柳梢��
　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　宋　戴復古
岳陽樓

袖劍飛吟， 洞庭��草， 秋水深深。 萬頃波光， 岳陽樓上， 一快披襟。 不須攜酒登臨。 問有酒、何人共斟？ 變盡人間， 君山一點， 自古如今。

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　　　　　　　　　　柳梢青
　　　　　　　　　　

劍を　袖して　　吟を飛ばせば，
洞庭　��草，
秋水　深深たり。
萬頃の波　光りて，
岳陽樓上に，
一たび　快く襟を　披（ひら）く。


須（もち）ひず　　酒を攜（たづさ）へて　登臨するを。
問ふ　　酒　有りて、何人か共に斟せん？
人間（じんかん）を　變へ盡くすも，
君山の一點は，
古（いにし）へ 自（よ）り　　今の如し。

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◎　私感訳註：

※戴復古：南宋１１６７年〜（没年不詳）の詩詞人。字は式之。号は、故郷の南塘の石屏山に隠棲したことに因み、石屏と称する。天台黄岩(現・浙江省)の出身。江湖派の詩人として有名。
　　江湖派とは、南宋中期、後期の詩歌流派の一で、進士試験の落第生や野にある知識人で、「江湖を流離った人々」の意の流派。時の中央の詩壇に対して、下層社会（江湖）の中に出来あがった下層知識人の詩壇。その名の由来は、陳起が江湖（世間）の作品を集めて『江湖集』をはじめとして、『江湖×集』『江湖○集』という風に、出版を続けたことによる。この流派の詩人は、本サイトに出てくる人物では、劉過、姜、劉克荘などである。作風は、その社会的立場を反映して、中央政権や社会の中の矛盾には批判的な面を持ったものを、社会の第一線から身を引いて、斜に構えた態度であるものが多い。

※柳梢青：詞牌の一。『早春怨』ともいう。詳しくは「構成について」を参照。

※岳陽樓：湖南省岳陽市市街の北西、岳陽城の西城門上の楼閣。　楼は、三層二十メートルの黄色瑠璃瓦葺きで、各層の軒先が天に向かってぴんと跳ね上がった、特徴のある楼門で、「岳陽門」の額が掛けられている。岳陽楼は、西は洞庭湖に臨み、遥か対岸の君山を望む。北は長江を扼しており、この場所はちょうど洞庭湖と長江の接点になっており、両方を抑えている。そのため、三国の呉の時代に水師（水軍）の閲兵台となり、後、唐代に楼閣が建てられた。やがて兵火に遭い、北宋時に再建された。唐・賈至の『

重宴別王八員外貶長沙』「江路東連千里潮，青雲北望紫微遙。莫道巴陵湖水闊，長沙南畔更蕭條。」や、唐・杜甫の『登岳陽樓』の「昔聞洞庭水，今上

。呉楚東南，乾坤日夜浮。親朋無一字，老病有孤舟。戎馬關山北，憑軒涕泗流。」や、南宋・陳與義の『登

』「洞庭之東江水西，簾旌不動夕陽遲。登臨呉蜀��分地，徙倚湖山欲暮時。萬里來遊還望遠，三年多難更憑危。白頭吊古風霜裏，老木蒼波無限悲。」があり、また、北宋の范仲淹（范希文）の『岳陽樓記』がある。

岳陽楼前より岳陽門と洞庭湖を望む。 大陸旅游倶楽部三國志篇より賜る

，�ｷ鏡淨，倒碧峯。忽然浪起、掀舞一葉白頭翁。堪笑蘭臺公子，未解莊生天籟，剛道有雌雄。一點浩然氣，千里快哉風。」とある。

※岳陽樓上：岳陽楼の上で。

※一快披襟：心地よい風に襟をはだけている。　・一快：心地よい風。「快」は宋玉の五百余字に亘る「風賦」にある語（『昭明文選・巻十三』）「楚襄王遊於蘭臺之宮，宋玉景差侍，有風颯（『文選』では「颯」字は「颯」の偏と旁が逆になっている）然而至，（襄）王廼披襟而當之曰：『快哉此風！』寡人（寡人：朕）所與庶人共者邪？」襄王の「素晴らしい風だが、帝王と庶民はこの風を共有しているのか、」との問いに対して、宋玉は「宋玉對曰『此獨大王之風耳，庶人安得而共之？』」からきているか。前出・蘇軾の『水調歌頭』に「一千頃，�ｷ鏡淨，倒碧峯。忽然浪起、掀舞一葉白頭翁。堪笑蘭臺公子，未解莊生天籟，剛道有雌雄。一點浩然氣，千里

哉風。」とある。　・披襟：（風を入れるために）えりを開く。襟をはだける。襟を寛げる。

※不須攜酒登臨：・攜酒：酒を持って（岳陽楼の）たかどのに登るようなことはしない。　・不須：…する必要がない。用いず。　・攜酒：酒を携える。　・登臨：たかどのに登る。

※問有酒、何人共斟：お訊ねするが、酒があったとしても、誰かともに酌み交わす人はいるのか、（もう今は誰もいまい）。　・何人：だれ。いづれの人か。何人（なんぴと）か。　・共斟：ともに酌み交わす。

※變盡人間：（天は）世の中をすっかり変えてしまった。　・人間：この世。人の世。世の中。浮き世。じんかん。

※君山一點：（岳陽楼の対岸に見える）君山だけがわずかに。　・君山：岳陽市の南西１５キロメートルの洞庭湖の中にある小島のこと。洞府山、洞庭山とも称した。岳陽楼の対岸（西側）にある小山。上の地図中央。その名の由来は「湘君の墓所」の意で、屈原は、舜の妃の「娥皇」「女英」のことを『九歌』で、「湘君」「湘夫人」とうたった。　・一點：ぽつりと。前出宋・蘇軾の『水調歌頭』に「

浩然氣，千里快哉風。」とある。

※自古如今：昔から、ずっと今のようである。（人の世の激変に比して、君山などの自然の景観には）変化がない。

◎　構成について

　　双調四十九字。平韻一韻到底。韻式は「（A）AA　AAA」。韻脚は第一句でも韻を踏む体で、「吟深襟　臨斟今」。詞韻第十三部平声十二侵で、獨用。

　　　●○○，（韻）
　　　○●，
　　　●○○。（韻）
　　　●○○，
　　　○●，
　　　●○○。（韻）


　　　○●○○。（韻）
　　　●、○○●○。（韻）
　　　●○○，
　　　○●，
　　　●○○。（韻）

２００２．１２．１５ 　　　　　１２．１６ 　　　　　１２．１７ 　　　　　１２．１８ 　　　　　１２．１９完 ２００８．　８．２１補

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