井三郎さんにしろ、この人にしろ、凄いハングリー精神があることが、成功者の条件なのかなと思った。

桧与平/光人社

陸士出の青年将校パイロットの回想。もう、尖りまくってます。こうでもしないとベテラン下士官になめられちゃうので、気合は絶対必要だと思いました。

片足を失ってからの鬼気迫るリハビリには胸が熱くなります。

でも、こんなできのいい士官はまれだと思うので、生き残りのベテラン下士官をどんどん昇進させたほうが能率がいいと思った。

 

ニューギニア:ビスマルク海の大虐殺のあとで、大本営はニューギニアを見捨てます。ニューギニアに無責任に送り込まれた17万のうち、帰ってこれたのは20人にひとり。

その、ほとんど全てが餓死。

戦場パプアニューギニア 奥村正二/中公文庫 パプアの人との友好をめざす筆者によるニューギニアの戦場の解説。帰ってこなかった伯父の足跡を追ってニューギニアをまわります。現地の優しい人びとと、歓迎されざるはずなのに養ってもらった日本の兵士たち、パプアを人間扱いしていないオーストラリアの白人など、興味深い内容が、本は薄いわりにいっぱい。むこうの人はヤシの木(サゴヤシ)を食べてるって、はじめて知った。

ヤシに住むでっかいウジ虫を現地人に勧められてしり込みし、「これを食べないからアメリカに負けるんだ」といわれてムキになって食べたらおいしかったという日本兵とパプアとのやりとりのエピソードはほほえましい。でも、食の足りた我々にはおいしくないんでしょうけどね。

東部ニューギニア戦(壊滅編) 御田重宝/講談社文庫 どんどん押しまくられて、飢えながら下がってゆく日本軍。悲惨としかいいようがありません。ほとんどハダカで、豪州軍から分捕った毛布を荒縄でまいただけという格好は、もはや、兵士ではありません。戦犯ということをいうなら、自国の国民をこういう目に合わせたものがその最右翼というべきでしょう。インフラもなしに、ムードだけで自国の若者を他人の庭に送り込むべきではないのです。
秘めたる空戦 松本良男・幾瀬勝利/光人社/光人社文庫

三式戦装備の独立飛行戦闘中隊の一員だった筆者の空戦記。翼内銃を海軍の20ミリにかえちゃったりしてますけど、ほんとでしょうか・・・

空戦シーンは迫力があって、操縦桿をかき回しながらフットバーをけとばすシーンなどはアニメ映画「紅の豚」のモデルになったような気がします。

マンガにもなりましたが、・・・そっちはいまいち・・・

本には未収録ですが、「丸」に、P-47に待ち伏せを仕掛けて急降下攻撃でやっつけるはなしが載ったことがあります。くだんの中隊長の写真も載ってました。

あヽ飛燕戦闘隊 小山進/光人社

少年飛行兵の筆者がキ-61で内地を出発し、ニューギニアについて、空戦の日々を送ります。貴重な68戦隊の記録。

昔出てたモデルアートの特集号にこの方のインタビューがのっていました。

東部ニューギニア戦線 尾川正二/光人社文庫 昭和18年1月にウエワクに上陸した歩兵20師団79連隊の兵士だった著者の回想。

多くの文章に主語がないので「I was」なのか、「we were」なのか、「they were」なのか読み取りに苦労させられますが、東部ニューギニア戦の経過の全体像を体験を交えて俯瞰しています。

敵に火力で圧倒されたものの、この方面の生存者の方々は、一様に「直接撃ちあったわけではないので負けた気がしない」といわれるのは当時の日本の若者の心理を知るうえで興味深いことです。

自分が生きるのだけでも精いっぱいな中に、戦友をいたわる気持ちには、心うたれるものがあり、著者は「生かさせてもらった」と謙遜されていますが、一番弱っていたのでしょうし、なにか回りから愛される部分をおもちだったのでしょう。

終りの方にある帰還者の表は、悲しい気持ちにさせられます。17万人中、16万人が夢や才能を断たれ、(「きけ、わだつみのこえ」のような言葉さえも残すことを許されなかった・・・学生のような、わかりやすいインテリではないだけで、彼らだって立派な日本の若者だったのに。)生き残った人たちも、なんらかの傷を負いました。われわれは、この記録を、教訓として、それこそ同じ過ちを二度と繰り返さないようにしなければなりません。

