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浦口晩眺 | ||
廣瀨旭莊 |
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杳杳歸禽滅, 暮洲淡欲無。 漁家何處是, 遠火在菰浦。 |
杳杳 として歸禽 滅 し,
暮洲 淡 くして無 からんと欲 す。
漁家 何處 か是 なる,
遠火 菰浦 に在 り。
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◎ 私感註釈
※広瀬旭荘:江戸後期の儒者・漢詩人。豊後国(大分県)の人。名は謙。字は吉甫。旭莊は号になる。広瀬(廣瀨)淡窓の弟。兄・淡窓の没後、代わって家塾の咸宜園を継ぐ。文化四年(1807年)~文久三年(1863年)。
※浦口晩眺:入り江の夕方の眺め。 *北宋・秦觀の『秋日』「霜落邗溝積水淸,寒星無數傍船明。菰蒲深處疑無地,忽有人家笑語聲。」とは、ひと味違った詩。 ・浦口:湖や川(や海)の陸地に入り込んだ(/面した)所。 ・-口:出入り口。盛唐・王維の『雜詩』に「家住孟津河,門對孟津口。常有江南船,寄書家中否。」
とある。 ・晩眺:夕方のながめ。
※杳杳帰禽滅:(日没後)、遠くまで薄暗い中をねぐらに帰る鳥の姿が無くなり。 ・杳杳:〔えうえう;yao3yao3●●〕遠いさま。遠いさま。暗く遥かなさま。日没後の暗いさま。ほのかなさま。はつきりしないさま。『古詩十九首之十三』に「驅車上東門,遙望郭北墓。白楊何蕭蕭,松柏夾廣路。下有陳死人,杳杳即長暮。潛寐黄泉下,千載永不寤。浩浩陰陽移,年命如朝露。人生忽如寄,壽無金石固。萬歳更相送,賢聖莫能度。服食求神仙,多爲藥所誤。不如飮美酒,被服與素。」
とあり、盛唐・劉長卿の『送靈澈』に「蒼蒼竹林寺,杳杳鐘聲晩。荷笠帶斜陽,青山獨歸遠。」
や寇準『江南春』「杳杳煙波隔千里,白蘋香散東風起。日落汀洲一望時,柔情不斷如春水。」
とあり、同・寇準の『夏日』に「離心杳杳思遲遲,深院無人柳自埀。日暮長廊聞燕語,輕寒微雨麥秋時。」
とある。 ・帰禽:(夕方になって)ねぐらに帰る鳥。
※暮洲淡欲無:暮れの中洲(なかす)は、(宵闇に姿形が)淡くなって、消えようとしている。 ・洲:す。なかす。しま。
※漁家何処是:どこが漁師の家になるのだろうか。 ・漁家:漁師の家。 ・何処:どこ。 ・是:そうである。 ・何処是:どこがそうであろうか。 いづこかこれなる。盛唐・崔顥の七律『黄鶴樓』「昔人已乘白雲去,此地空餘黄鶴樓。黄鶴一去不復返,白雲千載空悠悠。晴川歴歴漢陽樹,芳草萋萋鸚鵡州。日暮鄕關何處是,煙波江上使人愁。」とあり、北宋・秦觀の『江城子』に「南來飛燕北歸鴻。偶相逢。慘愁容。綠鬢朱顏,重見兩衰翁。別後悠悠君莫問,無限事,不言中。 小槽春酒滴珠紅。莫怱怱。滿金鐘。飮散落花流水、各西東。後會不知何處是,煙浪遠,暮雲重。」
とあり、やや異なるが、盛唐・李白の『菩薩蠻』に「平林漠漠煙如織,寒山一帶傷心碧。暝色入高樓,有人樓上愁。 玉階空佇立,宿鳥歸飛急,何處是歸程,長亭更短亭。」
とある。
※遠火在菰浦:遠くの方に微かに(見える生活の営みの)火が、まこもの中に(見えて)いる。 ・遠火:遠くの方に微かに見える生活の営みの火、を謂う。「遠火」を「遠灯」としなかったのは、意味上の違いの外に、平仄の関係(「遠火」は●●で、「遠灯」は●○)でもある。 ・菰:〔こ;gu1○〕まこも。こも。イネ科の多年生水草。
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◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「無浦」で、平水韻上平七虞。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●,
●○●●○。(韻)
○○○●●,
●●●○○。(韻)
平成30.1.10 1.11 |
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