指揮官は、補給が途絶した時点で、大本営に見捨てられた時点で降伏ということを考えるのが真の勇気だったのではないでしょうか。後世、史家からはあざけりを受けるかもしれませんが、すくなくとも、17万人とその家族からは感謝されます。兵は自分から投降するのはいやだけれど、命令で降伏することには抵抗がないでしょう。是非は出るとこに出て決めればよろしい。

かといって、安達二十三 第十八軍司令官が人間として最低ということでは決してなかったとは思うのですが。悪くいう人はあまりいないし。

我が勲の無きがごと 津本陽/文春文庫

ニューギニア帰りの義理の兄は、穏やかな外見のなかに、ときおり恐ろしく生への執着をみせる人だったが、海を嫌った。「戦友が呼んでるような気がする」。しかし、取り憑かれたかのように、海で事故死する。主人公は義兄の戦地での行動を追いはじめる。義兄の生き抜いた地獄がうかびあがる。

やりきれない小説。暗く、殺伐としたすごみがあるのはこの人の小説の特徴で魅力です。

カウラの突撃ラッパ 中野不二男/文春文庫 1944年8月、オーストラリアの捕虜収容所で起きた日本兵の反乱を追うドキュメンタリー。同事件で死亡した、初期に捕虜になった海軍のパイロットについての調査から、日本兵の捕虜の様子が浮かび上がってきます。

あと一年こらえれば国に帰ることができたのに、なぜあのような自暴自棄に走ったのか・・・別に虐待を受けていたわけでもないのに。断っておきますが、理由は武士道とかではなく、もっとお粗末な、捕虜間でだれが主導権を握るかの腹の探り合いからのホラ吹き誇大妄想を止められなくなっての暴発だったというのです。

言いまくり型の自己顕示欲の強い人間に、内心はいやなのに引っ張られて破滅する日本兵たちの姿は、今の日本にも当てはまる文化のようです。ハワイの民話に、最後にしゃべった人の言う通りになってしまうのに、それがあんまり間違っててあえて直してやることもないと、声に出して異を唱えることをためらったためにひどいことになってしまうというのがあるけれど、この本を読むと、その話は本当の生活の知恵なのだと思いました。

終わりのほうに、「ジャップ、お前らがやったのだ!」とオーストラリアの老人にからまれて言い返せなかったとありますが、当時生まれてもいなかったのにやれるはずもなく、筆者がなぜ負い目に感じるのかまったく疑問です。(まあ、「俺がやったわけじゃねえ!からむのもいい加減にしてくれ!」とか言い返したら殴り合いになるかもしれんけど・・・)

7%の運命 菅野茂/東京経済 68戦隊の整備兵だった人の回想。

北満から内地でのキ六一(この呼び名しかでてきません。)受領、そのあつかいづらさからくる部隊での不安など、貴重な記録です。隊内でも「メッサーシュミットの改良型」と呼んでたらしい。

本の大半は飛行機を失ってからのジャングル生活に費やされているのですが、やさしい戦友、人間としてどうかと思われるような戦友と、いろいろな人たちとともに、パプアに養われて生きてゆきます。パプアというのは本当に性善な人たちなのだなあと巻動作せられます。

高砂族の出征:台湾に昔から住む人々は、太平洋戦争に日本人として誇りをもって尽くしてくれました。日本の高砂族として、こころは日本人より日本人らしく、日本人より正直に。われわれ日本人は彼らに感謝しなければいけません。報いないといけません。

日本を好きでいてくれる人たちの心を裏切ってはいけません。

東部ニューギニア戦 御田重宝/講談社文庫 日本の兵士たちが飢えて、動きもとれなくなったときに高砂族の人たちはそのたくましい生活力でおおいに働きました。この本にもところどころに彼らの頭のさがるような活躍がでてきます。
我が勲の無きがごと 津本陽/文春文庫 「高砂族の人たちは真面目にたくさん働いてみんな死んでしまった」とせつない証言が語られます。
還ってきた台湾人日本兵 河崎眞文春新書 横井さん小野田さんに続いて、遠くモロタイ島で発見・保護された高砂族の兵士の気の毒な運命。日本人よりも生活力のある高砂族の活躍が数多く紹介されています。彼らに命を助けられた日本兵は多い。感動的な本です。

数多くの台湾の方へのインタビューが貴重。彼らにはすばらしい純な心があって、それがいたいほど感じられ、そんな心を裏切って日本を破滅させ、しかも戦後たいして報いることもなかった日本人は恥ずかしい。ぼくも恥ずかしい。台湾の人たちとは仲良くしたいと思うのでした。

ソロモンからの後退:ガダルカナルから日本軍を追い落としたアメリカの反撃がはじまりました。レーダー管制されたヘルキャットやマジックヒューズの登場で、日本航空戦力の対艦攻撃力はがた落ち・・・

太平洋 海戦 佐藤和正/光人社 ソロモンで不期に行なわれた小さな海戦の数々を網羅。米側呼称「ヴィラ・スタンモア夜戦」などは日本側では海戦のうちに入ってなかったりする・・・
青春天山雷撃隊

兵学校出とは思えない、おおらかな人柄を感じさせる戦記。おもに天山にきりかわってからの体験が多いのですが、「たいちょーう、尾翼がとれマース!」などと緊迫感があるはずのシーンも、どこかユーモラスなのは著者の人柄でしょう。大好きな戦記です。

著者は丸メカニック「天山」の座談会の筆記でも、「天山に変わってから、一度も勝ったことがないんですね(笑)」などとなごませてくれる一方、「雷撃の時は、高く飛んだら絶対にやられます」とか、「発艦の時はブレーキを踏んで、尾部が上がるまでエンジンをふかし・・・」等と凄みのあることも言ってます。

ソロモン海敵中突破 種子島洋二/ソノラマ戦記文庫
タラワ ヘンリー・I・ショー/宇都宮直賢 /光人社文庫
英霊の絶叫 船坂弘 /光人社文庫
予科練の空 本間猛/光人社文庫 昭和十八年のマキンの様子と、年末の米軍侵攻の模様を、飛行艇乗りの立場から描写。十七年九月のアメリカの潜水艦による奇襲上陸作戦の次の日の島の様子は貴重かも。

十八年になってから、二式大艇に更新されてのカントン島爆撃行など。余り使い心地がよさそうには書いていないのが興味深いです。偵察部隊なのに、奇襲で乗機が基地で全滅しちゃうのは情けない。

米軍のマキン・タラワの上陸時には、著者はヤルートにいて、乗る飛行機は無しというところはハラハラします。重い腰の連合艦隊は助けに来てくれないという不満が多かった様子も書かれています。「床の間の飾り物でもあるまいし、『大和』、『武蔵』を大事にしまっておくと、そのうちに家がなくなって。飾り物だけ残った、ということになるぞ」そのとおりになりました。

修理した飛行艇と本隊からの救援機でウオッチェからサイパンへ。

本当の潜水艦の戦い方 中村秀樹/光人社文庫 ギルバート作戦の我が潜水艦作戦を解説、講評。
海上護衛戦:日本はたくさんの商船を戦前に一生懸命建造して、ようやく海国日本としての実績を上げはじめ、それでさまざまな産業が食べてゆくはずだったのに、せっかく作った商船やそれで幸せに生活できるはずだった海員たちは太平洋戦争で綺麗にすりつぶされてしまいました。なんの補償もなく・・・

海軍が、油が無くなれば軍艦が動けなくなるから動けるうちに油を確保という意図で始めた太平洋戦争で、その油を運ぶ商船を安全に航海させようというそぶりもみせなかったのはまったくわけがわかりません。(そもそも国民のためでなく軍艦のために戦争を始めるというのがワケわかんないんですが・・・)しかし気がつくとフリー状態のアメリカ潜水艦にいいようにやられて、油は届かない、前線にとどけなければならない陸軍の兵は水際撃破以前に遠洋で撃破されて戦う前にみな戦死という酸鼻の事態になり、慌てて海上護衛総司令部という組織を作りました。しかしもはや制空権もなく、実績は上がりませんでした。

戦争犯罪人という言葉はまず第一に自国民に対しての犯罪という意味で使ってほしい。

海上護衛戦 大井篤/ソノラマ文庫/学研M文庫 スマートネスな海軍のそのお寒い、痛い足元を海上護衛総司令部にいた参謀の歯に衣着せぬ回想。

石油がなくなったら軍艦が動かなくなるから石油があるうちに南方の石油資源を確保したいという意図で始めた太平洋戦争なのに、海軍の関心は連合艦隊についてのみであって、そのハデな作戦に石油を使うばっかりで油送には故意に見えるくらい無関心であったというこの自閉症的燥状態イケイケをみると、彼らエリートがエリートとして選ばれてきた基準になにか大きな欠陥があったのではないのかということが黒野耐氏の「参謀本部と陸軍大学校」の影響もあって思い浮かんでしまいます。

逆に、我々が大味で下品でバカだと思っているアメリカ人のエリートは非常に着実に地道に日本の弱点を洗い出し、当然のようにそこを突いてきたわけで、このあたりの知能の差は情緒に流されずに冷静に見つめ直すべきだと思います。

読んでて海軍への尊敬はどんどんなくなってゆくのでした。

商船戦記 大内建二/光人社文庫 ハデな軍艦の戦記のようにはゆかず、ひっそりと、しかし莫大な数の日本商船が海員や陸兵たちとともに失われる物語を数字と共に記録。また、なりふりかまわず粗製乱造された粗末な戦標船(意外に使えたらしい)を駆って黙々と日本の生命線を守ろうとする日本商船団の感動的な姿。いい本です。

商船たちの平和時の夢のあるすがたの描写と、戦時に悲惨な最期を遂げるすがたのギャップに、ぼくには(月並みな表現ではありますが)戦争への怒りが沸き上がりました。こういった本を読んで感じることは、先の戦争はやはり国民の利益を守るのではなく軍人官僚のメンツのための自殺的なワケのわからない戦争だったわけで、沈んでいった船や海員は戦争なんかせずに貿易に従事させればどんなに利益を生んだことでしょうと無念な気持ちにさせられます。

そして、船とともに戦う前に沈んだ陸軍の精兵たち(この本の表を見るとそのすさまじい数に絶句します)の無念もまた憤りを呼ぶのでした。ボロ船に息もできないほど家畜のように詰め込まれ、いいこと一つないうちに一瞬で溺死するなんてネズミ以下です。人間の尊厳のカケラもない!自称エリートのこういった罰当たりな指示による愚かな行為こそが真の戦争犯罪。

わが青春無頼帖 柴田錬三郎/中公文庫 「眠り狂四朗」シリーズの「シバレン」が偏屈に語る青春。なんかおもしろくて読みやすくてその他の短編とともに一気に読んでしまいました。そのなかでちらっと兵隊生活に触れています。氏は船舶砲兵附の衛生兵だったらしい。で、たぶんフィリピン決戦のための輸送中にバシー海峡でボカチン。救命胴衣だけで七時間の漂流を生きのびますが、丙種合格の体格で生き残ることができたふたつの要素がおもしろかった。

「たしかに、日本軍隊の内務班における暴力は、戦慄すべきものであった。

 秩序を作る最も原始的なやりかたであった。・・・中略・・・しかし、私は、その暴力を否定しながらも、日本の軍隊が強かったのはそのためであった、とみとめる。・・・中略・・・少なくとも、世が平和であり、必要以上でも以下でもないだけの連隊が存在していた頃、兵隊たちは、きたえあげられて、卓絶した精鋭であったのである。・・・中略・・・私などのような、痩せこけた神経ばかりが鋭くとがった兵隊にするべからざる人間を兵隊にして、きたえなければならなかった日本軍隊が、弱くなるのは当然であった。」

ごもっとも。

この人、文章凄くうまいです。すごくうまい。

海軍工作兵戦記 木村勢舟/光人社文庫 君川丸や山陽丸に乗り組み、山陽丸とそのあとの輸送船では撃沈されての漂流も体験します。

撃沈されて泳いでるときに、回りをフルスピードで走り回って爆雷を撒く描写が出てきますが、上の「海上護衛戦」でも触れてありましたが、全速力で走ると自分の騒音で聴音できなくなるので、全速は対潜作戦には禁物なのに、艦隊を夢見た艦長たちは誰もそれを理解していなかったということですね。

「一介の薮軍医大尉」とか「士官服を着せた洟垂れ学徒兵」とか、「特務野郎」とか、海員出の大尉の人柄の素晴らしさとかけっこう本音で書かれてておもしろい。

久里浜の工作学校は戦後小学校になって、一部の建物はぼくが入学した年まで残ってました。

サイパン肉弾戦 平櫛孝/光人社文庫 サイパンへ渡る様々な部隊の遭難の様子。

小さな護衛艦が、食料や水を捨ててまで、甲板いっぱいになるまで陸軍の遭難者を救助するさまに胸をうたれます。それでも救いきれないというところがせつなく悲しい。

大本営は行けというだけでもうぜんぶ終わったと思っていて、途中のフォローなしかよみたいなことが書いてあって、無責任さを怒っていますがごもっともです。

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